正欲

著者 :
  • 新潮社
4.14
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103330639

感想・レビュー・書評

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  • 「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」

    多様性の時代、みんな違ってみんないい、最近凄くよく謳われてる言葉。
    世間で礼賛されてる「多様性」について、問題を投げかけるそんな作品でした。

    一般的に言われてる多様性って、結局はマイノリティの中のマジョリティ。
    マイノリティの中のマイノリティの人達だっているということ。
    世の中には色んなフェチや嗜好の人がいて、中にはマニアックな人もいて、それも分かってるつもりで他人に害を及ぼさなければいいんじゃないかと思ってたけど、ちゃんと理解してたかと言われるとそうではなかったと思う。

    正直いうと、あんまり我関せずで否定はしないけど無関心。
    私はマジョリティ側で、結局は上から目線だったんだなぁと思った。

    あってはならない感情なんてない。つまりいてはいけない人間なんてこの世にはいないということだ。

    それはそう、、そうなんだけど、
    全ての人が何も隠さず自由に生きれる世の中なんてあるんだろうか?
    そうなってくると秩序も何もなくなってしまう気もする。
    色んな趣味嗜好の中には犯罪に結びつくものもあるだろうし、極端な話サイコパスだってそういう事に喜びを覚える嗜好なんだと思う。

    多様性と言いながら、どこかで線引きはしてる。
    あってはならない感情なんてないんだけど、でもそれらを全てほんとに理解する事って難しいな〜
    犯罪に結びつくものは許せないし、それ以外でもやっぱり否定はしないけど理解出来ないことも多いと思う。

    ただ何でもかんでも分かったような顔をしたり、何も知らないで批判する事のない様にしようと思う。
    そして、簡単に"多様性"って言葉を礼賛しないでおこうとも思った

  • 新潮社の中瀬ゆかりさんがラジオで絶賛していらしたので、手に取った1冊でした。

    残念ながら好みに合わず。朝井さんが世の風潮に感じる違和感を作品で具現化したかったのだろうとは察します。

    しかし、もう少し価値判断なしに村田沙耶香さんか、今村夏子さんぐらい乾き気味に伝えるか、或いは登場人物たちの二面性を露わにすることで物語を動かすのではなく、多面性や時系列による複層性を混在させて、人間の弾力性や奥深さを加味してほしかったところ。

    若干説明過多で、表層的な印象でした。
    さもありなんと。
    使われる言葉も口語が多く、言葉の羅列が気になります。
    もう少し含有や情趣のあるものがいいなあ。
    好みの問題です。

    「共感至上主義」のような「共感」を丸ごと善とする風潮はそもそも危険だと感じています。
    自分以外は全員他者。他者を全部受け入れる、理解するなど困難至極だから。
    自分と違う人がいる、違う見方があるのだな、という域は出ないのではないかな。

    他者の思考や嗜好性に入り込んでまるごと理解するなど、傲慢の極みに思われます。
    「共感」に好感、肯定的ジャッジメントを置くのが当然と感じている人にとっては、いい作品なのかもしれません。
    善行に満ちた「善き人」の像が過剰にメディアでもてはやされているのも一因に思われてなりません。

    絶賛の嵐というマジョリティの中、マイノリティの読後感ですね笑。

  • 後味は良くないが・・・

    これがマイノリティーの人を取り巻く現実と心の中を少しだけ感じられる表現なのかな。

    読み疲れるので本作は僕の好みではないが、反面、「令和の文学小説」という感じで、考え尽くされている。

    夏目漱石や太宰治の延長線上に朝井リョウさんが立っていて、読みやすく、現代という同じ時代を生きているだけあって、伝わってくる量も多い。

    自分だけ・・・

    という孤独感ややりきれなさに苛まれるのは、障がい者やLGBTQだけではない。

    それよりも、社会から理解されない、認識されない状況が、どれだけ辛く孤独な戦いを強いられるのか、この本から学んだ。

    僕は子供の頃や就職して数年の間いじめられた経験があり、56歳の今は、周囲の人たちに恵まれ、安定した精神状態で、ここ10年以上も日々を過ごすことができている。

    僕がこの本を予約した時は200人待ち。僕のあとにも300人近くの人たちが予約待ちをしている。

    それだけでとても嬉しい。

  • 少数派の人間の生きづらさ。そこにすら当たらない、生まれながらに自分の欲に正直に生きることを許されない人間もいる。法律は多数派の人間が作ったものだから。そもそも、そう分けている時点で「多様性」なんて言葉は無力だったんだ。自分の想像力の及ばなさを痛感。価値観を揺さぶられた。

