神曲

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103542810

感想・レビュー・書評

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  • 川村元気さんの本はたくさん読んでいますが、
    結構攻めた感じの本で正直苦手でした。

    息子を失ってしまった母は引きこもりに。
    ある日を境に回復し、歌を歌うようになったものの
    その原因は新興宗教だったというストーリー。

    犯罪被害者という弱者につけこむという角度も、
    それでも救われれば”神”にもなる存在。

    描かれていることは宗教でやや日本の無宗教の
    考えが大いに反映されているようにも見えたし、
    社会的弱者の立場というのが真に迫るものが
    あり胸がとてもつらくなる一方で、現在社会に
    そういうことが存在するんだということを
    改めて認識して、社会はどうあるべきなのか。
    社会に生きる一人の人として自分はどう考え
    どう生きるのか少し考えさせられた。

  • 自分の信仰心の無さからか、著者への期待が大きかったせいか、最後までストーリーの中に入っていけなかった。

  • 新聞広告を見て期待し過ぎた感が。
    信仰宗教にハマってしまう母親に同情しつつも、自分はこうはならないと言い切れるのか?
    高い料金を払って占ってもらったり、お守りや御朱印をもらったり、ゲンを担いだりと日常的に何かに頼りながらまた自信をつけて前に進んでいることとあまり違いはないかもしれないということに気づく。救いようのない物語のようだが、最後は信用できる、信じられる人がいるということが1番自分を守り、助けてくれる存在だということに改めて気づかせてくれる。

  • 前情報なしに読む読書は楽しいですね。目次の章立てから、一つの題材に関する家族の各視点でのハナシのような感じかなと思い読み始めました。各視点ではありましたが、時系列は進みます。そこに明確な記載がない部分もあり、おっとどうなったんだ、とワクワクし各章に入りました。信じるモノに対する考え。神とは。信ずればこそと言う挿話も入りつつ、家族がどうなっていくのか、そこに共通の信じるものが必要なのか。装丁は読み終えてみると、その神々しさだけでない空を見て取れる作品でした。

  •  「君がおかあさんを信じる気持ちと、おかあさんが信じている神様を信じられない気持ちは両立すると思う。
     人は時に、複雑な信仰を持ちうるんじゃないかな」

     本書では、当たり前だが神とは何であるか明言していないし、できない。
     それぞれの登場人物が信じる者は何か、縋りたいものは何かがバラバラだ。
     そのため、小説としてはテーマが雲散霧消しているように見えるが、結局のところは”複雑”なのだ。
     
     正面切って宗教を主題にするのはリスクがある。
     そのリスクに挑む覚悟を持って、作者が取り組んだことが感じられる一冊だった。


     いつもの通学路は惨劇に変わった。
     通り魔が通学中の小学生を襲い、そして犯人は凶行と同時に車に轢かれて死んだ。

     突然に息子を奪われた家族。
     毎日臥せっていた母親は、ある日、神の声を聞く。

     新興宗教に嵌まる妻を案じる夫、
     夫の無理解に幻滅する妻、
     壊れる家族の関係に悩む娘。

     神の正体とは。
     とある被害者家族の話。

  • 期待しすぎたかもしれない。。

    喪失というキーワードについては、
    村上春樹氏に似ていた。

    でも、ノルウェイの森のように引きずり込まれる怖さはなかった。
    途中で飽きてしまった。

    最後の展開も、衝撃はなかったかな。

    イスラームを出してきたのはいいなと思った。

  • 目の前で息子を惨殺された父親と、その事実を受け入れられない母親。彼女がすがったのは“永遠様”を崇める新興宗教だった。父親は被害者の会に通い、父親の連れ子の長女は登校拒否に陥る。一瞬にして日常が崩壊した家族に再生の日は訪れるのだろうか……。
    なんとも悲惨で重苦しい作品だった。ある意味で宗教は苦しむ人に救いを与えるのかもしれない。ぼくは救われたいとは思わないが。“鰯の頭も信心から”じゃないけど、無宗教のぼくはどうしても醒めた目で見てしまう。

  • 息子を通り魔に殺された一家の破滅と再生の物語。
    愛する子を亡くし悲嘆にくれ自分の悲しみの中に閉じ籠る母、悲しみつつも何とか生活していこうとする父、ほとんど口も利かなくなった姉。三様の悲しみ、辛さの中、母親が少しずつ明るさを取り戻しできた。それはある宗教団体の合唱グループに入った事がきっかけだった。その団体に娘も連れて頻繁に通うようになり、寄付までして、行動も共にするようになる母とだんだんと自分もその団体に関わるようになってくる父。この家族が行き着く先には何があるのか、信じるとは何か、問いかける大作。
    ずっしりくるけど一気読みしてしまった。洗脳される母親を愚かとは言い切れないし、手をこまねくだけで何も出来ない父親を駄目な人とも言えない。
    ただお姉ちゃんだけが可哀想でたまらない。
    神様って何だろうと考えさせられるな。

  • 久しぶりの長編が出た直後、ということで、メディアで激しく番宣(本宣か)してるけど、期待が膨らんでしまう分、評価が難しいところかも。

    コロナ禍のような人の生死にかかわる歴史的局面を迎えて、改めて宗教(的なもの)とどう向き合うか、みたいなテーマだと思うのだけど、どうしても、昭和、平成に起きた新興宗教関係の事件やゴタゴタを連想してしまいます。

    元気さんはエルサレムに取材にいったのかなあ~。中東って、一度行ってみたいけどいつになるやら。。。

  • 『神の正体を、知っていますか。

    天国も地獄も、すべてここにある。

    次々と明かされる家族の秘密。
    ラスト二十ページの戦慄。
    そして驚くべき終曲(フィナーレ)。』

    この帯の言葉に惹かれて、手に取りました。

    小学生の息子・奏太が通り魔に殺される凄惨な事件から物語は始まります。

    第一篇・檀野三知男(小鳥屋を営む檀野家の父親)
    妻にも娘にも寄り添うことができない不甲斐ない男性。あくまでも、わたしの感想ですが。

    第二篇・檀野響子(奏太の母親)
    苦しい本音に向き合えず、家族もと共有できず・・思わぬ方向へ。恐ろしくて哀しい。

    第三篇・檀野花音(娘・奏太の姉)
    思春期の女の子の揺れ動く心、葛藤、成長。物語も大きく展開します。一番読み応えのある第三篇です。

    帯の通り、『ラスト二十ページの戦慄』は、納得です。が、反対に、このラストがなければ読んだことを後悔しそうなほど、この物語はラストに全てが集約されている。
    それは、花音と青年・入江隼太郎の心の触れ合う会話です。深くて素晴らしい。
    花音と父親、花音と母親との、今までとは違う会話にも心打たれます。


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著者プロフィール

かわむら・げんき
1979年、横浜生まれ。
上智大学新聞学科卒業後、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『君の名は。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、’11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。’12年に初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞にノミネートされ、佐藤健主演で映画化、小野大輔主演でオーディオブック化された。2作目の小説にあたる本作品『億男』も本屋対象にノミネートされ、佐藤健、高橋一生出演で映画化、’18年10月公開予定。他の作品にアートディレクター・佐野研二郎との共著の絵本『ティニー ふうせんいぬものがたり』、イラストレーター・益子悠紀と共著の絵本『ムーム』、イラストレーター・サカモトリョウと共著の絵本『パティシエのモンスター』、対談集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』。最新小説は『四月になれば彼女は』。


「2018年 『億男 オーディオブック付き スペシャル・エディション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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