清明: 隠蔽捜査8

著者 :
  • 新潮社
3.97
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感想 : 161
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103002604

作品紹介・あらすじ

警視庁との軋轢、そして公安と中国の巨大な壁――。信念のキャリア・竜崎はすべてを乗り越えることができるのか。神奈川県警刑事部長に着任した異色の警察官僚・竜崎伸也。着任早々、県境で死体遺棄事件が発生、警視庁の面々と再会するが、どこかやりにくさを感じる。さらに被害者は中国人と判明、公安と中国という巨大な壁が立ちはだかる。一方、妻の冴子が交通事故を起こしたという一報が入り……。リスタートで益々スケールアップの第八弾!

感想・レビュー・書評

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  • 読んだのは前作に続いて2冊目。前作で感じた主人公の竜崎の面白さが続いている。
    大森署長から神奈川県の刑事部長に就任。最初の就任から他の人と違って突然に現れ、アポも取らずに上司の本部長に会う。周囲からは呆れられてしまうが、ここが他の人と違うところ。常に合理性を求めてしまう。
    殺人事件が起きて警視庁と合同本部を設けるが、自分が不必要と思うことも、部下からの進言で簡単に意見を変えてしまう。
    今回は妻の交通事故にも対応するが、相手は警察の大先輩。揉めた大先輩と大胆な方法で和解。
    事件は中国の政治問題も絡むが、淡々と必要な手を打って行く。不可能と思われた逮捕も周囲や犯人の意識を変えてしまう。本人が思う以上に竜崎ファンを作って行くのが爽快に感じる。次の作品も楽しみ。

  • 題の「清明」は杜牧の有名な七言絶句
     清明時節雨紛紛
     路上行人欲斷魂
     借問酒屋何處有
     牧童遙指杏花村
    からとられている。「清明」とは、すがすがしく明るい春のことをいう。この小説もそんな風にすがすがしく終わるのである。それは新たに神奈川県警刑事部長になった主人公の竜崎伸也の人柄に依っているだろう。隠蔽捜査シリーズの8巻に当たるが、建て前よりも本音を大切にし、その真っすぐな言動によって、最初は反発していた相手さえ最後には親派にしてしまうという画期的な人物を創造したものだ。今回も、中国政府の諜報委員が絡んだ殺人を、よけいな国際事情になんかに左右されずに解決して、はっきりと国民に詳細を明らかにする。確かに中国親派の政治家などに影響されていろいろなことをうやむやにするので中国政府に日本が舐められてしまうのである。この小説でも「中国では今でも民主化を叫ぶ人々を弾圧し、異民族を弾圧している」と批判しているが、殺人事件の被害者は中国で民主化運動をして弾圧され日本に密入国していて、見せしめのため殺されたのだ。

    • goya626さん
      ダイちゃん
      愛犬が亡くなられて、さぞかし気を落とされたことと思います。せめて、面白い本をたくさん読んでください。竜崎シリーズはいいですよ。...
      ダイちゃん
      愛犬が亡くなられて、さぞかし気を落とされたことと思います。せめて、面白い本をたくさん読んでください。竜崎シリーズはいいですよ。新しいのが出るのを待っています。
      2021/08/27
    • ダイちゃんさん
      返信して頂き、ありがとうございました。
      返信して頂き、ありがとうございました。
      2021/08/27
    • goya626さん
      はい。
      はい。
      2021/08/28
  • 隠蔽捜査シリーズ第八作。

    竜崎が大森署から神奈川県警本部刑事部長に異動となって最初の事件は、いきなり警視庁との合同捜査。
    犬猿の仲と言われる両者だが、そこは例によって伊丹とのコンビもあって、少しずつクリアしていく。
    しかし被害者が中国人、そして容疑者も中国人ということから単なる怨恨や物取りの殺人事件ではない側面が見えて、公安やら外事やら、華僑の御大やらと話はスケールアップしていく。

    しかし物事は常にシンプルに、原理原則に沿って動くという竜崎の姿勢はぶれない。
    相手が公安部長だろうが、華僑の御大だろうが、被疑者であろうが変わらない。
    伊丹が言うように『理想主義』であり現実には難しいところもあるが、小説の中くらいこんなことがあっても良い。
    それでも敵対していた警察OBを上手く引き込むところなど、伊丹の言う政治的な能力も身に付けてきたということか。

    大森署の戸高のような、スパイスになりそうな癖のある人物はまだ出てきていないが、敵なのか味方なのかよく分からない参事官は今後も注目したい。今後、他に個性的な部下が現れるかも期待。

