楽園のカンヴァス

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103317517

感想・レビュー・書評

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  • これはもう面白いの一言!間違いなく自分の中で殿堂入りです!
    世界屈指のコレクター、コンラートJバイラーの元に非公開のアンリ・ルソー作品の真贋をするため、ルソーの研究者である織絵とティムブラウンが呼ばれ、
    講評対決をするというアートミステリー。
    ルソー、ピカソなど芸術に疎い自分でも知っている名前が出てきて興奮を覚えます。
    最後に伏線回収もしっかりなされていて、とても満足のいく内容でした。
    ブクログの評点が高いのも納得でした。
    これを機にアートミステリーにハマってしまいそう!

  • 美術に疎いことと
    カタカナを覚えることが苦手なこと

    ダブルパンチでかなり読み進めるのに苦戦し
    なかなか時間がかかった


    でも高評価なこの本を
    私の最初の原田マハとして
    読み切りたい思いで
    どうにか読み進めました。



    結果、


    最後まで読んで良かった



    美術の良し悪しはわからないし
    作品の説明などは
    流し読みしてしまったところもあったけど


    後半はハラハラさせられ、
    何度も驚かされ



    ラストはとても気持ちの良い読後感だった


    今度は日本人のメインの作品を読んでみたい。

  • 表紙の「夢」を見て、胸が高鳴りました。
    リニューアル後ですけど、MoMAで観たの覚えてます。
    2m×3mっていうサイズ感とか幻想的な雰囲気とか。
    平面的だけど引きずりこまれそうな奥行き感とか。

    アンリ・ルソーの生涯と名画が、大胆なミステリーとして書き綴られているこの作品、例のごとく情報をシャットアウトして何やら贋作にまつわる話?くらいしか知らなかったけど、すっごいドラマチックじゃないですか。まさに夢だなぁ。

    物語は、大原美術館の監視員の早川織江のパンドラの箱がMoMAのチーフ・キュレーターのティム・ブラウンによって17年ぶりに開けられるところから始まります。
    17年前の楽園で夢をみたような1週間、読んでるこっちが昂るー。
    伝説のコレクター、コンラート・バイラーの所有するルソーのマスターピースの真贋を調査するためオリエとティムはバーゼルで出会い、ルソーの専門家としてとある物語を読むことになります。
    そこに記されている史実のようで創作のようなルソーと彼の女神ヤドヴィカやピカソらの友人とのエピソード。
    ほんとに「夢をみた」が存在していればいいのに。
    まぁ、ミステリーそのものより、ルソーやその時代の芸術家たちの情熱が素敵でしたね。
    またNYやパリに行きたい!大原美術館にも。

    老け顔でさえないティムのロマンスもなんだかキュートです。
    織江の娘はもしや?と危惧しましたが、さすがにそこまで安っぽい展開にならず、17年後の再会がより素敵なものになりましたね。

    世界的名画もそこそこ目にしていると思うけど、絵画の価値っていうのはその真贋というのはほんと素人には分かんないもんね。
    でも写真で見てた絵が目の前にあると圧倒されることがありますが、まさにそれが情熱なのかな。

  •  美術館、個人的には独りで行くことが多いのですが、いわゆる「美術」に詳しいわけでもありません。それなりに好みはありますが、単純に綺麗だなぁとか、印象的だなぁ、位の感想が関の山です。そんな、よくも悪くも「お気楽な鑑賞」で留めていたのですが、、こちらを読んで、もう少し深く観るようにしようと思いました。

     「絵が、生きている。」、この一言が全てをあらわしていると、そう感じた物語でした。

     大筋としては、アンリ・ルソー作「夢」と同じ構図をもつ一枚の絵画の真贋を、二人のキュレーター(学芸員)が見極めるとの流れ。ただし、蛍光X線分析や質量・史料分析などの科学的な手法ではなく、7日間かけて一冊の物語を読み解いていく、ある種のミステリーとも言える手法をとっています。

     それを担うのは一組の男女、一人はアメリカ人、ルソーをこよなく愛するニューヨーク近代美術館(MoMA)の学芸員・ティム・ブラウン。もう一人は日本人、新進気鋭のソルボンヌ大学院のルソー研究者・早川織絵。そして鑑定の依頼者はスイスの大富豪・バイラー。

     始まりは2000年、倉敷の大原美術館で監視員として働いている織絵が、館長室に呼ばれるところから。そこから一気に時を遡り、1983年にスイスはバーゼルで過ごした、「夢」のような7日間の記憶へとつながっていきます。その「ルソーが描き出した楽園」で二人は、20世紀初頭を舞台とした一つの物語と出会います。

     これら三つの物語がモザイクのように重なりあって、ページを繰る手が止まりませんでした。読後の余韻も素晴らしく、「永遠を生きる」とは、人の生きざまを、情熱を描くとはどういういことか、と楽園の世界にただ、浸っていました。

