あつあつを召し上がれ

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103311911

作品紹介・あらすじ

一緒にご飯を食べる、その時間さえあれば、悲しいことも乗り越えられる-幸福な食卓、運命の料理とのふいの出会いを描き、深い感動を誘う、7つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 十割蕎麦、『つなぎ』を使っていない蕎麦粉だけで打ったその蕎麦を初めて食べたのは、義父の家でした。蕎麦打ちが趣味だった義父。『たくさん、食べろ』と笑顔で呼びかける義父。家を訪ねるたびに独特なつけ汁とともに打たれたばかりの蕎麦をいただいた食事の風景。満面の笑顔の祖父の顔が今でも忘れられません。そんな義父が急に調子を崩したのが二年前。専門病院に入院するも肥大化する脳腫瘍は、手術を繰り返しても完治することはありませんでした。長くてあと一年と告知を受けた義父、それからの落ち込みようは今思い出しても辛くなります。食欲をなくし、出される食事に手をつけなくなった義父。食べたいものを食べさせてあげてくださいという看護師さんに言われ、院内の食堂へ連れて行きました。そこで祖父が注文したもの。天ぷら蕎麦でした。義父が一番好きだった食べ物。自分で打つほど蕎麦が好きで、天ぷらが好物だった義父。ひと口、ふた口、そして箸を置いた義父。そのあと、私の目を見て『俺は、もうだめなんだよ』と、呟いた食事の場面、今もはっきり私の中に刻まれています。同じ食べ物に楽しい想い出と悲しい瞬間の両方が結びついている。それを食べると楽しい想い出と悲しい瞬間の両方が浮かんでくる。食事は人にとって日々欠かせないものです。ひとりの食卓、友だちとの食卓、そして家族との食卓、そのそれぞれの場面には、その時々の人生の大切な瞬間が一緒になって刻まれています。この作品には、人が生きていく上で欠かせない、人が生きていくことを彩っていく、いろんな場面の食卓の風景が描かれています。

    7つの短編から構成されるこの作品。全体のページ数も単行本170ページ程度しかないこともあって、あっという間に読み進んでしまいます。7つに共通するのは食材、料理、そして食卓を囲む風景が作品の色を決定づける役割を果たしているところです。そう、食にあわせるかのように登場人物の年齢、家庭環境、そして場面設定が選ばれているかのようにも感じるこの作品。普通は、ストーリーがあって、その中で食卓が演出の一つとして描かれますが、この作品では、食卓があって、次にそれに合わせるようにストーリーが書かれたのではないか。主役は食卓ではないのか。そう感じるくらいに各話の中で食卓の印象が強く感じられました。

    7編の中で一番気にいったのは〈こーちゃんのおみそ汁〉です。『一月の寒い朝に産声を上げた私に、呼春(こはる)という名前をつけたのは母だった』という主人公・呼春は『名前をえらく気に入って』います。しかし、『私に呼春と名付けた母は、もうこの世にはいない』、亡くなって二十年が経つという母親の記憶がはっきり残っていなかったという呼春。しかし、結婚が決まり、父と二人で暮らした家を出ていくという段になって、『ようやく、自分の中に根付く「母」の存在に気付き』始めます。『いわゆる特訓が始まったのは、私が幼稚園に入る頃からだった』という呼春は、『再発』を悟った母親から『自分のことは何でも自分でできるよう』生活していく上で必要な事ごとを教え込まれていきます。『台所仕事だって、例外ではない』と、ご飯の炊き方を教わります。そして、『次に母が私に教えたのは、おみそ汁の作り方だった』と、『頭を取って、内臓の黒い部分も外して、身を二つに裂く』という『煮干しの扱い方』から全てを教えてもらう呼春。『料理は五感で覚えるもの』という母の考え方により、『煮干しを煎る時のいい塩梅の香りは、しっかりと記憶のひだに挟まれている』という呼春。『特訓が終わると、母はとたんに優しくなる』と『母の体にまとわりつくのが好きだった』という呼春。そんな幼稚園時代を思い出す呼春は、『私は二十代半ばの若さで、すでに母の享年をこえ、これからはどんどん母が年下になっていく』という現実を認識します。そして、『私がお嫁に行ったら、父はこの家で一人になる。庭の桜の木を見上げ、「私、お嫁に行くよ。明日、結婚するの。お母さん、お父さんのこと、しっかり守ってあげてね」』と心の中でそっと静かにつぶやきます。そして…、と展開するとても味わいのある物語。

