吃音: 伝えられないもどかしさ

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103522614

感想・レビュー・書評

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  • テーマは「吃音」だが、関係のない人にこそ関係のある本。あとあまり、普段はノンフィクション読まないという人にも。

    すべてが明らかになるわけではなく、すべてに結論が出るわけでない、という、ありのままの姿勢がとてもよかった。小説のように全部が丸く収まるわけではないが、それこそ人生と同じで、読み終えて考えさせられるところが大きい。

    他者と関わる必要があるときに問題化する「吃音」は、それを受け入れられるかどうか、そこに社会の柔軟さが問われている、現れるべくして現れた問題のようにも思える。

    身近ではないので傍観してしまうところがあるのだと思うが、単純に、「他者としゃべりたくない」という現代社会の悲鳴のような気もした。「うつ」だって、「もう頑張りたくない」という、心の叫びなのかもしれない。この薬を飲んでください、で治るようになったら、もちろん救われる人もいるから解明は待たれるのだけど、病(「おかしい」→「この薬を飲めば治る」)のように単純な問題でもないような気がした。

    思いきって言ってしまえば、都市という空間で、私たち自身が悪化させた病状のようにも思われる。(男の人に多いというのも、プレッシャーを感じやすい社会だからじゃないのか、と思ったり。他の国とか、他の時代と比較してみないと何ともいえないが)

    症状としては「吃音」であるが、それが問題化する本当の原因は、私たちの脳の中にはないのではないか。根本的に社会の問題を治さなかったら、(それはつまり、昔の感染症などが衛生状態を良くしなければ別の病気が流行ったりするなど、根本的には解決しないのと同じで)それは治った、とはいえないのではないか。

    逆説的な見方をすれば、社会をより良くするために現れた社会の課題のようにも思われる。こういう問題をひとつずつ解決しながら、私たちは前に進んでいくのかもしれない。

  • 吃音の実態、治療法がないこと、それがまた軽視される悪循環にあることを伝えてくれた

  • 吃音をもつ人々に何年にもわたって取材し、治療の成果と環境の変化などを追っているところが興味深い。重度の吃音をもつ人たちの就職困難な現実が詳細に描かれている。
    著者本人が吃音をもつ当事者であることもこのルポルタージュにリアリティを与えている。
    しかし、吃音があるゆえに進学先も限られていまいとりあえず入れる大学に入った的に語っているのが鼻じらむ。それで東大工学部かよ…。しかも院卒かよ…。
    コミュニケーションに問題があるため対人関係に疲れ追いつめられて長期の旅に出た、というのも結婚して新妻と一緒にかよ…。めっちゃリア充じゃん…。
    わざわざ自分を卑下してみせる部分がなければもっと偏見なく読めたのにと残念。

  • もう少し踏み込みがあったら、良かった。

  • 自身も吃音で悩んだ著者による、吃音についてのノンフィクション。身の回りで吃る人はいたけれど、それを大きな問題と考えたことはなかった。
    症状にもよるようだが、その人の人生を大きく左右する問題だということが、この本を読み理解出来た。

  • 吃音の頃の記憶が戻り、とても良かった。
    アメリカンドッグを言えず、10年間たべれなかったという話はとても自分をざわつかせた。
    なんとかしたい。そう思えた。

著者プロフィール

1976年東京生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院修了後、旅をしながら文章を書いていこうと決意し、2003年に妻とともに日本をたつ。オーストラリアでのイルカ・ボランティアに始まり、東南アジア縦断(2004)、中国雲南省で中国語の勉強(2005)、上海で腰をすえたライター活動(2006-2007)、その後ユーラシア大陸を横断して、ヨーロッパ、アフリカへ。2008年秋に帰国し、現在京都在住。著書に『旅に出よう』(岩波ジュニア新書)がある。

「2010年 『遊牧夫婦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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