さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (562ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102181119

作品紹介・あらすじ

モダンジャズの黄金時代、ベース片手にニューヨークを渡り歩いた著者の自伝的交遊録。パーカー、エリントン、マイルズ、モンク等の「巨人」たちからサイモンとガーファンクルに到るまで、驚くべき記憶力とウィットにとんだ回想の中で、歯に衣着せぬ批評の眼がきらりと光る。訳者村上春樹が精魂傾けた巻末の「私的レコード・ガイド」は貴重な労作である。

感想・レビュー・書評

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  • ▼「さよならバードランド」ビル・クロウ。村上春樹訳、新潮文庫。初出アメリカで1992、邦訳は1996年新潮社だったそうです。アメリカのジャズ・ベーシストである著者の自伝です。1927年生だそうなので、ビバップの全盛期~ハード・バップの黄金期に青春期を過ごした訳です。で、まさにそのあたりのジャズを聴くのがちょっと好きなので。
    ▼この本は2012年に一度読みました。今回再読した理由は、11年前に比べて自分がややジャズについて知るようになり、最近ズート・シムズというテナーサックス奏者がお気に入りになってきたからです。ズートについての本でもあったら読みたいな、と思っていましたがそれは日本語ではなかなか無く。ズート特集の「ジャズ批評」のバックナンバーを買って読んでいたところ、その中で「村上春樹の翻訳で日本でも知られているビル・クロウの本に出てくる」みたいな一文があったからなんです。
    ▼「なにいっ!」と思って11年ぶりに再び購入(とっく処分しています。家が狭いので)。読んでみたら、ビル・クロウさんの一種親友だったんですね。何十年も。ズートがいっぱい出てきて、なんだか人柄も分かって、大変に面白かった。
    ▼そして11年ぶりに読むと、それだけに限らず面白かった。つまりは、特色としては「ジャズマンとして、全然スタアではなかった人物の、ジャズ黄金期の暮らし、感情が分かる貴重な自伝」なんです。ただ、改めて読むととにかく「ああ、音楽を、ジャズをやって生きていけるって幸せだなあ」という情熱が、喜びが、哀感が(ペーソスが)、ものすごおく、そこはかとなく綴られている。話はとっちらかるし、脱線しまくるし、トリビアに入るし‥‥なんだけど、それってなるほど「青春というものの、若さと言うものの、ピュアさと混沌と純粋さとバカバカしさと温もり」が厚焼きのステーキみたいに幸せにてんこもり。読んでいて、後半にさしかかる。残量が減ってくる。ああなんだか終わって欲しくない。ずーっとこうやって読み続けたい。でも時は流れていくし、著者も歳をとっていくし、ハード・バップ・ジャズも衰退していくし、そして本も終わりに近づいていく。そしてラストを飾るエピソードがなんと、ズートの死去だったんです。もう涙涙です。満点の読書でした。
    ▼11年前は、ズート・シムズを認知してなかったから、全体にもうちょっと楽しめなかった(笑)。また11年後に読んだらもっと楽しめるのだろうかと思うと楽しみです。

  • ジャズの黄金時代を生きたベース奏者による回想録です。多くのジャズミュージシャンが出てきますが、特に一流とは言えないプレイヤーの生き様がリアルで共感できます。ジャズファンにとっては必読書かと。