    もう一つ挙げるとすると〈親父のぶたばら飯〉。こちらはストーリーもとてもいいのですが、それ以上に食に関する描写が、もう突き抜けていると感じました。『中華街で一番汚い店なんだけど』と恋人に案内された主人公・珠美。最初から最後まで食を最前面に押し出した物語が展開します。まずは『ビールとしゅうまい』と注文した二人、このしゅうまい。『不揃いな形のしゅうまいからは、ほわほわと白い湯気が立っている。「美味しい!」』と頬張る口の中を表現していきます。『口の中にまだ熱々のしゅうまいを含んだまま、それでも驚きの声を上げずにはいられなかった。固まり肉を、わざわざ叩いて使っているのだろう。アラびき肉のそれぞれに濃厚な肉汁がぎゅっと詰まって、口の中で爆竹のように炸裂する』。肉汁が口の中に溢れる瞬間を爆竹に例えるという絶妙な表現に、読んでいる方も、もうたまらない気分です。そして次の『ふかひれのスープ』では、『優しく優しく、まるで野原に降り積もる雪のように、私の胃袋を満たしていった。地面に舞い降りた瞬間すーっと姿を消してしまうかのように、胃から体の隅々へ行き渡っていく。儚い夢を見ているようだった』ともう今生の幸せを味わうかのような描写に、文字が美味しく見えてくる不思議な気分を味わいました。これはもう、読書なんかしている場合ではなく、すぐにでも自分も食べたくなってきます。こういうのを『食をそそる』というのでしょうか。この短編ではとにかくメインディッシュの『ぶたばら飯』含め散々に空腹を刺激され続けました。

    『どうして本当に美味しい食べ物って、人を官能的な気分にさせるのだろう。食べれば食べるほど、悩ましいような、行き場のないような気持ちになってくる』というように美味しい食べ物を食べる時の幸せは何ものにも変えがたいものがあります。長い人生、生きていれば、辛いこと、悲しいこと、そして苦しいことだって避けることはできません。毎日の暮らしだって、気持ち安らかな日々ばかりとはいかないでしょう。でも、どんな時にも食は必ずついてきます。ある食事風景が、何年経っても、家族の幸せな時、そして一方で悲しい瞬間の象徴となって、いつまでも記憶の中に残り続けることだってあると思います。でも、それであっても『美味しい物を食べている時が、一番幸せなのだ。嫌なこととか、苦しいこととか、その時だけは全部忘れることができる』。食事の場面では、どんな時でも幸せを感じる瞬間があったはずです。美味しい、満たされる、と思った瞬間。全てを忘れて食の喜びに浸る瞬間。そんな食事風景の数々を文字で刻んだこの作品。レンゲですくって舌の上にスープを流し込んだ恋人の『ふぅ、幸せ』という一言が象徴する幸せな食卓。小川さんの食を描く表現の素晴らしさと、その食に込められた想いを強く感じた、至福の時間でした。

    美味しくいただきました。ごちそうさまでした!

    • KOROPPYさん
      こんにちは。
      コメントありがとうございました。

      本棚に並ぶ本が共通しているなと、私も感じていました。
      好みのお話も共通していて、う...
      こんにちは。
      コメントありがとうございました。

      本棚に並ぶ本が共通しているなと、私も感じていました。
      好みのお話も共通していて、うれしいです。

      こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
      2020/06/05
    • さてさてさん
      moboyokohamaかわぞえさん、コメントありがとうございました。
      いろんな思い出に食卓風景が同時に浮かんでくる、とても説得力のある作品...
      moboyokohamaかわぞえさん、コメントありがとうございました。
      いろんな思い出に食卓風景が同時に浮かんでくる、とても説得力のある作品でした。
      今後ともよろしくお願いします。
      2020/06/05
    • さてさてさん
      KOROPPYさん、コメントありがとうございます。
      読書を始めて半年の私には大、大先輩のKOROPPYさん、いつも道案内をありがとうございま...
      KOROPPYさん、コメントありがとうございます。
      読書を始めて半年の私には大、大先輩のKOROPPYさん、いつも道案内をありがとうございます。
      今後ともよろしくお願いします。
      2020/06/05
  • とくによかったのは、
    『親父のぶたばら飯』

    レンゲでスッと切れる
    ほど柔らかく煮込まれ、

    肉の繊維の一本一本に
    味が染みわたっている
    あつあつのぶたばら!

