- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102451113
作品紹介・あらすじ
「誰かがこの本を最初から最後まで読んで、一度も涙を流さず一度も声を上げて笑わないという事態は想像しがたい」。元はラジオ番組のためにオースターが全米から募り、精選した「普通の」人々の、ちょっと「普通でない」実話たち-。彼の小説のように不思議で、切なく、ときにほろっとさせられ、ときに笑いがこみ上げる。名作『トゥルー・ストーリーズ』と対になるべき180もの物語。
感想・レビュー・書評
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前に読んだ『嘘みたいな本当の話』に似てると思ったらこちらが本家だった。幅広い年齢層からの実話だからか、映画のような内容も多い。アメリカという国の特徴もよく現れてる。『ラスカル』『別れを告げる』『人生の縮図』が印象的。
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オースターがアメリカのラジオで一般市民から募集した「あなたに起こった現実の話」を集めたもの。
4千もの応募作から選んだ170作だけあって、どれも面白い。
ちょっとしたウィットのような笑える小話。絶望的な悲しい思い出。嘘のようなホントの偶然の話 などなど
かなりバラエティに富んでいる。
一つづつの話は、1ページから数ページ。
作者により語り方も、事実の切り取り方も違う。
読んでいる時の感覚としては以下のような感じ。
自分の目の前の椅子に、次々に色々な人が座って自分に話しかける、話は5分程度で終わり、次の人がまたやってくる。
最初は語り手が男なのか女なのか若いのか年取っているのかも分からない場合もおおい、だから目の前に座った黒い影が語り出し、語っている間に徐々に輪郭が明るくなりその人自身がうっすらと見える。
小説家が書いた短編集であれば、その小説家のトーンだとか、プロとしての分かりやすい話の運び方によって、ある程度のテイスト、トーンの統一感があるから一つ一つの短編毎を読むのに頭を切り替える必要がない。
だが、この本は、それぞれの語り手が違うので一つ一つの話を読むのに導入部分にいちいち時間がかかる。
だから、さっさと読めるない。
でも、だからこそそ、数ページの中にその人らしさが出ている。そこに惹かれる。
最初の方の話は、自分がなくしたもの、別れた人と巡り巡って再会する、また出会うというような話も多く、ある意味、人に話したくなるオチのある話が多い。
一方、小説や「お話し」だったら必要とされるようなドラマだとか、オチがない話も多い。
それはこの話達が事実からされているから。
常に現実は地続きで終わりはない(あるとしたら死かな?)、そういうなんだか続いていく人生、現実というものをただ単に切り取ったという話に、その切り取り方に「その人そのもの」「その人とその世界」が表れているように思う作品が多いのだと思う。
全体的に淡々とあったことを誠実に、そしてセンシティブに注意深く観察された内容が魅力的に語られているような作品が多いと思う。
そして、教訓めいたメッセージを発するとか、自己主張、自己顕示欲など、話を必要以上に作りこんだような物語がないところが素晴らしい。
●私自身が特に惹かれたのは以下。
なんとも奇妙な、不安感と愛情
情愛を求めるが、むくわれず、また報われたとしても短く、儚く消えてしまう。喪失感。
・別れを告げる
刑務所に入っている男が親類の葬式参加するために一時的に牢屋を出て、家族に会い、そしてまた別れる、それだけの話。喪失感、家族への思い、家族、人間関係の儚さ。
・ハンドバック
なじみの人が、1か月後なぜかいなくなっている。いままで信じていた世界が一部知らないうちにかわっているような足元がぐらっとしたように感じるような話。
・一千ドル
親子のすれ違い。若いもがきの痛々しさ。
強権的でいて、滑稽な、絶対権力者の父親
・学ばなかった教訓
しつけの厳しい父親。だけど娘である語り手は
「あの日パパに教わったのは、責任というものをめぐる教訓ではない」
・雛鳥狂騒曲
小鳥がかわいそうと言いながら周辺の皆を虐げていることは平気。
・ヴァーティゴ
いう事を聞かない馬(ヴァーティゴ)になんとか力ずくで立ち向かう、マッチョ志向の父だが、上手くいかない無力さ。ただし、チャレンジをし続ける。
不良との小競り合いを淡々と。だけれども何とも言えない空気感と余韻のある話
・アンディと蛇 -
わたしは完璧であったことはありませんが、わたしは現実なのです
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おもしろい。意味はないけど、こういうことを聞いたり語ったり経験したり、ということが生きているということかも。
日本版の元ネタを読めてよかった。
柴田さん。 -
普通の人々の寄稿という性格上、所謂オチのない単なる事実のとも言える話も多いです。でもそういう話の方がわざとらしさや大げさな感じがなくてかえってリアルに心に響きます。「ファミリー・クリスマス」の泣かせるリサイクルプレゼントが心に残りました。
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実は、ポール・オースターの「トゥルー・ストーリーズ」(新潮文庫・2008年1月)は、2年ほど前に読んで、実に面白いと思った作品で、今回の「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」は、その素人版に当たる。 「トゥルー・ストーリーズ」は、著者自身の人生に起きた奇妙な事件だけを書き記した短編集だったけれど、この「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」に集められた話は、ポール・オースターがラジオで呼びかけたことで、全米から集まってきた無名のライター達による無数の「トゥルー・ストーリー」をセレクトしたものだ。 本当に、人間の身の上には、偶然とか奇跡としか思えないようなことが起きる。誰しも、どこかに神様がいるのでは思うような不思議な体験を一度はするものだけれど、これはそういった「事実」の膨大な集積で、読むにつれ頭がくらくらしてくる。とにかく面白い。
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〜3/4
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くすりと笑えるものから悲しい気持ちになるものまで、色んな人たちの嘘みたいな本当の話を集めた本。
顔も知らない海の向こうの国の人たちの人生を覗き見してるみたいで読んでいて楽しかった。
色んな人が寄稿しているから文体がバラバラで中には読みにくい話もあったけど、これは良い読みにくさだと思う。
「ラスカル」、「縞の万年筆」、「二重の哀しみ」、「ケーキ」、「マーケット通りの氷男」が特にお気に入り。 -
全て実話だそうだ。信じられない運命の話や、物語の中で作者を支えるの心のあり方に、 作者を通してアメリカの国民性や社会や歴史のバックグラウンドが見えてきて、惹き込まれる。1話がショートストーリーより短いのも簡潔で良い。こういう話って日本でも起こりうるのかな?
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人生がそこにある。とても良い本。