あつあつを召し上がれ

著者 :
  • 新潮社
3.30
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本棚登録 : 1911
レビュー : 378
  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103311911

作品紹介・あらすじ

一緒にご飯を食べる、その時間さえあれば、悲しいことも乗り越えられる-幸福な食卓、運命の料理とのふいの出会いを描き、深い感動を誘う、7つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 小さい頃、人見知りだった私がしょんぼりしているといつも、
    母は油にドーナツ生地をぽとんぽとんと落としては、こんがりと揚げてくれました。
    「ほら、これ、何に見える?」と訊かれ、
    「う~ん、ペンギン?」とか「ひこうき!」とか答えているうちに、
    いつのまにか「しょんぼり」はどこかに飛んでいってしまっているのでした。

    私にとっての「何に見える?ドーナツ」みたいに
    誰にも、思い出としっかり手を繋いだ、忘れられない料理やお菓子がある。
    そんなメニューを7つ並べた、ひとつひとつのタイトルを見るだけで
    おなかが空いてしまいそうな短編集です。

    「食べて、生きること」の大切さを、変わることなく訴え続けている小川糸さん。
    今回も、『バーバのかき氷』・『親父のぶたばら飯』・『こーちゃんのおみそ汁』など
    ほろりとさせながら、温かい余韻を残してくれるお話が素敵です。

    でも、よく「ほっこりさせてくれる作家」と表現される小川さんだけれど
    魅惑の香水には、必ずちょっとだけいやなニオイがブレンドされているように
    作品の中にいつも、ほのかな毒やシニカルな視線が混ぜ込まれているからこそ
    温かさが際立つのかも。

    今回も、『あつあつを召し上がれ』と銘打ちながら、かき氷の話を冒頭に据え、
    贅を尽くした料理や、素朴でも食材を吟味し、丁寧に作り上げた料理を幾つも並べたあと、
    最後の物語では、ヒロインにインスタントのだしを使った料理を
    「おいしい」と言わせてしまう。
    なんとも小川さんらしい隠し味の効いた1冊でした。

    • まろんさん
      vilureefさん☆

      母は誉めてもらうと調子に乗るタイプだったので
      vilureefさんにそんなに誉めていただいて
      今頃天国でダンスでも...
      vilureefさん☆

      母は誉めてもらうと調子に乗るタイプだったので
      vilureefさんにそんなに誉めていただいて
      今頃天国でダンスでも踊っているかもしれません♪
      いつも思い遣りあふれるコメント、ほんとうにありがとうございます!

      『親父のぶたばら飯』に出てくる中華料理屋さん、
      お店はなんだか煤けた感じなのに、出てくるお料理がとてつもなく美味しそうなんです。
      お読みになるときには、お腹をちゃんと満たしてからでないと、辛いかもしれません(笑)
      2013/03/28
    • nico314さん
      まろんさん、こんにちは!

      >ほろりとさせながら、温かい余韻を残してくれるお話が素敵です。

      本当にその通りです!!

      >最後の...
      まろんさん、こんにちは!

      >ほろりとさせながら、温かい余韻を残してくれるお話が素敵です。

      本当にその通りです!!

      >最後の物語では、ヒロインにインスタントのだしを使った料理を「おいしい」と言わせてしまう。

      そうなんです。これ、すごくリアルだなと思いました。
      きりたんぽを丁寧に作っている時は、思い出のためにという感じがして、生きている自分たちより優先させらているような。
      で、最後のインスタントだし。
      絶妙のバランスだな、と。
      「お腹がすいてしまって我慢できないし、とにかくたべちゃお!おなかがすいていれば、なんだっておいしいよ」みたいな、生きるエネルギーを感じて、微笑ましく、それでいてほろ苦さが残り、とても現実的でした。

      2013/07/03
    • まろんさん
      nicoさん☆

      うわあ、うれしいです!
      こんなとりとめもないレビューから、伝えたかったことをしっかり受け止めてくださって。

      そうなんです...
      nicoさん☆

      うわあ、うれしいです!
      こんなとりとめもないレビューから、伝えたかったことをしっかり受け止めてくださって。

      そうなんですよね、きりたんぽは、作る過程のほうに意味が持たされてるというか
      それはそれで大切なことではあるんだけど、作るために作っている、みたいなところがあって。
      それが、最後の最後には、肩に力を入れずに、インスタントだしで作った料理を
      これから生きていかねばならない人たちが、「これはこれで立派においしいじゃない」と、平らげる。
      あのリアルさ、逞しさが、なんともいえない味わいですよね♪

      偶然にも、冠婚葬祭ラッシュでバタバタしてる中、それでもやっぱり小川糸さんの新作
      『リボン』と『つばさのおくりもの』を読み終えたところで
      nicoさんがこのレビューにコメントをくださったことにも
      なんだかご縁を感じてうれしくなってしまいました(*'-')フフ♪
      2013/07/05
  • 食卓を囲む人たちの、思い入れのある料理にまつわる7つの短編集。