    うーーーん、
    美味しい小説って幸せ♪

  • 7つの短編集。どの話しも泣ける話しでした。私が涙もろいのか...。
    【泣けた順】
    ⓵バーバのかき氷
    ⓵親父のぶたばら飯
    ⓵こーちゃんのおみそ汁
    ⓸さよなら松茸
    ⓸季節はずれのきりたんぽ
    ⓺いとしのハートコロリット
    ⓻ポルクの晩餐
    とくに前半4つの作品が泣けました。公共の場では、読まない方がいいかも。

  • 小さい頃、人見知りだった私がしょんぼりしているといつも、
    母は油にドーナツ生地をぽとんぽとんと落としては、こんがりと揚げてくれました。
    「ほら、これ、何に見える?」と訊かれ、
    「う~ん、ペンギン?」とか「ひこうき!」とか答えているうちに、
    いつのまにか「しょんぼり」はどこかに飛んでいってしまっているのでした。

    私にとっての「何に見える?ドーナツ」みたいに
    誰にも、思い出としっかり手を繋いだ、忘れられない料理やお菓子がある。
    そんなメニューを7つ並べた、ひとつひとつのタイトルを見るだけで
    おなかが空いてしまいそうな短編集です。

    「食べて、生きること」の大切さを、変わることなく訴え続けている小川糸さん。
    今回も、『バーバのかき氷』・『親父のぶたばら飯』・『こーちゃんのおみそ汁』など
    ほろりとさせながら、温かい余韻を残してくれるお話が素敵です。

    でも、よく「ほっこりさせてくれる作家」と表現される小川さんだけれど
    魅惑の香水には、必ずちょっとだけいやなニオイがブレンドされているように
    作品の中にいつも、ほのかな毒やシニカルな視線が混ぜ込まれているからこそ
    温かさが際立つのかも。

    今回も、『あつあつを召し上がれ』と銘打ちながら、かき氷の話を冒頭に据え、
    贅を尽くした料理や、素朴でも食材を吟味し、丁寧に作り上げた料理を幾つも並べたあと、
    最後の物語では、ヒロインにインスタントのだしを使った料理を
    「おいしい」と言わせてしまう。
    なんとも小川さんらしい隠し味の効いた1冊でした。

    • まろんさん
      vilureefさん☆

      母は誉めてもらうと調子に乗るタイプだったので
      vilureefさんにそんなに誉めていただいて
      今頃天国でダンスでも...
      vilureefさん☆

      母は誉めてもらうと調子に乗るタイプだったので
      vilureefさんにそんなに誉めていただいて
      今頃天国でダンスでも踊っているかもしれません♪
      いつも思い遣りあふれるコメント、ほんとうにありがとうございます!

      『親父のぶたばら飯』に出てくる中華料理屋さん、
      お店はなんだか煤けた感じなのに、出てくるお料理がとてつもなく美味しそうなんです。
      お読みになるときには、お腹をちゃんと満たしてからでないと、辛いかもしれません(笑)
      2013/03/28
    • nico314さん
      まろんさん、こんにちは!

      >ほろりとさせながら、温かい余韻を残してくれるお話が素敵です。

      本当にその通りです!!

      >最後の...
      まろんさん、こんにちは!

      >ほろりとさせながら、温かい余韻を残してくれるお話が素敵です。

      本当にその通りです!!

      >最後の物語では、ヒロインにインスタントのだしを使った料理を「おいしい」と言わせてしまう。

      そうなんです。これ、すごくリアルだなと思いました。
      きりたんぽを丁寧に作っている時は、思い出のためにという感じがして、生きている自分たちより優先させらているような。
      で、最後のインスタントだし。
      絶妙のバランスだな、と。
      「お腹がすいてしまって我慢できないし、とにかくたべちゃお!おなかがすいていれば、なんだっておいしいよ」みたいな、生きるエネルギーを感じて、微笑ましく、それでいてほろ苦さが残り、とても現実的でした。

      2013/07/03
    • まろんさん
      nicoさん☆

      うわあ、うれしいです!
      こんなとりとめもないレビューから、伝えたかったことをしっかり受け止めてくださって。

      そうなんです...
      nicoさん☆

      うわあ、うれしいです!
      こんなとりとめもないレビューから、伝えたかったことをしっかり受け止めてくださって。

      そうなんですよね、きりたんぽは、作る過程のほうに意味が持たされてるというか
      それはそれで大切なことではあるんだけど、作るために作っている、みたいなところがあって。
      それが、最後の最後には、肩に力を入れずに、インスタントだしで作った料理を
      これから生きていかねばならない人たちが、「これはこれで立派においしいじゃない」と、平らげる。
      あのリアルさ、逞しさが、なんともいえない味わいですよね♪

