- Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103529729
作品紹介・あらすじ
クソみたいな言語が、僕を男たちの肉体から遠ざける――。待望の新作長篇に川端賞受賞の初短篇をカップリング。東京への愛惜を抱きつつ大阪に暮らし、京都で教鞭を執る哲学者。「言語は存在のクソだ!」と嘯きながら、言葉と男たちの肉体との間を往復する。年下の恋人への思慕、両親の折々の言葉、行きつけのバー……「僕」を取り巻く時間と人々を鮮やかに描く表題作。ハッテン場と新宿2丁目の移ろいを辿る川端賞受賞作「マジックミラー」を併録。
感想・レビュー・書評
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私には合わなかった。
LGBTに偏見はないつもりだけど、トレンドとして自分の中で受け入れるとしているのかもしれないと思った。そんな自分が偽の仮面をかぶっているのかもしれなないと思えてきた。
抽象化に阻まれているのか、描写から連想される情景に阻まれているのか、表面的な部分しか受け取れなかった自分が残念でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「オーバーヒート」
「デッドライン」で院生だった僕は、博士論文も通り、15年の東京での学生時代が終わり、5年前に大阪に引越し、京都の大学で准教授となっている。舞台は2001年から2018年となっている。准教授としての生活と、自身の個人的生活が語られる。
デッドラインではふらふらと男性の間をさまよっていたが、こちらでは晴人という決まった男がいる。僕は40才になっていて、しかし肉体への欲望は変わらず率直に語られるが、対象は晴人に向かっている。
僕が帰郷するのに乗った新幹線で、「タナトスのらーめん」に出て来た、おっさんが「だーめだ」と言う、という文がまた出て来た。
デッドラインでは故郷の地名は出てこなかったが、こちらでは具体的な地名がバンバン出てきて、実家の場所とか、同級生の家とか、日光へ至る道とか、とてもリアルに想像できてしまった。いいのか悪いのか。
行間の空気感は「デッドライン」のほうが勝っているかな。でも性への渇望の描写はやはり率直でいい。映画「ブロークバックマウンテン」なんかをちょっと思い出してしまった。しかし、晴人との別れもほのかに感じてしまう。
僕はどこまで著者自身なのか? くり返し自身の生活を描いた西村賢太の世界と比べてしまう。
「マジックミラー」
店で会ったユウくんへの邂逅。覚えておく。僕は僕のこの体を。
初出:オーバーヒート 「新潮」2021.6月号
:マジックミラー 文学ムック「ことばと」vol.1 2020.4.18 書肆侃房
2021.7.10発行 図書館 -
正直読んでて、コレは…!と芥川賞臭さを感じたけど受賞ならず。
内容は、千葉雅也さんの私小説なのかな?って思っちゃうような、ちょっと名の知れた哲学者の日常の生活が描かれていて、これといって大きな出来事も起こらない。
行きつけのバーでTwitterしつつ、言葉に雁字搦めになっているというか、囚われているようなふしがあったり、
かなり歳の離れた二十代男性?の恋人がいるのだけど、ちょっとなんかうまくいかなかったり、
(川端康成文学賞を受賞した『マジックミラー』でもそうだったけど、男性×男性の性描写がまぁスゴイ)
内容を詳しく説明したところで「え?それだけ?」ってなりそうなんだけど「そう、それだけ。面白いよ♪」って返しちゃいますよねこりゃ。といった作品がこちらです。
心の内面の内に内に掘り下げてくのが純文学だし、そこに面白みがあるので。
こういうのが取ったりするんだけどな〜、芥川賞って。
次こそ取る⁉︎ -
キュンキュンした
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デッドラインに続いて読んだ
言語は存在のクソと言いながらも、ツイートしかり、対面での恋人や家族やバーの人達との会話しかり、言語なしではいられないよな、と思う。誰でも多かれ少なかれ、言語で表現されるものに左右される
一方で、晴人との行為や付き合いの時には会話が少ない印象があって、そこも対比になっているのかな、と。
マジックミラーは、その間にあるはずのデコボコは全然知らないし、の部分がすごくいいな、と思った。 -
ちょっとエロいしエモいのが特徴的。前作のデッドラインと繋がっているのがわかる
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オーバーヒート
現実のゲイ界隈について全く知らないが、今まで読んだゲイ文学の中では一番リアルだと思った。語り手の頭の中でとめどなく生じる文字で作られた壁は、閉塞感や心許なさを生み出していた。その文字を世界に吐き出していくことで理解し得ない他者と交わるようになるラストは開放的。
マジックミラー
やっぱり暗闇ってエロを増幅させるよね。
ねっとりした暗闇描写が最高。ラストのフレーズが印象的。 -
主人公が世間に対して毒づいているのが
なかなかおもしろくて、ついクスッと笑いながら読んだ。
心の内やツイッターは露悪的だけど、
年下の彼氏に対しては弱気だったり、
リアルで会うと声に出せないあたりがなかなか良い。
読みやすい文章であることと、
全く縁のない世界であることから、そうなのか!と
ルポルタージュ的に読んでしまった部分があり、
文学的な良さを味わうところまでは、たどり着けなかったかも。
物語の本筋ではないけど、
ネットに関する意見に頷けるところが多く、
最新作の「エレクトリック」はネット黎明期の物語だという書評を見たので、
そちらを読んでみたくなった。