- Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103285618
感想・レビュー・書評
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若き仏師が、さまよえる魂を鎮める怪異連作集です。怪談のように怖さを出すのではなく、生きている人と亡くなった人との心の繋がりを軸にしたストーリーが主です。冒頭の1話を読んだ時点で「ジョーカーゲーム」のような軍の特殊機関の連作かとも思ったのですが、海軍を舞台にしつつも全作を通して登場するのは仏師のほう。特殊機関の連作とするのか、仏師の連作とするのかどちらがいいのかなぁ。それぞれの物語がよいので連作としてのまとめかたで、どっちかに軸を傾けてほしいかなぁ。
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旧日本海軍が舞台のプチホラー短編5編。日本ファンタジーノベル大賞受賞作にしては若干インパクトが弱い様な気はしますが、読後のほっこり感には好感が持てます。
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魂を込めてつくる仏には、何かが宿っている…
若き彫刻師の笠置亮佑が作る願いが込められた作品を手にした者は、一緒にその者の願いを受け取ることになる。
生死を分けるのは、案外、こういうことがあるのかもしれない。 -
短編集。1、左手の霊示 2、霊猫 3、冬薔薇 4、海の女天 5、哭く戦艦 冬薔薇がこの中で一番好きだ。
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左腕を失い義手をつけることになった海軍将校が、義手に宿った力のおかげで霊が見えるようになり、海軍内で起きる不可思議な現象を処理するために奔走するという設定にまず目をひかれた。掲載された5つの怪異談は海軍が絡んでいるものの、必ずしもこの将校が主人公ではなく、むしろキーパーソンは木彫を仕事とする若者のほうなのだが、海というあまりにも広すぎる舞台に浮沈する、人や人外の想いが、塩辛い悲しみや優しさを秘めた執着の形で描かれている。多少安直な部分はあるものの、なかなか興味深い内容で、楽しめた。