      偶然にも、冠婚葬祭ラッシュでバタバタしてる中、それでもやっぱり小川糸さんの新作
      『リボン』と『つばさのおくりもの』を読み終えたところで
      nicoさんがこのレビューにコメントをくださったことにも
      なんだかご縁を感じてうれしくなってしまいました(*'-')フフ♪
      2013/07/05
  • “食べる”ということは“繋がる”ということなのかも知れない。

    美味しいものを食べると悩みやつらいことを忘れている経験はありませんか?
    この本で食べること=生きることだと改めて感じました。
    食べ物は人を温かくしたり思い出を引き出したり、また新しい出会いの扉にもなります。
    “食べる”という行為は、今を生きる私たちの基盤だと感じました。

  • 食卓を囲む人たちの、思い入れのある料理にまつわる7つの短編集。

    どの話にも、別れの匂いが漂っている。
    過去の、現在進行形の、そう遠くない未来に訪れるであろう哀しみを背後に感じさせながら、
    現在の幸福な暮らしがある。


    特に好きなのは
    別れることを選択した2人が最後に訪れた宿で
    とびきりおいしい夕食と朝食を堪能する「さよなら松茸」
    亡くなった父親が最後に食べたいと願い果たせなかったきりたんぽの鍋を、
    残された家族が用意する「季節はずれのきりたんぽ」


    長い人生の中で多くの人に出会い、一緒に時を過ごし、また別れて暮らすことになっても、
    その記憶が遠いものとなっても、
    ふとした時に、話したことやその時の情景、
    一緒に楽しんだ音楽が思い出されることがあると思う。
    一緒に聴いた、大好きだった曲。
    切ない。

    でも、なぜだか、一緒に食べたものを思い出すとき、
    あの人が好きだといった食べ物を口にするとき、
    気持ちが温かくなる気がする。
    それは、『食べる』という行為のもつ生に直結する、
    前向きなイメージのおかげなのかな?

    どの話も料理を囲みながら、たくさん話をしながら、
    心の中に去来したたくさんの場面を、ひとつずつ丁寧に追っている。
    そうしていくうちに、哀しみに少しだけ慣れ、折り合いをつけ、
    今、おいしく食事を頂いていることにほっとし、
    幸せの入り込む余地を見つけていく。

    この先その人に会うことができない辛さはなかなか克服できるものではないでしょう。
    平気になるということは、ないかもしれない。
    それでも、泣いてばかりはいられない。
    食べて、笑って、生きていく。

    穏やかだけれど深いところから満ちていく感覚を味わうことができるお話でした。

    • だいさん
      「季節はずれのきりたんぽ」

      いつ食べても、美味そうだが、季節物ですか!?
      「季節はずれのきりたんぽ」

      いつ食べても、美味そうだが、季節物ですか!?
      2013/07/06
    • nico314さん
      まろんさん

      こちらこそ、ありがとうございます!
      本を読んでいる最中は、あれもいい、これも書きたいと思いながら、いざレビューを書き始め...
      まろんさん

      こちらこそ、ありがとうございます!
      本を読んでいる最中は、あれもいい、これも書きたいと思いながら、いざレビューを書き始めると、結局いつも同じようなことを書いてしまい、伝えきれない物足りなさを感じてしまいます。
      そんなとき、まろんさんのレビューを拝見して、「そうそう、これが言いたかったんですよ!」と画面のこちら側で、うれしくなっているのです!

      歳を経るに従い、嬉しいこともあるけれど、やはり別れも数多く経験することになりますよね。
      そうすると、悲しい事実だけに浸って生きてはいけなくなってくる。学生時代の失恋は1人で落ち込んで、もうここから一歩も動けないと思っていたのに、今はそうも言っておれない。それなりに周りに対する責任もあったりして。
      元気だから食べるというより、食べて生き続けようみたいな。

      本を読んで、共感するところで、自分の心理状態がわかってしまうようですね。
      2013/07/07
    • nico314さん
      だいさん

      タイトルは、本当に食べたかった時期を逸してしまったということだと思います。

      本格的なきりたんぽは食べたことはないのです...
      だいさん

      タイトルは、本当に食べたかった時期を逸してしまったということだと思います。

      本格的なきりたんぽは食べたことはないのですが、スーパーの品でも十分香ばしくておいしかったのを覚えています。

      確かに、いつ食べてもおいしそうなのですが、昨日はさすがに気が遠くなりそうな暑さで、我が家では鍋物系は、朝晩が涼しくなってからの登場となりそうです。
      2013/07/07
  • 苦手な短編集ではあったが、一編一編趣が異なっていて、お腹が空いてきた(^。^)

