春のこわいもの

著者 :
  • 新潮社
3.18
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本棚登録 : 2771
感想 : 205
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103256267

作品紹介・あらすじ

こんなにも世界が変ってしまうまえに、わたしたちが必死で夢みていたものは――。感染症大流行前夜の東京――〈ギャラ飲み〉志願の女性、ベッドで人生を回顧する老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を秘かに裏切りつづけた作家……。東京で6人の男女が体験する甘美きわまる地獄巡り。これがただの悪夢ならば、目をさませば済むことなのに。『夏物語』から二年半、世界中が切望していた新作刊行!

感想・レビュー・書評

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  • この短編集が描いているのは、コロナ禍のはじまり、2020年の春のこと。
    読んでいて、志村けんさんがコロナで亡くなられたことを思い出した。あの春は本当に辛い春だった。

    「春のこわいもの」ーコロナの最初期。
    昨日までの平和な世界は、どこへ消えてしまったのか? 
    どこに逃げこめば良いのかわからず、何を信じればいいのかもわからない。
    今日をどう生き延びれば良いのか?先を見通せず、底知れぬ恐怖の日々。

    川上未映子さんの美しく流れる文章は相変わらず完璧で、読む人の胸を突き刺してくる。まるで鋭利なナイフのように。


    僕はこの小説、オーディブルで聴いたのだが、岸井ゆきのさんの朗読がまた、めちゃくちゃ素晴らしい。
    いつまでも意味をとらず、ぼーっと聴いていたいくらいだ。

    特に「あなたの鼻がもう少し高ければ」はマッチし過ぎていてヤバいくらいで、鳥肌もの。

    「ブルー・インク」は逆ギレで何もかもぶち壊したくなる男子高校生の心情が非常にリアルに描写されている。女性作家が書いたということにかなりの驚きを感じた。

  • コロナ禍で体験した自粛ムードのギスギスした雰囲気。自粛警察などもでてうんざりするほどの批判や嫉妬が溢れていたご時世でしたが、そんなアウトラインの霧に不快を覚えました。傍観してるのだけど理解できないし、話が通じない疎外感に、ひとり取り残されてゆく恐怖を感じました。SNSとか、承認要求とかエゴサーチとか心騒がすことには目を塞ぎたくなるし、見えないものの恐怖が迫ってくる日々に怯えながら人混みで息をするのも大変な不自由さ、うまく気持ちを捉えることできない一人歩きする文体は、かまってくれないし、共感とか別次元で入り込むことができない。ページをめくるごとに感じる温度差に心が閉ざされてしまいました。「夏物語」は良かったのになんだろうイライラする。

  • コロナが流行りだして今年で4度目の春を迎える。
    この作品はコロナが流行り出す直前の6つの物語。
    未知のウイルスは怖い。しかし、この世界で一番こわいものってやっぱり人間の心なんだなと思った。
    特に『あなたの鼻がもう少し高ければ』が印象的だった。
    こ、こんな世界もあるのね…と。
    こわい…でも続きが気になる…と完全に物語の世界に引き込まれた。
    川上未映子さんの他の作品も気になる。

  • 6話の短編だが、どれも独特なこわさを感じる。
    まさに「春のこわいもの」である。

    「あなたの鼻がもう少し高ければ」は、美容整形に興味があるのに資金がない女子学生が、面接で徹底的に嘲罵されるさまが、凄すぎて何も言えなくなる。
    ここまで言うんですか…と。

    「淋しくなったら電話をかけて」は、身近にいる人があまりにもリアルすぎて描写がこわいと感じるほど。

    「娘について」は、久しぶりの友人からの電話で記憶の深層へと意識が向かい、彼女とその母への経済格差からくる嫉妬を呼び起こす。
    その母が亡くなったのだと聞いたあと。
    いや、実際何の電話だったのかと。
    復讐、強迫、謝罪、いろいろな不安が押し寄せてくるこわさ。
    わかりにくいからこわいのだ。

  • もやもやと黒っぽい霞の中に入り込んだ気分で本を閉じました
    そうですね
    こわいものばっかでした
    著者の巧みな筆致で連れて行かれたけれど
    私は早く戻りたかった

    年齢のせいかな
    川上未映子ワールドは、ちょっと馴染まないのです
    でも、こわいもの見たさというか
    惹かれます

    ≪ 悪夢なの 変貌してく 感染症 ≫

    • アールグレイさん
      かよこさん、こんにちは

      春の怖いものが私にやってきた、ような気がするのです。50代で1/2、80代で100%かかると言われました。
      白内障...
      かよこさん、こんにちは

