皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096382

作品紹介・あらすじ

この人を見よ! その生と死とともに、中世が、壮絶に、終わる―― ! 構想45年、ユリウス・カエサル、チェーザレ・ボルジアに続いて塩野七生が生涯を描き尽くした桁違いの傑作評伝が完成! 神聖ローマ帝国とシチリア王国に君臨し、破門を武器に追い落としを図るローマ法王と徹底抗戦。ルネサンスを先駆けて政教分離国家を樹立した、衝突と摩擦を恐れず自己の信念を生き切った男。その烈しい生涯を目撃せよ。

感想・レビュー・書評

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  • (感想は上巻に)

  • 下巻はフリードリッヒ二世の北イタリア討伐からはじまり、ローマ法王との対立、そしてフリードリッヒ二世の死後の動乱で幕を閉じています。下巻を読んだ直後の感想は「法王が見事なまでに悪役」であるということ。もちろん著者の主観でそう語られているからではありますが、法王がシチリア王国をフランス王の弟に攻めさせる、なんていう話は確かに酷すぎる。法のもとでの平和をシチリアで確立していたフリードリッヒに対して、彼の死後、他国の軍隊を呼び寄せた法王の行為は、少なくとも現代の価値観からしたら絶対に許されないものですね。

     本書を読んで改めて感じたのは偉人の後継者問題。これは企業でもよくあることですが、カリスマ的な創業者の次にくる経営者が会社をダメにする、日本でも老舗企業は2代目でその事業の存続が決まると言います。だから日本では息子が生まれるよりも娘が生まれてくれる方が優秀な婿を外からもらえてよっぽどいい、なんてよく言いますが、フリードリッヒ二世も彼自身の偉大さゆえに、この問題は克服が難しかったのでしょうか。カエサルが外からオクタヴィアヌスを連れてきたように、もしフリードリッヒ二世が子供に恵まれず、有力諸侯の中からずば抜けて優秀な男を後継者(養子)に迎えたら歴史はどうなったのだろうか、と感じました。とても読みやすくおもしろかったです。

  • 法治国家建設を目指したフリードリッヒ2世の生涯を描く下巻。

  • 絶頂から最期まで。彼の生涯を塩野七生がこうなるのだろうが、流れるような歴史の躍動を感じた。

  • 読んだ後、すがすがしい気分になった。生き切ったと言える、フリードリッヒの生き様を感じることができたのであろう。強大なキリスト教という存在がありながら、ローマ的に生きることができたフリードリッヒという存在は偉大だと思った。塩野さんがこの時期に取り上げたのも分かるような気がした。

    以下注目点
    ・翻訳作業とは実に高度な作業で、良き翻訳者に求められる資質とは、原著者と同等の知力(インテリジェンス)か、そこまではいかなくても、原著者に成り代わった想いになって訳すうえでの、想像力と気概は欠くわけにはいかない。だからこそ、翻訳は学問の始まり、とされるのである。
    ・自らの信念を持つ人間は、それに反することは死んでもやれない。それでもやれば、「恥」になるからだ。反対に、一貫した考えを持たないできた人は、恥を感ずる必要もないことから、何であろうとやれるのである。
    ・科学的な証明とは、カンが正しかったことを示してくれる場合が意外にも多い。

  • ・苦難に出会うのは何かをやろうとする人に宿命である。ゆえに問題は、苦難に出会うことではなく、それを挽回する力の有無になる。しかも挽回は早期に成されねば効果はなく、それには主導権をいち早く、つまり敵よりも早く、手中にするしかないのであった

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  • 破門を何回受けただろう。「法王は太陽、皇帝は月」と「カエサルのものはカエサルに、神のものは神の手に」の対立。法王との争いは、不毛なものに映るが、その当時の信仰の力はそうだったのであろう。しかしあと10年も生きていれば、北イタリアの歴史は変わり、現在のイタリアにほぼ近い勢力圏を誇る王国が成立していたであろうか。

  • 後半は1238年から、フリードリッヒは北イタリアを巡回しディエタの開催を続けた。近隣コムーネの代表を呼び皇帝の支配権を認めさせるためだ。3月にはついにミラノが折れた。とは言え行政権と施政権はコムーネ側にあるとする条件付き講話であり、フリードリッヒの求める無条件降伏とは相容れない。交渉は決裂した。

    この当時兵力に割けるのは人口の2割、ミラノの兵力は1万3千ほどだが援軍が来れば倍ほどになる。常設の軍を持たず、ドイツや南イタリアから集めた皇帝軍は昨年末に解散していた。フリードリッヒにとっても攻城戦は容易ではない。まずは補給路を封鎖しやすいブレッシモの攻城にかかるのだがここでつまづいてしまう。冬までにブレッシモの籠城を崩せなかったフリードリッヒは軍を解散した。小都市を攻略できないのは皇帝の権威の失墜につながりかねない事態だ。