    どの話にも、別れの匂いが漂っている。
    過去の、現在進行形の、そう遠くない未来に訪れるであろう哀しみを背後に感じさせながら、
    現在の幸福な暮らしがある。


    特に好きなのは
    別れることを選択した2人が最後に訪れた宿で
    とびきりおいしい夕食と朝食を堪能する「さよなら松茸」
    亡くなった父親が最後に食べたいと願い果たせなかったきりたんぽの鍋を、
    残された家族が用意する「季節はずれのきりたんぽ」


    長い人生の中で多くの人に出会い、一緒に時を過ごし、また別れて暮らすことになっても、
    その記憶が遠いものとなっても、
    ふとした時に、話したことやその時の情景、
    一緒に楽しんだ音楽が思い出されることがあると思う。
    一緒に聴いた、大好きだった曲。
    切ない。

    でも、なぜだか、一緒に食べたものを思い出すとき、
    あの人が好きだといった食べ物を口にするとき、
    気持ちが温かくなる気がする。
    それは、『食べる』という行為のもつ生に直結する、
    前向きなイメージのおかげなのかな?

    どの話も料理を囲みながら、たくさん話をしながら、
    心の中に去来したたくさんの場面を、ひとつずつ丁寧に追っている。
    そうしていくうちに、哀しみに少しだけ慣れ、折り合いをつけ、
    今、おいしく食事を頂いていることにほっとし、
    幸せの入り込む余地を見つけていく。

    この先その人に会うことができない辛さはなかなか克服できるものではないでしょう。
    平気になるということは、ないかもしれない。
    それでも、泣いてばかりはいられない。
    食べて、笑って、生きていく。

    穏やかだけれど深いところから満ちていく感覚を味わうことができるお話でした。

    • だいさん
      「季節はずれのきりたんぽ」

      いつ食べても、美味そうだが、季節物ですか!?
      「季節はずれのきりたんぽ」

      いつ食べても、美味そうだが、季節物ですか!?
      2013/07/06
    • nico314さん
      まろんさん

      こちらこそ、ありがとうございます!
      本を読んでいる最中は、あれもいい、これも書きたいと思いながら、いざレビューを書き始め...
      まろんさん

      こちらこそ、ありがとうございます!
      本を読んでいる最中は、あれもいい、これも書きたいと思いながら、いざレビューを書き始めると、結局いつも同じようなことを書いてしまい、伝えきれない物足りなさを感じてしまいます。
      そんなとき、まろんさんのレビューを拝見して、「そうそう、これが言いたかったんですよ!」と画面のこちら側で、うれしくなっているのです!

      歳を経るに従い、嬉しいこともあるけれど、やはり別れも数多く経験することになりますよね。
      そうすると、悲しい事実だけに浸って生きてはいけなくなってくる。学生時代の失恋は1人で落ち込んで、もうここから一歩も動けないと思っていたのに、今はそうも言っておれない。それなりに周りに対する責任もあったりして。
      元気だから食べるというより、食べて生き続けようみたいな。

      本を読んで、共感するところで、自分の心理状態がわかってしまうようですね。
      2013/07/07
    • nico314さん
      だいさん

      タイトルは、本当に食べたかった時期を逸してしまったということだと思います。

      本格的なきりたんぽは食べたことはないのです...
      だいさん

      タイトルは、本当に食べたかった時期を逸してしまったということだと思います。

      本格的なきりたんぽは食べたことはないのですが、スーパーの品でも十分香ばしくておいしかったのを覚えています。

      確かに、いつ食べてもおいしそうなのですが、昨日はさすがに気が遠くなりそうな暑さで、我が家では鍋物系は、朝晩が涼しくなってからの登場となりそうです。
      2013/07/07
  • ・バーバのかき氷
    ・親父の豚ばら飯
    ・さよなら松茸
    ・こーちゃんのおみそ汁
    ・いとしのハートコロリット
    ・ポルクの晩餐
    ・季節はずれのきりたんぽ

    「親父の豚ばら飯」と「さよなら松茸」と「こーちゃんのおみそ汁」が
    とても良かった。
    病院の待合室で泣きながら読んでしまいました(-_-;)

    どんな悲しいことがあっても、逆に楽しいことでも
    一緒に食事した風景
    共有した時間は色鮮やかによみがえるよね…
    大事な家族や恋人と一緒に過ごした、温かい記憶が
    おいしく見事に描かれています。

    個人的には「さよなら松茸」が好きです(o^∀^)
    記憶に残るのが「ポルクの晩餐」

  • 食べ物の記憶は、けして有名店の物を食べて美味しかったとか高級なものを食べて美味しかったじゃないなと。
    記憶に残っているのは、誰と一緒だったとかどんな心境だったかとか。
    人はやっぱり五感で生きている。
    美味しいまずいじゃなくて、日常にも小さな物語が発生している。
    だんだん大人になると悩みが深くなってくる。深い悩みだけど向かい合うことで、優しくなれるのかな。
    読みながら大切な人を想って涙が沢山出た!