    • 松子さん
      ふひひ、安心だぁー!
      ひろ、ありがとう(^^)
      ふひひ、安心だぁー!
      ひろ、ありがとう(^^)
      2022/04/29
    • 松子さん
      ひろ、読み終わったよー(^^)
      色々考えさせられる作品だった。
      まだ感想書けてないけど、読んで良かった!
      ふふ、落ち込んでないよ、大丈夫だっ...
      ひろ、読み終わったよー(^^)
      色々考えさせられる作品だった。
      まだ感想書けてないけど、読んで良かった!
      ふふ、落ち込んでないよ、大丈夫だったよー
      (^^)
      2022/05/08
    • ひろさん
      まつ、おつかれさま~♪
      ほんと、色々考えさせられる作品だよね。
      とりあえず、落ち込んでないみたいでよかった( *´꒳`*)
      まつ、おつかれさま~♪
      ほんと、色々考えさせられる作品だよね。
      とりあえず、落ち込んでないみたいでよかった( *´꒳`*)
      2022/05/08
  • 本書は、特殊性癖を持つ人々を扱った問題作。

    多様性が叫ばれて久しいが、そこは保守的な人間社会のこと、多様性と言っても、我々が普通にイメージできる範囲の多様性が何とか許容されているに過ぎない。

    嘔吐フェチ、丸呑みフェチ、状態異常/形状変化フェチ、風船フェチ、マミフィケーションフェチ、窒息フェチ、腹部殴打フェチ、流血フェチ真空パックフェチ…、そして本作が取り上げている、水フェチ(噴出する水を見て興奮する特殊性癖、もちろん、異性には性的欲求を全く感じない)。これら特殊性癖の持ち主が、社会から認知され受け入れられることはまずあり得ない。彼らは、主人公の一人が「地球に留学してるみたいな感覚なんだよね、私」と語っていように、周りの人々から一定の距離をおいてただただひっそりと暮らしていくしかない。そして同じ特殊性癖の人と繋がることができたら超ラッキーなのだ。

    彼らにとって困るのは、親切でお節介な輩。自分をさらけ出して近寄ってきて、何でも相談に乗るから私に心を開きなさい、と心の秘密を打ち明けるよう強要する。従わないと疎まれ、憎まれ、排除される。善意に基づく行動なだけに実に厄介だ。

    主人公らは、ひっそりとすら生きさせてくれない社会に疲れ果て、一時死を考えるものの思いとどまり、特殊性癖者同士繋がって生き続ることを選択した。が、活動が誤解を受け、児童ポルノ所持で逮捕されてしまう。物語は、逮捕された主人公らが覚悟をもって生き抜く姿勢を示したところで終了する。当然答えはなく、悲しい現実を突きつける終わり方だが、微かな希望がない訳ではない。

    不理解に絶望していく様子を「顔面の肉が重力に負けていく」と表現しているのが、悲しくも印象的だった。

    特殊性癖ほど極端な秘密はなくとも、誰もが多少なりとも人に言えないこと、言いたくないことを抱えてるんじゃないだろうか。少なくとも自分には少しあるので、本書の主人公たちの思いに共感できる部分があった(まあ常識の範囲内のことだから、神戸八重子が抱える秘密(男性恐怖症)の感覚に近いのかも)。

    「ギフテッド」でも感じたが、異質な存在を排除しようとする感情や行動は、人間の本能に由来しているのかも知れないな。

    それにしても、特殊性癖者がYouTubeのコメント欄にリクエストを書き込んで、素人YouTuberに実演してもらう、なんていうアクロバティックな性的欲求解消法、実際あるのかな。「人間の承認欲求と特殊性癖者の性的欲求、その交点がまさか駆け出しの配信者のコメント欄にある」なんてことが?