    ところで序盤で『みなとみらい署暴対係』という言葉が出て来る。未読だが、確かそういうシリーズ物があったように思うので、今後リンクがあるかも知れない。

    竜崎のプライベートでは奥様の冴子さんがペーパードライバーを卒業。そのうち冴子さんが竜崎を現場へ緊急で送り届けるシーンが見られるかも。
    娘の美紀は一瞬に横浜に付いてきたが、竜崎が思うように通勤が大変そうだ。それだけ仲が良い家族ということか。

    タイトル通り爽やかな読後感。今後も楽しみ。

  • 清明 ー 隠蔽捜査8はシリーズの10作目
    2020.01発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。

    警視庁大森警察署長から神奈川県警本部刑事部長に移動になった竜崎伸也は、着任早々に殺人及び死体遺棄事件が発生する。

    遺体は、沢谷戸自然公園で発見された、ここは町田市で東京都と神奈川県の入り組んだ境目であるため、遺体が東京都のため町田署に捜査本部が出来る。警視庁が捜査するが、神奈川県との境目のため神奈川県警に応援依頼が来る。
    そこで、警視庁と神奈川県警の主導権争いが行われる。
    遺体は、中国人・張浩然だと分かり、中国国内で民主化を叫ぶ民主化運動家で弾圧を恐れて、日本に密入国してきて、中国人のスパイに殺された可能性が…。
    張浩然は、民主化運動の活動家として中国国内で司法機関からマークされていた。
    弾圧を恐れた張浩然は、日本に逃亡した。

    妻・冴子が自動車教習所で教習中に教習所の車に乗っていて教習所の塀にぶつかる。
    南署の仙道とドライビングスクール京浜・所長で警察OBの滝口達夫が教習所の塀と教習所の車の弁償をしろと冴子にいう、その理不尽さに竜崎伸也が冴子を守って話し合う姿がいい。

    《読後》
    竜崎伸也が、大森警察署長から神奈川県警刑事部長に移動になった前回の本で、この物語は終わったと思っていたので、県警刑事部長としての新たなシリーズが始まったことになります。
    終わらなくて良かったです。
    読んでいて面白く、テンポも速く。
    そして、何よりなのが竜崎伸也の真っ直ぐに進む姿勢がとても爽快です。

    最後に、捜査の結果をマスコミに公表する段階で、色々な圧力が掛かるなかで竜崎伸也が「公務員が、国民に隠し事をして、いいことなど一つもないと思います」と言う言葉がスカッとする。
    字を大きくして、今後共続いてほしい。
    2020.03.11読了

  • 【ネタバレ】唐変木の竜崎がいよいよ神奈川県警の刑事部長となる。冴子さんも一緒に横浜に移動。異動早々、中国人が殺害される。真実に近づくにつれ中国の秘密組織とリンクする。さらに竜崎と伊丹のコンビが警視庁公安部長との対決する。竜崎の性格は変わらないが、周りが竜崎のパーソナリティを知るにつれ、いつの間にか竜崎に手なずけられる。竜崎の曲げない信念、警察官としての職責、警察を背負う覚悟、それぞれが垣間見られる。伊丹との対比が面白い。冴子さんの自動車教習所での物損事故は笑えた。竜崎の県警刑事部長としての活躍が楽しみ。⑤

  • 竜崎が神奈川県警本部刑事部長に異動して、初の話。

    表も裏もない合理的なところも、大森署で学んですこし丸くなったところも変わらず。
    安定のシリーズで、たのしかった。

    異動したものの、今回は警視庁主導の案件。
    警視庁の面々が多数登場し、半分は今までの延長感。

    神奈川を舞台にした、神奈川県警のらしさが強く出る話は、今後?

  • 竜崎が神奈川県警・刑事部長に。東京と神奈川の境界が入り乱れるところで、殺人事件が起こる。警視庁との共同捜査で犯人を追う。一方、竜崎の奥さんは脱ペーパードライバーを望み、自動車教習所へ。事故を起こしてしまうが、そのことで新たな人脈ができ…。
    早速、伊丹刑事部長が出てきて、二人のやりとりが始まり、そして、家族のこと、中華街のことさらに公安、外務省とか…今まで以上にスケールアップしたなあと感じます。竜崎さんの合理主義はぶれることなく進んでるし、その人柄が今回も周りを魅了する(久しぶりのシリーズだったので私が忘れただけかもしれませんが、伊丹部長が少し気弱になった気がします)。今後、東京絡みのことばかりのわけにはいかないと思うけど、伊丹部長との会話、活躍、見てみたいなあ、神奈川新メンバーも気になるところですが。他に今野さん他作品の方々出てくるのかな。とにかく神奈川にようこそと、今後の隠蔽捜査に期待です。

