偏路

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103017738

作品紹介・あらすじ

東京で女優になる夢を諦めようとする娘と、どこまでも暴走する父(おとん)が、親戚宅で繰り広げるスリリングかつハートウォーミングな一週間。小説『グ、ア、ム』と対をなす、劇作家・本谷有希子の"善意"に満ちた最新戯曲。

感想・レビュー・書評

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  • 舞台は四国、お遍路めぐりの道に面した主人公の親戚宅。
    生暖かい親戚宅の雰囲気になじめず、もんもんと悩む主人公・木多若月。
    今や死語となりつつあるKYを地で行く父親・木多宗生。
    ザ・田舎のおばちゃんの称号を贈りたい伯母・紺野和江。
    いい年をしたヤンキープーな従兄のノリユキ。
    家族をひねた目で見つめる従妹の知未。
    フィリピン人の夫を持ち、なぜか頻繁に紺野家に遊びに来る、和江の従妹の依子・ダキラ。

    「劇団、本谷有希子」主催にして作家&演出家。
    多才な本谷さんの、最新戯曲です。
    芝居の登場人物は6人。

    正月のまったりムード満点な親戚宅で若月は、「女優になる夢をあきらめ、おめおめと田舎に舞い戻っちゃうよ!」計画を父親に告げられずにいた。
    ただでさえ落ち込みがちな若月に対し、親戚の面々はのんきな会話を続けている。
    しかし和江の通帳と印鑑が誰かの手によって持ち出されてのち、あれよあれよと言う間に、問題は膨らんでいって・・・。

    あぁ、もーこのへんてこな家族にやられちゃったよ!!
    宗生おかしいよ宗生!!
    このお父さん、ものすごいインパクトありました!
    あ、あと田舎にものすごい偏見をもつ若月にも、別に地味な人生を悲観してるわけでもない知未にも、結構うなづいちゃうところがありましたね。
    みんな言動とかはへんてこなんだけど、悩んでるポイントはけっこう普通だったりして、感情移入はしやすかったかな?
    ラストもしみじみ。
    絶対に雨が降る雨乞いのからくりに、なんだか心励まされたような気がしました。
    つらい時はこの言葉を思い出そうっと!!

  • 「偏」路。

    もっちんのことはANNで好きになった。
    酔って「セクース!セクース!」と叫んでいただとか、幽遊白書の蔵馬を切りぬきしていたが同人誌の絡みを見て衝撃を受けただとか、コケットで素敵なエピソードを聞いて。
    その中にお父さんのエピソードもあり印象深かった。
    上京の条件として絶対にAVに出ないこと、と突きつけたのは、まあわかる。
    が、等身大パネルをコレクションしているのでもっちんをその集め役にした、とか。どうかしているよ!

    ちなみにアニヲタwikiに曰く、
    ◆オタクじゃないのに東京秋葉原を一日中回り美少女フィギュアを買ってきて家でずらーっと並べる
    ◆空き缶を千個二千個集める
    ◆等身大パネルを月一回実家に送ることをほんたにちゃんに要求
    ◆いつになったら俺はゴーストライターになれば良いんだと娘に迫る

    内容はいつもよりはコミカル。

    ちなみに、能登麻美子さんも石川出身とは知っていたが、もっちんとは別だと思っていた。
    が、グーグルの検索候補に登場して、何と地元では同じ劇団に!!
    ああ、ラブいふたりが。

  • またも同じ手口で。自分が可愛くて可愛くて仕方ない主人公の滑稽で痛々しい物語。今回は父もおかしいよ!

  • 自分に絶対的な自信をもって、
    絶対に自分は普通じゃない・平凡じゃないと信じる女の話。
    自分を見つめなおすなんかそんな痛いことできない。
    そんな若月に共感できる。

  • おもしろかった!
    東京で女優を夢見た娘が田舎に帰り父親と親戚とのドタバタ。
    【夢は諦めなければ必ず叶う!】
    ありきたりだけど、いい言葉。

  • 何やかや、ハッピーエンド?のお話。多分、そんな印象を受けるのは、お父さんの方が娘よりもキャラが濃いからで。女性が醜いとうわぁ…という感じにしかならないけど、男性はアホな雰囲気で済むというか、洒落で終われる。巻末に作者と作者の父の対談収録。

  • うーん、あんまり面白くなかったなぁー。はちゃめちゃな展開でどたばた騒ぎが続いて、そのまま終わっちゃった感じ。「グ・ア・ム」と似た印象を受けた。本谷さんの家族が出てくるお話はなぜつまらないのだろう?

  • 「戯曲」を初めて読みました。
    なんだか不思議な感じに、近藤芳正さんと馬渕英俚可さんの画が浮かびます。
    八十八カ所回って煩悩が・・・「増えとった」
    というところがいいですね。
    「私は、私の中の本当の感情を認める。私の中のグロテスクを開放する」
    「大丈夫や。諦めるまで諦めんとけば絶対に諦められることになっとるんや、人間は」


    父と娘の話でしたが、だいぶ誇張されているといいつつ、ベースの部分が本谷さん親娘の事実に基づいているところが凄い!

    特別付録の親子対談が楽しかったです。

  • 親戚の家はグロテースクー。
    カーテンの柄がグロテスクー。
    みんなの顔が似ーてて
    グロテスクー。

    『一月一日』のメロディでって書いてあるから、
    電車で口ずさみそうになった。

  • 同名舞台の戯曲。
    暴走性のある人間の登場によって平凡な集団(周囲)が乱され、巻き込まれ、次第に胸に抱えてた膿を出していく。
    結果的に妙な連帯感とやるせなさが残る本谷ワールドの構図。
    人間関係の新陳代謝には異質なものを放り込むのが一番なのかなといつも思う。
    新手の台詞の応酬、台本だけでここまで面白い。
    本谷有希子の選ぶ言葉が個人的にツボなのは否めない。

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著者プロフィール

小説家・劇作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

本谷有希子の作品

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