    気になった箇所を幾つか摘記しておく。

    「"恋愛感情によって結ばれた男女二人組"を最小単位としてこの世界が構築されていることへの巨大な不安」

    「どこにいても、その場所にいなきゃいけない期間を無事に乗り切ることだけ考えてる。誰にも怪しまれないままここを通過しないとって、いつでもどこでも思ってる」

    「頼んでもいないのにとっておきの秘密を明かしてきて、お望み通り聞き役に徹していたらあるとき突然そのお返しがないとキレられる。自分だけは無関係みたいな顔。傍観者気取り。」

    「幸せの形は人それぞれ。多様性の時代。自分に正直に生きよう。そう言えるのは、本当の自分を明かしたところで、排除されない人たちだけだ。」

    「自分の抱えている欲望が、日々や社会の流れの中に存在している。その事実が示す巨大な生への肯定に、生まれながらに該当している人たちは気づかない。」

  • 普通に異性と恋愛をして、普通に恋人とキスやセックスをする。そして愛を育んだ恋人と普通に結婚をして、普通に子供を授かり家庭を作る。
    これが世間一般的な普通であり、それ以外は普通ではないという烙印を押される。
    とはいえ、今はLGBTQという言葉にも代表されるように、そういったことが普通じゃないんだよ、”多様性”を認めていきましょうね的な世の中になっている。
    しかし…世の中にはもっと様々な人がいる。この作品はそんな特殊性癖と呼ばれる人たちを題材にしたお話。特殊性癖を持った人たちの生きづらさ、葛藤がこれでもかと描かれている。幼少期から誰にも話すことができず、またそのような性癖がバレないように周りの人たちとも最低限の付き合いしかすることができない生活。
    こういった特殊性癖の人たちからすれば「多様性」なんて言葉、耳障りの良いチンケなものとしか感じないだろう。
    「正欲」とは良く言ったものだなと思う。正しい正しくないって何なのだろう。変わった性癖に生まれたばかりに、”正しくない”人間として生活しなければならない。その人には何の罪もないのに。。
    この本を読むと、簡単に「多様性」という言葉を口にできなくなる。どうしても上から目線的な感覚を受けてしまう。”普通”の人が”異常”の人のことも認めていきますよ的な。”異常”の人から見れば自分は”普通”なのにも関わらず。。
    この時代に生きる人であれば誰にでも読んでほしい本である。

  • 私は、本を読むことが好きです。
    自分とは違う人の人生を擬似体験できたり、新しい世界を見せてもらえる。それが読書の楽しさだし、視野が広がることが学びにも繋がるのではないかと思います。

    本作を読んで、私は、自分の理解の範疇を超えた趣味嗜好を持つ人たちの存在を知ることになりました。
    けれど、こういった未知なる世界を知れて嬉しい、という気持ちよりかは、あぁ…知らなくてもよかったことに気づいてしまったのかもなぁ…という若干の後悔が残ってしまいました。
    それくらい、私は本作に取り上げられているような人たちを無意識に拒絶していて、理解しようなんて思いを微塵も持っていないのだと思います。
    この排除的な考えこそが、生きづらさを感じている人たちをより苦しめているのかもしれませんが、、、でも、やっぱり、どうしようもない部分もあるんだよなぁ。

    なんだか、朝井リョウさんに難しすぎる問いをぶつけられた気分です(笑)

  • 本から学ぶ社会にありふれている自分には見えなかった共存している事実とそれぞれの作家さんによる表現方法がその本の個性や感性を顕していて、今までの日常生活で立ち止まって考えたりすることのないことを再確認させられるような、自分の物事の見方を豊かにしてくれて、これからも自分はこういう刺激を、手にする小説から得られるというのがどれだけ貴重で意味のあるものかを、この朝田リョウさんの小説で気付かされた気がします。なんだか次は少し古めの小説読みたいな〜って感じです。

  • 多様性を認める世間が確立されてきて、自分自身が本当に認めているのか否か曖昧な感覚を抱いていたが、その多様性の枠を超える内容であった。読み終わり理解はしたが、認めているとは言い難い自分がいます。

  • 多様性
    繋がり
    学生の頃住んでた街
    生きづらさ

    衝撃的で引きずりこまれました。
    図書館から借りた本

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

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