  • 『食堂かたつむり』の世界観がとても好きで、同じ著書によるこの本も読むのを楽しみにしていました。
    著者が得意とする、食と料理を巡っての物語。
    今回は短編集となっています。

    相変わらずほっこりしたりヒリヒリしたりと、心をじかに揺さぶられるような深みのある思いを味わいます。
    著者の物語の根幹を成す、愛する者の喪失感が、さまざまな主人公を通して語られます。

    新たな関係の構築という生まれくる話は、一話のみ。
    あとは、失いゆくものへの絶ちがたい哀惜の念が、時にはひねくれ、時にはストレートに描かれ、美しい思いも醜い思いも、語られるどれもが共感できる感情ばかりのため、深く動揺しながらも、手放せずに最後まで読み切りました。

    決して荒々しい表現が使われたり、乱暴な書き方をしているわけではなく、どちらかというと静謐な小品ばかりなのに、かなり激しく心を揺り動かされ、心が針で刺されたような痛みを感じ、読んだあとは余韻と疲労でどっぷりと抜け出せなくなっている感覚。

    これまで、等身大の女性の日常を描いた物語ばかりでしたが、この短編集の中の『ポルクの晩餐』は、いつになくなんとも不思議な物語でした。
    愛人がオスの豚って!?摩訶不思議。
    頽廃的ながらもどこかすてきな作品でした。

    食べることは生きること。食べることへのこだわりは、生への充実につながりますが、老いの残酷さもきちんと描きこまれています。
    たとえ家族のことを忘れても、人は、美味しいものを食べた記憶は失わないものなのでしょうか。
    どれも丁寧に食べ物、調理、料理、食べることについて書かれており、食べるという日常の行為そのものにいとおしさを感じます。

    食の記憶と共に甦る失われた人との思い出。
    『失われた時を求めて』の日常版のような、食欲と切ない痛みを堪能できる作品の数々が収録されています。

  • 思い出の食べ物をめぐる短編集。
    人生の中で、食べ物の存在って大きいですよね。
    食べ物で思い出すことってけっこうあるかもなぁ。

    家族との楽しかった思い出。
    恋人との別れ。
    お母さんが残してくれた味。
    人生のいろんな場面で思い出の食べ物があって、
    それらが短編だけど食べ物中心に丁寧に描かれていました。

    病院で過ごす痴呆症のおばあちゃんに、
    思い出のカキ氷を届ける「バーバのかき氷」と
    自分が死ぬ前に娘におみそ汁の作り方を教える
    「こーちゃんのおみそ汁」が印象に残りました。

    食べることも作ることも、
    大事にしたいなぁ~と改めて思いました。

  • 美味しそうな描写がたくさんの短編集。
    料理って味そのものだけが記憶に残るわけじゃない。
    いつどこで誰とどんな話をして、どんな雰囲気で食べたか、心に残る映画のフィルムみたいだ、と思いました。

  • タイトルと表紙から可愛らしい作品をイメージしていた私は、読み始めて戸惑った。これは…。

    老いや、愛する人の死、別れ…どれもズシリときた。誰もがこれから経験するであろう事を、
    不器用な登場人物たちが美味しいものを通して語りかけてくれる、感動の7つの物語。
    なくしてしまう前に大切なものに気持ちが届けられますように…。そう聞こえる気がした。

    どの作品も食べ物の描写が凄い。お腹が空いている時は注意。
    メニューの中で一番食べたいものは、ぶたばら飯!

  • 食べ物の描写が素敵な小川さんの十八番と言えそうな一冊。色々な食べ物をメインにした短編集。

    印象に残ったのは「親父のぶたばら飯」と「ポルクの晩餐」。
    ・親父のぶたばら飯
    結婚を控えた男女。男性が昔よく通ったという中華料理店に女性を連れて行く。
    話中に出てきたけど、外食をして「いい」と思えたら人生のパートナーにしても間違いなしって言うのは割と当たってそう。
    出てくる食べ物のラインナップが一番好みだった。

    ・ポルクの晩餐
    男性同士のカップル。恋愛の果てにパリでの心中を決意し、最後の旅行と晩餐を楽しもうとする。結局心中をしたのかしてないのか書かれてはいない。
    主人公の恋愛相手である「ポルク」が、容姿は酷い書かれ方してるんだけど憎めないいい人。話してるとホッとしそう。

  • 初めての小川糸さん。食堂かたつむりで有名なので、料理が出てくる本がいいと思い、読んでみた。短編集だけど、ひとつひとつ残りました。

    親父のぶたばら飯の中華が本当に美味しそう!耐え切れず、読後、中華を食べに行った。

    他の方が触れていない、または結構苦手と書かれているポルクの晩餐。わたしはさよなら松茸より、むしろこっちの方が好きだったかも。何が、と考えるとよくわからないけど、多分雰囲気が。

    他のお話もほんの少し暗いものが混じっていて、好みの本でした。

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