山妣

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104147014

作品紹介・あらすじ

明治末期、東京からやって来た旅芸人が静かな越後の山村に嵐を巻き起こした。その男の肉体に隠された秘密、そして地主の若夫婦との間に芽生えた密やかな三角関係が、伝説の中から山妣の姿を浮かび上がらせる。明らかになっていく山妣の凄絶な過去。そして熊狩りの日、山神の叫ぶ声が響き、白雪を朱に染める惨劇の幕が開いた-。雪国の自然と習俗を背景に、情念と伝説が織りなす愛憎劇を濃密に描きホラー・伝奇小説の枠を破った比類なき千二百枚。

感想・レビュー・書評

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  • 15年ぶりの再読。
    物語そのものが持つパワーに脱帽!

  • 前半は、方言が頭に入ってこなくて苦戦しましたが、後半になると、ここでこいつが出てきたか!とか、登場人物の正体というのか、色々なものが明らかになり、方言がとか言ってられなくなります。
    山に逃げた女性と、人里に帰ったり、行ってしまった人たちのお話です。

  • 坂東眞砂子でまず紹介したい3冊です。いずれも壮大なスケールと精緻な考証で読む者を坂東ワールドへ誘います。短編よりも長編にこの作家の真骨頂を見ます。ぜひ時間のあるときにどうそ!

  • 何度も丁寧に塗り重ねたみたいに密度の高い分厚い物語。読後感が格別。主要人物がみな狼吠山に集まるクライマックスの100ページは怒涛の緊張感。いい作家さんだなぁ。

  • 桃色浄土と並ぶくらい好きな一冊。
    この人のおどろおどろしい世界観に惹きつけられる。
    人間の醜い部分を描きながらも
    魅力ある人物がたくさん出てきて
    読み出したらとまらない。
    壮大なストーリー。
    里を捨てた山ハハだけど、やっぱり最後まで母親だった姿が
    せつなかった。

  • 豪雪の小さな村落に良性具有の役者が来てから、地主の鍵蔵、妻てる、盲の琴、それぞれがおかしくなっていく。迷信が伝えられる山に住むという山妣は言い伝えなのか本当に存在するのか。

    たくさんの死の中で山に住むものだけが心落ち着かせて生きられるのか。おもしろかった。最後もなんとなく明るく終わったし。信じていた男に2度も捨てられても己の生にしがみつき生きていく山妣すえ。すごいよ。

  • 坂東真砂子には勝手に日本の民話を絡めてホラーを書く作家という印象があって今まで読んだことがなかった。ちょっと年上の先輩がこれは面白いよと薦めてくれなかったらきっとずっと読まなかっただろう。これはホラーではない。民話の背景にある人々の悲しみを書いたなかなかの傑作。明治の終わり越後の山奥の雪に閉ざされた明夜村に二人の役者がやってきたことから物語は始まる。村の地主安倍家に招かれ奉納芝居を指導に来た座長の扇水と若い女形の涼太郎。安倍家の子守をする妙は涼太郎に普通ではないものを感じる。安倍家の嫁てるに感じる怖ろしさと同じ様なものを。明夜村の奥には昔鉱山で栄え今は廃墟となった狼吠山がある。そこには子を食らう山妣(やまんば)が出るという伝説がある。第一部で明かされる涼太郎の秘密,鍵蔵とてる夫婦の間のみぞ、病に伏せる妙の母の悲しみ、ゴゼである琴に芽生えたほのかな思い。貧しい小作人たち村人が雪深い冬に辛い毎日を忘れ楽しみにしている芝居の日に起きる事件。妙の母の悲しみ、それは多分あの時代のどんな農村にも共通してあった悲しみなのだろう。姥捨てや山姥伝説、でもそれさえも妙の母はうらやましく思っている。そんな母の悲しみを明かされながらもいつか近い将来自分も母と同じ様に小作人の女房となるだろうと運命を受け入れている妙。子を食らう女、そんな女はごまんといる。娘を遊郭に売る母や、子どもに乞食をさせて稼がせる母。自分を捨てた母も同じ。涼太郎が思うように今の時代にもそんな山姥はやはりいる。第二部、物語は鉱山が廃坑になる前に遡る。つかの間の繁栄を見せていた鉱山街に影が差し始めたころ、そんな山奥の女郎にまで落ちた女君香の物語。どんなにあがいても抜け出せない日々、日ごとに膨らむ借金。貧しさの中で何とか見つけたと思った優しい思い。そして逃亡。逃げ込んだ山でも裏切られそこで出会った流れ叉鬼とともに山で生きようとしそこでも男は去っていった。山の掟、廓の掟、山の神の掟、そんなものは人間が作ったもの。そんな掟から逃げたのに人がいる限りまた新しい掟に縛られてしまう。自然である山は恵を与えてくれるがそこに人がいれば掟ができる。二人の子を産んだ君香(いさ)の強さは何なのだろう。母の強さかそれとも生きるという以外に何も考えなかったのか。鉱山の女たちのように日々の生活に追われ働き続けるか、女郎たちのように借金に縛られ働き続けるか、それとも里の妙の母のように働き続けるか、どんな道を選んでも女たちは生き続ける。その厳しさは変わらない。山は厳しい反面恵みも与えてくれる。やはり同じなのだ。第三部、逃げ込んだ狼吠山を舞台に物語の主役たちが集まってくる。熊狩りに追いつめられた熊と対峙する鍵蔵、いさ、涼太郎、てる。次々と追いつめられていく鍵蔵が手負いの熊のように思える。てるの過去も喜助も思いもよらない展開だった。獅子狩りの猟師たちの信仰の様な猟と自然を知り尽くしたいさ。迫力ある展開だった。

  • 男性でも女性でもない涼之介から物語が始まる…かのように見えるが、その後どんどん
    話がつながっていき、「そういうことだったのか!」と納得がいくことになる。壮大だ。
    作者の本は初めて読んだけれど、ぐいぐい引き込まれた。

    男性でも女性でもないってどういう気分なんだろう。涼之介の哀しみがまた心に響く。

  • 「明治末期、東京からやって来た旅芸人が静かな越後の山村に嵐を巻き起こした。その男の肉体に隠された秘密、そして地主の若夫婦との間に芽生えた密やかな三角関係が、伝説の中から山妣の姿を浮かび上がらせる(帯より)」。
    第116回直木賞受賞。長い長い読み応えのある小説。いろいろな人物の目線から書かれているため、どの人物に感情移入するかは読み手に任されているが、私は映画を見るように情景を思い浮かべながら次にあの人物はどのような行動をするのだろう、何が起こるのだろうと、読んだ。ほとんど休むことなく一気に読んでしまった。ほどよい緊張感が全体にあって読後もすっきり。直木賞納得の作品。

  •  
    ── 坂東 眞砂子《山妣(やまはは)1996‥‥ 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/410414701X
     
     
    (20231128)

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著者プロフィール

高知県生まれ。奈良女子大学卒業後、イタリアで建築と美術を学ぶ。ライター、童話作家を経て、1996年『桜雨』で島清恋愛文学賞、同年『山妣』で直木賞、2002年『曼荼羅道』で柴田連三郎賞を受賞。著書に『死国』『狗神』『蟲』『桃色浄土』『傀儡』『ブギウギ』など多数。

「2013年 『ブギウギ 敗戦後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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