      春の怖いものが私にやってきた、ような気がするのです。50代で1/2、80代で100%かかると言われました。
      白内障手術をすることになってしまいました・・・・・(ノ_・。)
      泣きたい!涙ひとつ出てこない。
      かよこさんなら、わかってもらえる気がして、ごめんなさい(>_<)
      2022/05/18
    • はまだかよこさん
      アールグレイゆうママさんへ

      目は怖いですね、本当に怖い!
      私は現在白内障手術、執行猶予中です。
      いずれ、執行のときが遅からずやって...
      アールグレイゆうママさんへ

      目は怖いですね、本当に怖い!
      私は現在白内障手術、執行猶予中です。
      いずれ、執行のときが遅からずやって来ます。

      両目ですか?片方?
      入院して?

      たくさん手術した方知ってますが
      皆さん快調のご様子です。
      乗り越えられたらきっと晴れやかな日々が!
      でも怖いですよね。

      くれぐれもお大事になさってください。
      本もスマホもパソコンもセーブなさってね。
      薫り高いアールグレイ飲まれて、ほっとなさってください。
      2022/05/19
    • アールグレイさん
      かよこさん

      ありがとうございます
      m(。_。)m このようなことは人に言わずにいた方が良いものか、でも慰められたい心境なのです。右眼です。...
      かよこさん

      ありがとうございます
      m(。_。)m このようなことは人に言わずにいた方が良いものか、でも慰められたい心境なのです。右眼です。まるで薄く靄がかかっているような感じ。本当にこのような話、ごめんなさい
      (o_ _)o
      2022/05/19
  • とてもこの著者らしい癖の強さの色濃い作品だった。ベースにコロナ禍のアンニュイさと不安定さがあるけれど、誰しもが持っているであろう嫌な恐さが6篇の短編それぞれに流れていて、どこか暗くてどんよりして重くて憂鬱気分になるのに何故かクセになるような味わい深い作品でした。中でもよかったのは最後の「娘について」でした。

  • すべてがイヤになったり、もどかしさが続いてしまったり、何もかも上手くいかなっくなってしまったあの春から。人々がそれぞれ感じたこわいものを
    リアルに作品に落とし込んでいて、素晴らしいなと
    感じました。タイトルの「春のこわいもの」は、コロナを指しているんじゃなくて、もともと自分が心の中に潜んでいた悩みを指しているんじゃないかと、私は感じています。たまたま、コロナがやってきて、そこに追撃を受けて、コロナをこわいものと錯覚してしまったのじゃないかと、私は思います。
    でも、誰しもがコロナのせいで、悩んだと感じているし、環境も変わっただろうし、難しいで解決する問題でもないし、どう乗り越えるか、どの情報を信用するか、一人一人の意識が大事だなと感じました。

  • そこまで春とこわいものにかかるものでもなかったが、ぞくっとする読後感のある話ばかりで面白かった。
    こういう話にうまく共感できない人生を歩みたかった。

  • とらえどころのないこわいもの。
    それは人の心理。

    どんなに仲が良い友人でも、家族でも、恋人でも、心の中は本人にしかわかんない。
    色んなことを分かり合えてるつもりでも。
    本当は、何を考えて、どんな事を想像したりしてるのかわかんない。

    6つのこころを覗く短編集。
    少し心当たりがあったりなかったりして、意味もなくドキドキする。

  • 川上未映子さん、2年半ぶりの新作小説『春のこわいもの』(新潮社)を刊行! |株式会社新潮社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000476.000047877.html

    Alex Hanna
    https://www.alex-hanna.co.uk/paintings.html

    川上未映子 『春のこわいもの』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/325626/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      自分の中の大きな“他者”と向き合うとき…川上未映子のこわいもの|ウートピ
      https://wotopi.jp/archives/126019
      自分の中の大きな“他者”と向き合うとき…川上未映子のこわいもの|ウートピ
      https://wotopi.jp/archives/126019
      2022/03/31
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「とにかく書くときに楽をしない」川上未映子が常に自身に問いかけていること|ウートピ
      https://wotopi.jp/archives/1...
      「とにかく書くときに楽をしない」川上未映子が常に自身に問いかけていること|ウートピ
      https://wotopi.jp/archives/126038
      2022/04/04
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ◆おぼろな世 危うく脆い人間[評]横尾和博(文芸評論家)
      春のこわいもの 川上未映子著:東京新聞 TOKYO Web
      https://w...
      ◆おぼろな世 危うく脆い人間[評]横尾和博(文芸評論家)
      春のこわいもの 川上未映子著:東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/169313?rct=book
      2022/04/04
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著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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