アンソーシャル ディスタンス

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103045359

感想・レビュー・書評

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  • コロナ禍で様々なことに依存する人達のお話。

  • 整形中毒
    アル中
    激辛中毒

    色んな人が居るんだ

  • 正直に言うと全部読み終わっていない。

    日常の中で一見すると普通の生活を送ってるようには見えるけれども、何かしら、精神的な負担や負い目を持っている人をテーマにしている。

    日常生活っぽい背景と言うのが非常に癖で、自分が通勤電車の行き帰りの中で読むには非常に重く、ちょっと気分が悪そうになったので中断。

    この本に出てくる登場人物は女性が多いけれども、ひょっとすると自分の妻や同僚も、彼女らもこんな悩みを抱えてるんだろうか、あるいはこれは男性でも気づいてないだけで同類なものがあるんだろうかと想像すると、ちょっとそれは恐ろしい。

    こういう感情揺さぶる文章書けるっていうのも、これまたすごい作者だな。

  • もうずっと、自分のことを把握できていない。私は今、自分は何をしたいのか、何を求めているのか、何が嫌で何がいいのか、何が好きで何が嫌いなのか、何も分からないままバスタブに浮く髪の毛のように使い古されたお湯の中に意味なくたゆたい、人々に疎ましがられるだけの存在だ。魂の抜けたダッチワイフのように求められるままに応え、少しずつ彼や彼を嫌いになり、それでも求められれば応えたいし何か力になりたいと根拠不明な原動力によって走り回っている。

    いやむしろ、言ってみれば裕翔も未だ無害な男でしかない。心も乱されなければ恋い焦がれることもなく、セックスをしてもキスをしてもどれだけ多くの面積を触れ合わせても、肌が離れた瞬間にはなんでこの人と触れ合っていたんだろうと思うような男でしかないのだ。それでも向こうが求めてくるから、そして私も気を紛らわしたいから、という軽はずみな敷居越えがあって、そこから惰性で進行し続けてもう半年だ。

     でもゾンビとは言い得て妙だ。正常な思考が働いておらず、酒と男と仕事だけで一日が過ぎていく。

     自信ありげに言う大山くんは、これまで誰とこの水族館に来ていたのだろう。彼女と来たの? なんて聞いたらハラスメント認定されるかもしれないしと、何度か来たことある発言をやり過ごす。

    情けない表情で笑う彼にこれからどうすると聞くと、ご飯行きましょうと情けなさを柔らかさに変えて言った。

    彼の目の位置に手鏡があればいいのにと思いながら突き上げられ、どうしても彼を直視できず顔を横に向けたままでいると、彼は優しく右手を私の頰に当て、上を向かせてキスをした。

     取り憑かれたように検索を繰り返していた。皺を目立たなくさせるための美容外科施術を調べ、いくつもの美容外科を調べ、口コミを調べた。

    愛がうまくいかなくても結婚しなくても顔が劣化しても私には仕事がある。でもむしろ、そこにしか確固たる自信が持てないのかもしれない。

    少なくとも奏に対して持っていたような情熱を、龍太には持っていない。好きだから仕方ないという暴走する恋愛感情はない。だからこそ、自分が既婚である状況に申し訳なさも抱かない。龍太に対して抱くのは、一緒にいるととにかく楽で満たされていて、だから難しいことは考えないで悩まないで逡巡しないで今を楽しんでいたいという軽薄な欲望で、それはつまり、ライブに行って二時間丸々踊って歌って楽しみたい欲求のようなものなのかもしれない。

    それは山があると登らずにいられない登山家に通じるものがある。売れたいでも、好き嫌いでも、正しさでもなく、目の前に洗いたての顔があれば、今日の終わりには落としてしまうと知りながら自分の持ち得る技術を最大限駆使して、今日一日のために今できる最高のメイクをするというスタンスは、未来永劫これを所有したいと願うものを作っている僕には眩しかった。抗えない衝動に突き動かされて最高地点を目指すという点においては、登山もメイクも芸術と言えるのかもしれない」

    生え癖があり、左目の目頭一センチだけ下向きになってしまうマツエクをホットビューラーで持ち上げ、まつ毛の先端にマスカラを塗ると、乾く前にピンセットで程よい束感をバランスよく仕上げていく。
    このメイクを落とすとき、私はすでに今の私を喪失しているのだろうか。

    リップの形を確認するため形式的に微笑む女。訳も分からず、彼女は準備万端である。

  • 恋愛が主体として描かれている本は苦手な私がすごく好きに思った本。
    これは「男と女」というより、人間模様がじゅにゅっと描かれたモノだった。すごくぶくぶくした愛が温かく迎え入れてくれた感覚があった。
    自分も人間である。よし。という感じ。

    自分と似てる感覚を持つ小説家の方が好きと言っていたので初めて金原さんの本を手に取りました。もっと読みたい知りたいと思いました。

  • コロナ禍前後に書かれた5作からなる短編集。題材は「真っ当な」人生からは外れたものだけど、いつからかそこにいるだけで、登場する彼女たちは常に自分の葛藤を見透かしながらそこに身を置く。

    「コンスキエンティア」のどこにも捧げられないがゆえのブラックホールを私も覗いたことがあるような気がして、相変わらず金原ひとみの小説は抉ってくるなと苦笑する。それが、同時に、私に安心をもたらすのだ。

  • 「ストロングゼロ」「デバッガー」「コンスキエンティア」
    「アンソーシャルディスタンス」「テクノブレイク」
    コロナ禍の日常を背景に描いた5話収録の短編集。

    文中から迸るエネルギーと破壊力のある言葉の数々に圧倒された。

    物語に登場する5人の女性達は決して特異な人物ではない。
    けれど皆、一つの出来事をきっかけに壊れていく。

    酒に溺れていく者、整形に嵌まっていく者、性的欲求を満たす事だけに情熱を注ぐ者。

    自分の中の空洞を埋めるかのごとく、対象物を追い求め、縋りつき、落ちていく姿が生々しい。

    覚悟して読まないと強力な毒にやられる。

  • 最初の話だけ読んでやめてしまった。

  • 現代日本の社会問題(鬱・自殺者・コロナ意識・飲酒)を交えながら描かれる恋愛短編集。前作『fishy』の弓子と同じように、「デバッガー」に登場した美容整形に縋るアラフォー女子の姿が印象的で、美容整形に手を出す心理がよく分かった。これからは男性も追随すると思う。「ストロングゼロ」は著者インタビューを先に読んだことがあって、そこで言われていた「日本人と飲酒の異様な関係性」を意識して読むと一層面白かった。

  • unsocial distanceより、コロナはEDMのフェスでアメフト出身のガタイのいい男に肩車させ踊り狂う陽キャなセレブパリピ女のように、、、

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2004年にデビュー作『蛇にピアス』で芥川賞を受賞。著書に『AMEBIC』『マザーズ』『アンソーシャルディスタンス』『ミーツ・ザ・ワールド』『デクリネゾン』等。

「2023年 『腹を空かせた勇者ども』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金原ひとみの作品

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