  • 読んだ本 さようならバードランド ビル・クロウ 村上春樹訳 20230810

     ビル・クロウっていうジャズミュージシャンの、50~60年代のジャズ黄金期時代の回想録。
     ビル・クロウって知らなかったんだけど、スタン・ゲッツやズート・シムズ、ジェリー・マリガンなんかとやってたそうで、改めて確認すると、いろんなアルバムにクレジットされてました。ルーズで貧乏で、だけど演奏するのが大好きなジャズミュージシャンのエピソードが連なっていて、時代の空気を感じますね。と言っても、出てくるミュージシャンのほとんどが知らない名前だったんですけど、チャーリー・パーカーやセロニアス・モンク、アート・ファーマーなんかの名前が出てくるとオッって感じです。中でも、短い文章の中で、スコット・ラファロが事故死した後、ビル・エヴァンズが落ち込んでたというエピソードに、やっぱりそうだったんだとか、スタン・ゲッツのドラッグの話なんかに心が痛んだりしましたね。
     バードランドの司会者のビー・ウィー・マーケット(甲高い声でミュージシャンを紹介するのがアート・ブレイキーアット・ザ・バードランドで聞けます)がチップを要求するケチさ加減や平気で間違った名前を紹介する様は、なんとなく声のイメージと合ってて笑えました。
     クライマックスなんですかね。ベニー・グッドマンのやっぱりケチさ加減と狭量的なエピソード、バンドマンから総スカンを食らうの様に、ビッグネームだけに夢中で読んじゃいました。
     最後はズート・シムズの死ぬ時の話で終わるんですけど、ジャズっていう短い間のムーブメントの実情がユーモラスに描かれてます。
     ちなみに、6月にニューヨークに出張した時に、バードランドに行ってきたんです。だけど、この本に出てるバードランドとは経営とか関係ないらしいんですが、ミュージシャンの写真が飾られたりはするんですが、もう金のない人たちが音楽を聴けるって雰囲気じゃなかったです。ステーシー・ケントっていう、どうやら有名なシンガーが出演してたんですが、本に描かれてるようなビバップ感とは違いましたかね。でも、いい思い出にはなりました。
     巻末に、私的レコードガイドっていう村上春樹が本の内容にまつわるレコードを解説したのがついてるんですが、なんとなく本当はこっちが書きたかったんじゃないかって思っちゃいますね。 ジャズを聴き始めた時に、村上春樹のポート・レイト・イン・ジャズっていう、ジャズ・ミュージシャンのエッセイを一人ひとり読みながら、YouTubeで聞いたりして入門書みたいにしてたんですが、今回のはマニアック過ぎて聞いてみる気にはなりませんでした。
     でも、村上春樹のおもしろいのは、自分が面白くない、聞く価値がないってものは、そのまんま書いちゃうってところで、だったら紹介しなきゃいいと思うんですが、そういうことまで言いたいん人なんですよね。そもそも本文の方だって、ジャズファンに関係ない、面白くないエピソードをカットしましたって書いてあるし、なのにサイモン&ガーファンクルのエピソードは面白いから訳しましたって、あまりに自由過ぎるだろうって感じですね。
     村上春樹っていろんな意味で好きな作家です。

    #さよならバードランド #ビルクロウ #村上春樹 #バードランド #ベニーグッドマン #ジャズ

  • ビル・クロウ氏は、若い頃からジャズに関心を抱き、ニューヨークの有名ジャズクラブに入り浸りとなり、多くのジャズメンと交友を深めて行く。
    ビル・クロウ氏はヴァルブ・トロンボーン、ドラムスなども演奏していたが、最終的にはベース奏者として活躍した。
    この一冊で、少年期からニューヨークへ出てきた後の人生を語っている。
    ジャズス好きにとっては、有名なジャズメンの一面を知ることができ、とても楽しめいる内容だった。
    特に意外だったのが、ベニー・グッドマンの素顔だった。
    なお訳者は、ジャズフリークの村上春樹氏。
    そしてジャズメン達のイラストは、同じくジャズフリークとして有名だった和田誠氏。

  • 村上ディスクガイドのために買っておいた。90年代なかばにこのコレクションもってるってほんとに特殊な人だなあ。

  • ジャズに精通してれば滅茶苦茶面白いんではなかろうか、この本。とにかく生き生きしとります。その面白さを堪能できないのがちょっと悲しいけれど、ジャズに引き続き手を出していこうと心新たに思った次第で。

  • スタン・ゲッツやジェリー・マリガンのバンドのベーシストして活躍したジャズ
    ・ベーシストのビル・クロウ氏によるジャズの回顧録。色んなジャズ・ジャイアンツの話が出てきて、楽しく読める1冊。

    当時の時代の生々しさ(ドラッグ中毒の酷さとか)という点では、帝王マイルスの『マイルス・デイヴィス自叙伝』に負ける点はあるけれど、もっと日常的な光景の描写がこちらは強い。

    幾つか印象的なシーンはあるけど1つだけ。急遽デューク・エリントンのバンドに彼が参加してコンサートが無事終わった後日。

    ============
    「これは、ミスタ・クロウ」と彼は滑らかな抑揚をつけて挨拶し、恭しくお辞儀をした。「ニューヨークでのコンサートであのような素晴らしい伴奏をつけていただいのに、お礼ひとつせずに誠に無礼をいたしておりました」
    「そのようなことは、どうかおかまいなく」と僕はお辞儀を返して言った。「私の方こそ、まことにもって光栄の至りです」
    彼は微笑みと頷きをもって僕の言葉を受け入れ、見るも優雅にダイニング・ルームへと進んでいった。
    ============
    (本書p297より引用)

    やはりエリントンは公爵だったのだということを感じさせられるエピソードである。

  • 2012/08/02

  • ジャズ好きなら かなりおもしろい、読んでいるとウキウキしてきます。村上春樹の翻訳もいい。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    モダンジャズの黄金時代、ベース片手にニューヨークを渡り歩いた著者の自伝的交遊録。パーカー、エリントン、マイルズ、モンク等の「巨人」たちからサイモンとガーファンクルに到るまで、驚くべき記憶力とウィットにとんだ回想の中で、歯に衣着せぬ批評の眼がきらりと光る。訳者村上春樹が精魂傾けた巻末の「私的レコード・ガイド」は貴重な労作である。

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