     例えるのであれば、芳醇なワインのような物語。ミステリーの手法をとりつつも、ロマンスも垣間見えて、主人公の二人にとってはまさに、全てから解き放たれた楽園の7日間でもあったのではないかと、なんとなく。「こんな夢を見た。」なんてフレーズを頭の片隅に思い浮かべながら、「夢をみた」二人の行きつく先は、はたしてどこになりますか、なんて。

     何かを生みだすということ、そして発信するということは、その背景にその人の「人生」がありったけに籠められているのだなぁ、、なんて感じさせてくれる、そんな一冊です。

  • 「夢」などの代表作が有名なアンリ・ルソーの筆による、未だ世に知られていない名作。
    その真贋をめぐり、学会で名を知られた2名のアンリ・ルソー研究者が鑑定人として選ばれました。
    調査期間は1週間、7日後に双方講評を述べ、優れていたほうにはこの名作の取り扱い権利を譲られる。
    調査方法はただ1つ、7章からなる「ある物語」を1日1章読むこと。
    こんな前例のない鑑定勝負に、読者はあっというまに夢中になってしまうのです。

    芸術品の鑑定なんてわたしにはまったく未知の世界だったのですが、ぐいぐい引き込まれていました。
    2人の鑑定人のやりとりや気持ちの動き、芸術品によって富や名声を得たい人々の暗躍、1日ごとに読み進まれる物語・・・。
    緊張感と高揚感にうながされてページをめくり、最後の一文を読み終わったときには満ち足りた気持ちになりました。

    本作を読み終えた人にとって、アンリ・ルソーは特別な画家になっていることでしょう。

  • なんという熱量。圧倒的なエネルギーが僕のカラダに注ぎ込まれ、充分に駆け巡ってから溢れ出ていくような感覚だ。

  • ルソーを知らない私が、これを読んだら物知りになったと勘違いするほど内容が深くて興味深い。

  • 美術館などには滅多に行かないけど
    この本を読んでアンリ・ルソーの絵が見たくなった。

  • ずっと読みたいと思っていたこの小説。
    やっと読めたのですが、まさかこんなにも面白いとは・・・。興奮がなかなか冷めやらない感じです。
    稀代の画家アンリ・ルソーを巡る謎に包まれた物語で、好奇心を刺激されて続きが気になり、珍しく職場で昼休みにも本に手が伸びてしまったくらい。

    今回初読みの作家である原田マハさんは、自身もキュレーターとして活躍されていた方とのことで、美術界について造詣が深く、それでいて専門的なこともわかりやすく書かれていたため絵画に疎い私でもすんなり読み進めることができました。
    表紙にルソーの「夢」を載せてくれていたのも助かりました。ほかの絵画についても頭でどんな絵かぱっと浮かんだらもっと楽しめただろうけど、「夢」さえわかれば読み進めるのに支障はないです。
    読んでる最中カバーを眺めては、これが「夢」か・・・と何度確かめたことか。

    絵画については詳しくないものの、鑑賞するのは好きです。
    自分の好きな絵を手元に置いて眺めていたい、というコレクターの気持ちもわからないではないです。
    でも、画家に、作品に、どこまでも想いを馳せる登場人物たちのあつい情熱に触れて、これほどまでにか、と身震いしました。
    そんな視点で絵画を眺めたことはなかったけれど、きっと読書についても同じことなんですよね。
    本当に好きだと作家自身にまで興味が沸くし、たとえ世間に評価されていなくても大好きなものは大好きだし、絶対にいいものだと確信してる。

    そう考えると、絵画についても同じように楽しめたら、随分と感性を豊かに自分の引き出しを増やせそう。
    いつか、家に絵画を飾れるような人、それを楽しめる人になりたいです。

    それはさておき、物語としてもものすごく楽しめる小説で、読み終わった後に甘く余韻が残ります。
    図書館で借りて読んだのですが、これはもう一度読みたくなったら今度は買うこと間違いなしです。すごくお勧め。

  • 芸術にはあまり詳しくない私にも好きな絵描きがいる。
    アンリ・ルソーだ。
    中学の教科書にも載っていた、「眠れるジプシー女」はNYで2度見たし、東京でも再会した。心地よい湿度と透明度にいつまでもずっと見ていたくなるのだ。そんなルソーだが、つい最近まで彼の作品が評価されていなかったことをこの小説で知って驚いた。

    この小説の核になっている絵画は、ジプシー女ではなくて、「夢」という作品だ。
    この作品と似た作品がもう一つ、闇のルートから出てきて、その真贋をめぐるミステリーなのだ。
    やはりこの作品も、過去と現在、フランスと東京・スイス・NYといった具合に、パラレルに物語が進行し、それぞれの物語が交錯するところでゾクゾクさせられる。

    見たことのない絵なのにその絵の色つやまで頭の中で想像させてしまう、著者の筆力は凄いの一言。

    読書の楽しみの一つには、知らない世界を旅している気分になれることだ。この本を読んで、アートビジネスについてわかった気になれる。

    楽しんで教養が身につくなんて一石二鳥だ。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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