  • 一番安定の隠蔽捜査シリーズ。
    前作でやっと大森署から神奈川県警へ異動した竜崎。
    警視庁と犬猿の仲と言われる神奈川県警への異動であっても、変わらない竜崎節が面白い。
    さらっと流されているが、竜崎が赴任した時に神奈川県警が手掛けていた事件は、「みなとみらい署暴対係」シリーズで描かれていた事件。山手で殺人事件が起きて、それに不動産詐欺が絡んでいて、捜査一課と二課合同で捜査、そして、それにみなとみらい署の暴対係が協力している…事件解決時に竜崎が赴任したので、説明だけで終わっているが、どちらも読んでいるファンにとっては、冒頭から心を掴まれた感じ。
    赴任早々、神奈川との境の町田市で中国人の遺体が発見される。首の骨を折られる、処刑のような手口であることもあり、警視庁から神奈川県警に捜査協力依頼があり、竜崎も捜査本部に関わることに。
    同時に神奈川に引っ越したのを機に、竜崎の妻・冴子は車の運転をするためにペーパードライバー研修を受けに教習所に。しかし、誤って教習所敷地内の柵に車をぶつけてしまい、責任を問われることになる。この一件の裏には神奈川県警OBの嫌がらせも関係しており、それにも応対を迫られる竜崎。
    事件本体は、今回は同期の伊丹とがっつりバディを組んで、幹部ならではの目線で描かれる。
    捜査の現場を描いている訳ではないので、迫力にはかけるが、二人の掛け合いが面白い。
    神奈川県警に異動して、新たな敵も現れるが、それも竜崎のペースにはまっていく様子が、このシリーズならでは。やっぱり隠蔽捜査は面白い。

  • 隠蔽捜査シリーズも、もう8作目。
    今野敏は、このシリーズしか読まなくなってしまった。
    今作から大森署から神奈川県警の刑事部長に異動して、新旧の登場人物と共に事件にあたる。
    この辺、上手いなとも思うが前のシチュエーションではネタ切れって事なんだろうな。
    正直同じパターンで食傷気味だが、一方で安心してストーリーを追う事が出来る。
    入手した日に読み終えた。もう一度読むかな。
    このシリーズの特徴というと:
    ・警察組織と警察官たちのリアリズム(っぽい)
    ・建前で生きる俗っぽい官僚と本音と効率重視の竜崎のやりとり
    ・紆余曲折あるが、最後は竜崎が勝利?を収める安心感
    ・正直、事件は大して面白くもない
    ・毎回必ず家族が何かしら彩をそえる
    ・伊丹は常に間違える<大丈夫かこいつ?

    なんか列挙しても魅力がイマイチわからない。
    この印象に残らなさが、かえって良いのかもしれない。
    全然褒めてないけど、読書体験としては楽しめる。
    もう一回読んでみよう。


    以下Amazonより-----------
    警視庁との軋轢、そして公安と中国の巨大な壁――。
    信念のキャリア・竜崎はすべてを乗り越えることができるのか。
    神奈川県警刑事部長に着任した異色の警察官僚・竜崎伸也。
    着任早々、県境で死体遺棄事件が発生、警視庁の面々と再会するが、どこかやりにくさを感じる。
    さらに被害者は中国人と判明、公安と中国という巨大な壁が立ちはだかる。
    一方、妻の冴子が交通事故を起こしたという一報が入り……。
    リスタートで益々スケールアップの第八弾!

  • 文庫化を待ちきれない、隠蔽捜査シリーズ。
    竜崎は神奈川県警刑事部長に赴任し、彼の原理主義が県警職員の意識をもたちまち変えてしまう。
    観光客を筆頭に様々な外国人が来日する現代日本。外国人の犯罪も急増し、小説世界でも取り上げざるを得ない状況。
    第8弾での被害者は中国人。
    死体遺棄場所は、神奈川県と東京都が入り組んだ地区。共同捜査本部が立ち上がり、赴任早々の竜崎も関わらざるを得ない。
    事件が中国人絡みのため、公安も動く。竜崎は、彼らをも意のままにしてしまう。
    「普段は刑事よりも高度なことを考えているのだろう?その高度な意見を聞かせてくれ」P272と、彼らの毒気まで抜いてしまう。
    そんな竜崎の言動に、読者は痛快感が増すばかり。
    さらに終局での彼の言葉には、歌舞伎の掛け声ではないが「よっ、竜崎屋!」と叫ばずにはいられない。
    「公務員が、国民に隠し事をして、いいことなど一つもないと思います」P315.
    このシリーズ、漢字二文字が題名となっており、今作は『清明』。
    竜崎が、中華街の顔役の店で話を聞く時のテーブルに彫られた漢詩の一部。
    題名通りに、爽快感に浸れる読後感。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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