半島へ、ふたたび

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103165316

作品紹介・あらすじ

「あれ、朝鮮半島じゃない!?」家内の声に飛行機の窓から覗き見る。その瞬間、僕のなかでおぞましい24年の歳月が甦った。初めて訪れたソウル。初めて明かす、北朝鮮、拉致への思い-。万感胸に迫る手記。

感想・レビュー・書評

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  • 蓮池薫さんについて知りたくて読書。

    北朝鮮についてまだまだ書けないことだらけだと感じる。北朝鮮文化を熟知する日本人として今後、南北の文化比較などで活躍して欲しいと思う。

    著者の活躍で日本人の何十倍も拉致されたままの韓国で少しでも世論が動けばいいとも思う。

    24年間は長いとはいえ、北朝鮮で苦労してきたんだなと思う。随所に奥さんへの気遣いから人柄を感じる。不幸中の幸い北朝鮮だから夫婦としてうまくいけたとの感想もある。

    まあ、その”おかげ”で、夫婦間の”すれ違い”はなかったといえるがー。(p166)

    自由は素晴らいい。選択肢が多いことも素晴らしい。しかし、それが必ずしも人間の心の豊かさや幸せには直結しないのかもしれない。

    今後は日韓理解などでも活躍して欲しいと願う。

    読書時間:約1時間20分

  • 「自由な生活の集大成」

    自由な生活。今、韓国語の本を翻訳されているらしい。

    21世紀の世の中であるのに、となりの国で

    拉致生活を経験された。

    自由とはなんだろう。。。そんな思いで読んだ。

  • 拉致被害者・蓮池薫さんが、日本帰国後、ハングルの翻訳者となって、朝鮮半島をふたたび訪れる。その旅に関するエッセイが中心となった本である。

    拉致被害者であることを前面に押し出した本ではない。ある意味、普通の感覚を持った人が、韓国のあれこれを見聞し、また自らの日々の暮らしを綴るといった風にも読める。ただ特異なのは、その人が数奇な経験をして、奇跡的にまた普通の生活を取り戻したということだろう。

    前段に筆者の経歴等に触れた部分もなく、数年後、数十年後、この本を手に取った人が、この本がどういう経緯で書かれたのかがわからずに、少し戸惑うのではないかというのが気になった。

    ソウル旅行記、また、翻訳家の友人とのやりとりや、筆者が訳した本の作者である韓国人作家との交流など、興味深く読めた。飾らない筆者の人柄に好感が持てる。

    それにしても、自分は韓国のことってほとんど知らないなぁと改めて思う。少しずつ、知るところから始まるものもあるだろう。

    *拉致事件の頃、柏崎からさほど遠くないところに住んでいた自分は小学生だった。だから、拉致事件について、心のどこかに、人ごとではなかったかもしれない事件という思いはある。

  • 蓮池薫さん、素晴らしい作家です。
    私が言うのもおこがましいのですが、その文章力の高さ、強さには本当に驚かされました(内容に関しては特記しません)

    24年間という年月を北朝鮮という特殊な国で、理不尽な生活を強いられたのにも関わらず、思想的に偏ったところが全くみられません。
    今どきこんな公正な目で物事を見つめることができる人がどれくらいいるだろうかと思うほど、どんな場面でも中立です。
    大学時代に法律を学ばれたことも影響しているのかもしれませんし、過酷な生活の中で培われた人間性が逆に物事の公正さに重きを置くようになられたのかもしれない...などと勝手に解釈しました。

    拉致問題にはずっと関心がありますが、日本政府がこの先どうしようとしているのか、一般人には見えてきません。
    私ですらこの状況にイライラが募るというのに、帰国者である蓮池さんたちが日々どのような思いで過ごされているのか、自由を得たからこそ、未解決の問題が心に重くのしかかってくることも多いでしょう。

    自分に何ができるのか、ということをあらゆる角度から考えて今の蓮池さんがあるのかもしれません。

    未だ全てを語ることのできない24年間だったと思います。
    最大限に言葉を選びながらも尋常ではない生活の苦労がユーモアを交えて語られると、不謹慎ながら微笑ましくなります。
    それは苦しさの中で寄り添い励まし合いながら必死で生きてきた蓮池家の家族の姿がそこに見えるからです。

    そしてそんな苦労をずっと共にされてきた奥様が今も蓮池さんの傍に元気でいらっしゃるということ、また「家内の方が生活の上では苦労が多かった」とさりげなく語る姿に最高な夫婦の形をみるような気がして、少し羨ましくも思えてくるから不思議です。

  • 同民族でありながら、袂を分けた北と南。
    その事実を改めて実感した一冊です。解説も文節もとても読みやすく今後は同著者の翻訳本を読んでみたいと感じました。

  • 父からもらった本
    北に拉致され、24年の歳月を奪われた著者が初めて韓国に訪れた

    拉致されていた頃の北から見た南への視点、そして日本で失われた時間を取り戻していく様子、また初めて訪韓してみるソウルの景色、思い

    蓮池さんだからこそ描ける内容であり、また韓国に住むわたしにとって新鮮な韓国の姿を改めて感じた おもしろかった

  • 北朝鮮時代の話かと思ったら、北朝鮮、韓国、日本の文化の比較論が多かった。まぁ、北朝鮮の話はまだ公には出来ないのだろう。とは言っても、蓮池さんの文章が読みやすく、理解しやすいので勉強になりました。

  • 少し説教くさい。
    北朝鮮での暮らしの記述がもう少し多いかと思ったけど、あんまり詳しくは書けない事情とかあるのかな。

  • 北朝鮮拉致被害者として24年間の人生を失った著者だが、新たな人生を歩み出した。取り戻した自由を謳歌し、豊富な韓国語知識を活かせる翻訳家・講師の職業を選び、夫婦での韓国旅行を楽しみ、韓国著名人との親睦を深める。

    この本で登場するのは、拉致被害者としての過去や周囲からの同情との決別を宣言し、新たな人生にチャレンジする前向きな著者だ。

    拉致問題は未だ解決されておらず、当然、著者はその問題に関わるべき人物。とはいっても、これからの人生を拉致問題だけに捧げるには著者の余生は長すぎる。扶養すべき家族もいる。

    自身が社会的地位を備え、世間への発言権を持つことが、拉致問題の解決につながる。ユーモアを散りばめ、気楽に読める旅行記・自伝エッセイの中にそんな信念を感じないこともない。

  •  蓮池さんの北朝鮮での生活について書かれた本かと思っていたが、全体の中ではほんの一部だった。帰国後の生活や翻訳者としての仕事、韓国への取材、原作者との交流などの話が中心になっている。しかし、キムチ作りなど一部のことだけでも北朝鮮の生活の大変さが伝わってきた。
     帰国後の僅かな期間で翻訳者として活躍されている蓮池さんはすごい。

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著者プロフィール

翻訳家。新潟産業大学経済学部准教授。
訳書に、孔枝泳『私たちの幸せな時間』、『楽しい私の家』、『トガニ 幼き瞳の告発』、
金薫『孤将』(いずれも新潮社)、クォン・デウォン『ハル 哲学する犬』、『ハル2 哲学する犬からの伝言』(ポプラ社)など多数。著書に『半島へ、ふたたび』(第8 回新潮ドキュメント賞受賞)、『拉致と決断』(いずれも新潮社)、『夢うばわれても 拉致と人生』(PHP 研究所)などがある。

「2021年 『韓国の小説家たちⅡ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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