黒沢清の映画術

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 111
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103028512

感想・レビュー・書評

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  •  古本屋でたまたま見かけて調べたら絶版していたので何かの縁と思って買って読んだ。キャリア初期から2005年までの作品をインタビューとともに紐解いていてめちゃくちゃオモシロかった。(そして数年前に初期作品が NETFLIXで開放されていたのに見逃してしまったことを後悔…)
     冒頭からびっくりしたのは蓮實重彦の薫陶を受けまくった映画好きだということ。立教大学出身で蓮實重彦が現在ほど権威化する前から彼の授業を受けていて、それが礎になっているそう。どういうポリシーで作品作りをしているか、そのショットがどういう意図なのか?まで、一作品ごとにかなり細かく語っていて、黒沢清の映画に対する認識が知れて興味深い。また彼の映画製作の歴史が彼の人生そのもので、日本の映画界をサバイブしてきた過程を説明していて厳しい世界だとよく分かる。さらにオモシロいのは登場人物が日本の映画産業の中心人物たちだということ。そういった仲間、先輩、後輩、ライバルへの思いをかなり赤裸々に語っている。中でも伊丹十三との複雑な関係は全く知らず、人間同士だから色々あるのだなと遠い目になった。
     黒沢清の映画のオモシロさはホラーとしてのストーリーや設定の魅力もあるけれど、やはりショット、カットに対する強烈な美意識を堪能できるところだと思う。映画というメディアでカットを割ることに相当意識的で可能な限り割らない。なぜならカットを割る=嘘をつく行為だから。それこそフィクションなんだけど追体験装置としての映画の機能を最大限に発揮しようとしていることが分かって勉強になった。こういった職人気質があり芸術としての映画を極める人なのかと思いきや、分かる人だけ分かればいいというスタンスではないところもオモシロかった。つまりピンク映画、Vシネを経ているからこそだと思うけど、職業監督としての責も引き受けていく姿勢がかっこいい。この本を読んだ上でフィルモグラフィーを再見するのはかなりオモシロそうなので時間かけてじっくり映画を堪能したい。
     

  • ふむ

  • ワンカットの現実性。リュミエールからの原理主義的な要素がやはり感じられる。そして、殺人シーンと原理主義の相性の良さが伺える。ゴダールとリュミエールの絶妙なミックス。

  • 久しぶりに夢中になって本を読んだ。黒沢監督についていろいろ知ることができただけでなく、観たばかりの『回路』に関し、私なりの解釈があながち的外れではなかったことを監督自身の言葉によって確かめられて満足。「死ねば幽霊になれると分かったら多くの人が自殺するのではないか。」との発言には大きくうなずいたし、「僕なんか、すぐ幽霊になっていそうな気がします」と聞いて、あなたもそうですかと嬉しくなる。小雪が自殺する理屈も答え合わせができてよかった。伊丹さんとの件はまったく知らなかったのだけれど、(レベルもスケールも違うが)同じような納得のいかない経験のある身としては、黒沢監督の思いがわかりすぎるほどわかって、ここ最近「こんなんだったら、もうあんまり頑張らなくてもいいな」と思っていた私をして、ああいう経験をたとえ後味の悪さとともにではあれ通過点として苦笑まじりに振り返れるまでは頑張ってみたい、とまで思わせたほど。そして、なんといってもインタビューの最後の発言。創作する者の率直にして学ぶところの多い心情が語られていて、これはもう何度でも読み返したい。

  • 黒沢清の経歴が分かって面白かった。

  • 09091

    06/02

  • 「アカルイミライ」までのフィルモグラフィーを振り返る語り下ろし。
    未見の作品を観たくなる。

  • 筆者が監督した映画見ているとわけがわからないことが多いけれど、作っている時にはそれなりにスジが通っているのがわかる。もっともそれが映画の理解に資するかというと話は別。共同で作っている人たちや状況との関わりが反映しているわけなのだから。
    伊丹十三との関わりは痛ましいが、それとは別に「スウィートホーム」裁判の結果がどう監督一般の権利に反映したのか分析しておく必要があると思う。
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  • 読了。<p>インタビューなので読みやすくはあるが、特に深い考察があるわけでもなく「映画術」は特段書かれていない。しかしこれを読んだ後に『ドッペルゲンガー』を観る気になった(そして観た)のは事実。<p>フィルモグラフィーに沿った自作解説と思えばファンにはいいと思いまーす。

  • 実際の作品とか映画評論とか読んでると、大学教授みたいなイメージだったんだけど、後輩に嫉妬したり海外受けを意識したりとか、自分にとっては意外な
    面を見せてもらう。
    でもやっぱり素晴らしいのは
    映画に関する言及だよなぁ。
    ワンカットに対するこだわりの部分は目から鱗でした。

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