    この後のフリードリッヒの対策は派手さはないが見事だ。一度皇帝側についた北イタリアのコムーネが動揺し始めたのに対しては重臣を派遣し睨みを効かせる。ドイツ、ヨーロッパを皇帝側に引き止めつつ、イスラエルの講話を10年延長した。さらにはモンゴルの侵略に対しポーランドとハンガリーに援軍を送る。これらは一通り成功したが問題はローマ法王対策だ。

    法王の権威を取り戻すチャンスと見たグレゴリウスはフリードリッヒを3度目の破門に処す。フリードリッヒの反応も徐々にエスカレートし、フリードリッヒはついに法王領へ侵攻を始めた。当時はコンスタンティヌス大帝に寄進書によりローマ法王はローマ帝国の西半分、つまりヨーロッパ全土を所持していると信じられていた。中でも法王領は直接統治されている。フリードリッヒを異端と断じようとした公会議の開催がフリードリッヒの実力行使によりローマに向かう聖職者が捕らわれてから3ヶ月法王自身が追い詰められた。ところがここでグレゴリウスが亡くなった。その後22ヶ月法王は空位のままであった。

    本の構成もここで間奏曲として女たち、子供たち、協力者たち、友人たちなどを述べているがやはりどうしても盛り上がりに欠ける。ちょっと残念なところだ。

    ようやく選ばれたインノケンンティウス4世とフリードリッヒとの会談は直前で法王が逃げ出した。法王はそのままフランスのリヨンまで逃げたのだから呆れるしかない。さらにはリヨンで公会議を開きフリードリッヒは異端であり次の皇帝を選ぶように進言した。フリードリッヒも反論したように各国の王もこの判決を認めることは自らの地位もいつ奪われるかわからないことを意味する。さらには司教の中にもやりすぎだと反発するものも出た。

    この時は失敗した法王だがドイツ王を選んだり皇帝の暗殺を企てたりと暗躍を続ける。そしてその執念はついにパルマで身を結んだ。皇帝派のパルマでクーデターを起こした法王はに対しフリードリッヒはパルマを完璧に包囲しパルマは間も無く降伏というところでフリードリッヒが鷹狩りに出かけ不在となった基地をパルマ住民も含めた暴徒が焼き討ちし壊滅させた。それでもフリードリッヒは失地を回復する。この2年後56歳で病気で亡くなるまでフリードリッヒの統治は盤石であり続けた。

    ローマ法王がフリードリッヒの息子を追い落とすためにしたことはフランス軍を引き込むことだった。神聖ローマ帝国が弱体化する代わりに力をつけたフランスによりローマ法王が幽閉されるアヴィニョン捕囚が起こったのはフリードリッヒの死後53年。「このように常に他国の王に頼ってきた歴代のローマ法王によって、イタリアは外国勢力の侵略に、長年にわたって、しかもくり返して苦しむことになったのである」と書いたのが250年後のマキアヴェッリだ。ローマ法王領がヴァチカン市国だくになったのは1870年、この年にようやく政教分離が達成された。ちなみに異端裁判所は教理聖庁と名を変え今でも存続している。裁かれるのは聖職者のみとなったようだ。

  • 上巻のレビューに「子どもの教育がうまくいかなかった」と書きましたが、これは私の間違いでした。失敗したのは第一子だけです。他の子ども達は立派に育ちました。

    ただ、父がフリードリッヒ二世、つまり「STVPOR MVNDI ストゥポール・ムンディ」(世界の驚異)ですから、死後も子ども達がその状態を維持していくのは大変なことなのです。

    フリードリッヒの築き上げたものが崩れていくのは、覚悟していたけど、やっぱり読みながら辛かったです。
    でも孫娘がかたきをとってくれて、スッキリしたー。

    中世のいろいろなことがわかってとても面白かった!塩野七生女史は前TVで「あと2人書きたい人物がいます」と言われました。その一人が、フリードリッヒだったのですね。塩野女史には長生きしてもらって、あと一人と言わず、どんどん書き続けてほしいです。次は誰だろう?

    フリードリッヒやそのまわりで支える人たちは本当に素晴らしい。参考にしたいです。
    でもこの本で一番面白かった人物は「ローマ法王」だったかも。フック船長みたいでした。

    ローマ法王の中にもいい人はたくさんいたのでしょうし、ヨーロッパ史ではやはり必要な人たちなのでしょう。興味深いです。

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