絶対服従者(ワーカー)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103331117

作品紹介・あらすじ

服従以外に俺が生きのびる道はない。突然変異で高度な知性を備えたハチやアリがヒトの代わりに働き、失業者が溢れる街で、おぞましい秘密工場の存在を知ってしまった俺。長期政権で街を牛耳る市長の悪事を暴くべく、決死の闘いから生還した先に待っていたのは、働きアリの苦渋を味わう絶対服従の日々であった-。第24回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 突然変異した蟲が労働力として人間社会に進出している『満生市』で、蟻の巣の歴史録取をしている『槙田』が一匹のクロオオアリに連れて行かれたのは、強制的に卵を産ませ労働力として出荷している巣だった。『アリ工場』の告発をしようとした槙田は、裏で糸を引く市長の一味に襲われる。彼の危機を救ったのは、人とはあまり接触を持たないはずの『キイロスズメバチ』のワーカーだった。

    西洋風にデフォルメされた花魁のような美女の表紙がインパクト大。しかも読んでみれば、それは蟲だという。もっとも普段見ているものではなく、言わば擬人化のような感じで大きさは10センチほど。彼女たち(アリやハチなので)が人間社会の労働力になっているという大胆な設定が面白い。
    個人として何かを残すことに人生の意義を見出すような人類と、繁殖する為のみに生まれる種すらいる昆虫とは分かり合えるはずもなく、ましてや自分よりも巣の繁栄のみに尽す蟻や蜂などは、社会の仕組みは凄いとは思えど、まったく別の生き物なのだと感じてしまう。
    この話でスポットが当たるのは、個体として区別する必要性の無いような女王に絶対的に服従するワーカーだ。全ての生を時には命すらも捧げる、その無常さ(勿論人目線で)、そしてそのワーカーを犠牲にすることが出来ない主人公。危機を共有し、心を通わせていく二人(?)。表情豊かになっていくキイロスズメバチの『アカリ』が可愛い。
    そして本当にスズメバチは怖い。

  • 変異したアリ、ハチといった膜翅目の蟲たちと、ヒトが住む都市を舞台をしたハードボイルド。僕たちは普段この世界に生活し、人への共感を制限することにもう、慣れている。そうでなければ蹴落とされるか、利用されるか、もしくは辛いニュースで気が狂う。でも、この本には蟲たちが登場する。人の世界で鍛え上げた共感制限は無効化されて、残虐表現には痛々しさ、危ない展開にはヒリヒリする心の皮膚感覚、働きバチのさだめには泣きたくなるような切なさ、淡い恋心・・・。全てが生身の心に降りかかる。関俊介さん、すごいや。

  • 荒唐無稽だけど虫達にも心があり信念があるって思えるのは良い。
    共存は難しいけどスズメバチの方が人よりまっすぐ生きてる。
    アリやハエやハチの生態に改めて気付かされたました。

  • このとんがりっぷり!

  • 突然変異し社会性を持った蟲との共生世界のファンタジーハードボイルド。

    直前に「マイクロワールド」を読んでいたため、捕食者としての意思の通じない虫の無慈悲な世界の記憶が残っていたため、
    意思が通じ、擬人化した蟲たちとの思考の違いに違和感はありませんでした。
    文体自体はちょっと古いハードボイルド調で、結構自分好みでした。
    社会性を持った蟲がヒトと共存、共生をしているファンタジーワールドも理解できる範囲内で、面白かったです。
    悪役がステレオタイプ的だったこと、恋愛的な部分が相手が相手だけにプラトニックすぎる点が物足りないものの、
    全体的にはストーリー、キャラ、文章力と完成度は高いので、次作も期待したいと思います。

  • 変異を起こし、蟲が労働力としてヒトと同じ社会に参画しだした近未来の満生市で、最底辺の労働環境からアリの歴史を綴るライター稼業をすることになった青年槙田が市政の裏側を知ったことからトラブルに巻き込まれていくSFとハードボイルドを足して2で割って少し薄めたような物語だ。
    いい意味でアメリカのB級映画っぽい雰囲気がある。
    社会性昆虫をモチーフに現代社会を皮肉っているような部分も多少あるけれど、単純なエンターテイメントとして楽しんだ。

  • 最初のうちは面白く感じてたんだけど、一見軽妙に見えるけど読みづらい文章になかなか進まず、会話もくどくてほぼ斜め読みで終えた。スケールが大きいんだか小さいんだかわからない。蜂のくせに生意気すぎ。

  • 高度な知能を持った蟲(むし)たちに仕事場を奪われた世界って.......読み始めは気持ちが悪かったけどドキドキハラハラ引き込まれて一気に読み終えてしまった。ちょっと考えさせられたし。
    キイロスズメバチが「私の名前はアカリ」と言った瞬間にただのハチの個体ではなく一人の?かけがえのない存在なんだと私も実感した。名前ってすごい力を持ってるんだなと思う。

  • エログロ描写で盛らなくても、面白い発想。なるほどなー。

    昆虫つながりで、つい『風の中のマリア 』(百田尚樹著・講談社)と比べちゃう。久々に読み返したくなった。

  • 中盤までは抜群に面白かった。物語のスピード感に加え、その生態を上手にとらえた人と蟲との会話は、なるほどハエなら、ハチなら、アリなら、そういう思考回路だろうなと感心することしばしば。

    主人公とキイロスズメバチとのやりとりにいたっては、淡い恋心すらも生まれているかのように見え、一人と一匹の先行きを心配したり、応援したりしながら読んでいたら、あっという間に物語終盤。

    そうして私は、ここでげっそり。

    圧倒的な暴力描写はあまりにもグロテスクすぎて、読んでいる途中も、読み終えてからも気分が悪くて仕方がなかった。これが作者の作風なのだと言われればそれまでなのだけれども、ここまでの描写が必要だったのか、と。それまでのストーリー展開が面白かっただけに、残念でならない。

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