- Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103509554
感想・レビュー・書評
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木内昇さんの作品には
無条件に「良し」としてきました
といっても
そんなに熱狂的な読者ではなく
時折り
面白い小説が読みたいな
と思った時に
この人なら間違いないか
と思う作家のお一人が
木内昇さんです
「笑い三年、泣き三月」に始まり
「櫛引道守」
「占」
「よこまち余話」
と とびとびに
手にしてきて
この度
この「球道恋恋」ときたのですが
ストーリーテラーとしての
面白さは相変わらずですが
あれっ という違和感が
残ってしまう
なんだろう、
と自問自答してみる
これまでの
名もなき市井の庶民の哀しさ、愛おしさ
が描かれたものとは
また違う作品であること
確かに 主人公の宮本銀平は
当時の最高学府に連なる一高出身であり
その野球創成期の野球部の一員であるものの
レギュラー選手にはなれなかった
今は一介の弱小雑出版社の編集者、
まぁ いわば市井の人と言えなくもない
けれども
なんでしょうね
いつもの ひっそりとした中にも
強烈に伝わってくる哀歓が産まれないのは…
たぶん
物語としては 秀逸なものであることは
間違いないのでしょうが…
明治の時代が「維新」と称せられて
無条件に「良し」とされてしまうことに
それだけじゃないだろう
と常日頃思ってしまう
私の方に原因が
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野球好きにはたまらないですね。
面白いけど長過ぎる気がする。
もっと前に終わった方が自分は良いと思う。
でも野球が否定されていた時代があると言うのは意外ですね。
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読み終わった後で調べてみると、かなり史実に沿った作品のようです。主要登場人物、例えば押川春浪・清兄弟も老鉄山・中野武二も実在し、天狗倶楽部も東京朝日新聞の野球害毒論も読売新聞の「野球問題演説会」も実際にあった事件でした。
そこに(たぶん作者が作った)主人公・宮本銀平を入れ黎明期の日本の野球を描いています。また銀平の横に配置された、どうしようもなく軽い妹婿の柿田と幼馴染の早桶屋で哲学的な良吉が、なかなか面白い味を出しています。
しっかり描かれ、しかも木内さんらしい見事な表現が随所にあります。
ただ、なんだか焦点が定まってないような気がします。
黎明期の野球を描きたかったのか、それともそれは舞台で、その中で成長していく銀平を描きたかったのか。二兎を追いすぎて必要以上に冗長になっているような気もします。