  • おいしいお料理をキーにした、短編集。
    とにかくどれも魅力的。
    食材の一番おいしいところを引き出していく。
    しかもそれを、できたての、一番おいしいときに食べる幸せ。

    ほほえましい「親父のぶたばら飯」と、じーんとくる「こーちゃんのおみそ汁」が、よかった。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-9de0.html

    • さてさてさん
      KOROPPYさん、はじめまして
      いつもありがとうございます。

      私が手に取る本、手に取る本、KOROPPYさんの感想に必ずといっていいくら...
      KOROPPYさん、はじめまして
      いつもありがとうございます。

      私が手に取る本、手に取る本、KOROPPYさんの感想に必ずといっていいくらいに出会うことが多くて、あっ、またKOROPPYさんだ、といつも思いながら、かつてお書きになられたものを読ませていただいています。URLの先がすでに読めないと思うので、それがいつも残念に感じています。この本では7編から2編選んだものがご一緒だったのもご縁だなあと。

      今後ともどうぞよろしくお願いします。
      2020/06/05
    • KOROPPYさん
      >さてさてさん
      こんにちは。
      こちらこそいつもありがとうございます。

      URLの先が読めない件、申し訳ないです。
      ブログを引っ越し...
      >さてさてさん
      こんにちは。
      こちらこそいつもありがとうございます。

      URLの先が読めない件、申し訳ないです。
      ブログを引っ越してしまったので、今は存在しないのです><

      読まれている本が共通しているなと感じていました。
      好みのお話が一緒なのもうれしいです。

      こちらこそ、これからもよろしくお願いします^^
      2020/06/05
  • 『食堂かたつむり』の世界観がとても好きで、同じ著書によるこの本も読むのを楽しみにしていました。
    著者が得意とする、食と料理を巡っての物語。
    今回は短編集となっています。

    相変わらずほっこりしたりヒリヒリしたりと、心をじかに揺さぶられるような深みのある思いを味わいます。
    著者の物語の根幹を成す、愛する者の喪失感が、さまざまな主人公を通して語られます。

    新たな関係の構築という生まれくる話は、一話のみ。
    あとは、失いゆくものへの絶ちがたい哀惜の念が、時にはひねくれ、時にはストレートに描かれ、美しい思いも醜い思いも、語られるどれもが共感できる感情ばかりのため、深く動揺しながらも、手放せずに最後まで読み切りました。

    決して荒々しい表現が使われたり、乱暴な書き方をしているわけではなく、どちらかというと静謐な小品ばかりなのに、かなり激しく心を揺り動かされ、心が針で刺されたような痛みを感じ、読んだあとは余韻と疲労でどっぷりと抜け出せなくなっている感覚。

    これまで、等身大の女性の日常を描いた物語ばかりでしたが、この短編集の中の『ポルクの晩餐』は、いつになくなんとも不思議な物語でした。
    愛人がオスの豚って!?摩訶不思議。
    頽廃的ながらもどこかすてきな作品でした。

    食べることは生きること。食べることへのこだわりは、生への充実につながりますが、老いの残酷さもきちんと描きこまれています。
    たとえ家族のことを忘れても、人は、美味しいものを食べた記憶は失わないものなのでしょうか。
    どれも丁寧に食べ物、調理、料理、食べることについて書かれており、食べるという日常の行為そのものにいとおしさを感じます。

    食の記憶と共に甦る失われた人との思い出。
    『失われた時を求めて』の日常版のような、食欲と切ない痛みを堪能できる作品の数々が収録されています。

  • 食べ物の記憶は、けして有名店の物を食べて美味しかったとか高級なものを食べて美味しかったじゃないなと。
    記憶に残っているのは、誰と一緒だったとかどんな心境だったかとか。
    人はやっぱり五感で生きている。
    美味しいまずいじゃなくて、日常にも小さな物語が発生している。
    だんだん大人になると悩みが深くなってくる。深い悩みだけど向かい合うことで、優しくなれるのかな。
    読みながら大切な人を想って涙が沢山出た!

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著者プロフィール

作家。デビュー作『食堂かたつむり』が、大ベストセラーとなる。その他に、『喋々喃々』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ミ・ト・ン』『ライオンのおやつ』『とわの庭』など著書多数。

「2023年 『昨日のパスタ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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