生命の意味論

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 219
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104161010

作品紹介・あらすじ

私はどうして私の形をしているのか。遺伝子が全てを決定しているというのは本当か。男と女の区別は自明なのか-。「自己」とは何かを考察して大きな反響を呼んだ『免疫の意味論』をさらに発展させ、「超システム」の概念を言語や社会、都市、官僚機構などにも及ぼし、生命の「全体」にアプローチする画期的な試み。

感想・レビュー・書評

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  • 免疫学の専門家が雑誌「新潮」に1995年から1996年にかけて連載した内容を加筆して1冊の本にまとめたもの。筆者の直接の専門領域をこえた生命科学研究全体からの生命現象の意味についてメッセージが込められている。

  • 『生命の意味論』(青土社)で、免疫のしくみを「超(スーパー)システム」ということばで説明することを試みた著者が、生命現象にかんする最先端の研究成果をわかりやすく紹介しながら、「超システム」という概念のもつより普遍的な可能性について論じている本です。

    著者は能についても造詣が深いことはよく知られていますが、能についての言及があったり、「超システム」という発想にもとづいて人間社会についての大胆な見取り図を提出したりと、『生命の意味論』よりもさらに闊達な議論が展開されており、科学者のエッセイとして秀逸な内容であるように思います。

  • 252円購入2014-01-05

  • 古い本だが今読んでも面白い。女は「存在」だが男は「現象」とか都市が生命体のように感じられる理由、超(スーパー)システムという捉え方が20年近く前にあった新しさ。

    [more]<blockquote>P35 (種の保存や個体の生存とかを目的とするならば)脳や免疫がここまで発達しなければならぬ理由はなかった。むしろスーパーシステムとして発達してしまったために、精神病や自己免疫疾患など様々な矛盾を内包するようになったということもできるだろう。スーパーシステムは、直接の目的を持たないシステムとして発達してきた。システム自体が自己目的化しているシステム。

    P56  生物がDNAの乗り物なのではなくて、DNAのほうこそ、生物という実態を持つようになったものが自己実現のために利用してきた乗り物のように見えてくる。人間はDNAという乗り物に乗ってこの世に現れ、その全機能を利用して生き、それを乗り捨ててこの世を去る。

    P64 日本住血吸虫の生活史。成虫は雌雄が交尾したまま肝臓の血管内に寄生し生涯卵をうみ続ける。卵は排せつされると、中間宿主であるミヤリガイに寄生し、セルカリアとなって人間の皮膚を通って再び人間の血管内に寄生する。

    P72 日本では「隔離」という思想はもともとはなかったのではないかと思う。(江戸末期か明治初期のド・ロ神父の赤痢患者救済活動)

    P77 人間の伝染病を眺めることによって浮かび上がってくるのは、DNA(時にはRNAの形で)を介して成立している生物系の相互関係、すなわちDNA生態系の存在である。そこには宿主と寄生体とは、互いに厳密な特異性をもった関係を形成しながら、一触即発の緊張のある生態系を構築し知得たのだ。環境のわずかな変化が、その生態系を変化させる。それが伝染病となって現れる。

    P116 女は「存在」だが、男は「現象」にすぎないように思われる。そのためであろう。男女の間には様々なあいまいな性が存在している。【中略】女と、その加工品である男だけと言う単純化された二つの生と、それによって営まれる生殖行動しか存在しないよりも、さまざまな間性と間性的行動をもった人間のほうが、生物学的にも文化的にもより豊かな種のように思われる。

    P211 生命は、DNAから細胞に至るまで、あいまいさに裏付けられて動いていた。実はそのあいまいさゆえに、生命は「回路」を外に開いて、動的に活動することができたのである。

    P226 バルセロナの都市構成を眺めてみたが、そこにもまたスーパーシステムの技法が流用されているようにわたしは思う。まず単純なもの(住居)の複製に続くその多様化、多様化した機能を基にした自己組織化と適応、内部および外部環境からの情報に基づく自己変革と拡大再生産等、いずれも高次の生命システムが持っている属性と共通である。
    </blockquote>

  • 初めて聞く用語ばかりだが、理系名著の多くは 複雑なものを 1つの言葉で単純化しているので、わかりやすい

    自己多様化→自己組織化→自己適応の流れは 仕事や人生にも応用できる。スーパーシステムは目的を持ってシステム化されたのではなく、スーパーシステム自体が目的であることも面白い

    「免疫の意味論」も読んだが、こちらの方が読みやすい

  • アポトーシスの不思議。
    性別の不思議。わざわざ「脱女性化」をして男性になる回りくどさ。男性はやっかいな手続きの末にようやく男になれる。この複雑な手続きには様々な手違いが生じうる。
    女にはX染色体が二本あり、一般にはその片方だけが働けば支障をきたさない。男はX染色体が一本しかないので、そこに遺伝的な欠陥があるとそのまま障害となって現れる。

    人類の祖先はアダムとイブのような一組の男女から生まれたのではなく、すでにネズミなど他の哺乳動物や類人猿などに存在していた、かなりの種類のMHCの多型性をそのままHLAが引き継いだ子になる。言い換えれば、HLA遺伝子を引き継ぐことができるほどの多数の個体が、突然人間に進化したという事になる。・・・交配可能な多数の祖先がある日突然地上に現れたという結論に達する。

  • 生命の持つあいまいさや多重性。それゆえに成り立つスーパーシステム。細胞から人間社会まで適用されているとの考察。難しかったけど、面白い。

  • 生命の意味論 多田富雄 
    命の基本は切れ切れの競争にあらずして
    調和のループであるらしい
    一つの分子にはいくつかの原子が輪になってつくるタンパク質が
    活動しているという
    更に様々な分子が螺旋に連なってトータスな形となり
    機能の違う細胞を組み立てる
    すべての動きは自主的に連鎖することで成り立っているらしい

    意味を持ったことを可能にするためには色々な輪をつなげて
    トーラスな流れをつくる
    一つの自律した輪から始まって螺旋となりトーラスとなっては
    又螺旋で成長してトーラスに落ち着きという
    入れ子状の循環によって生命体をつくり家族を構成し
    仲間が集い地域社会へと無限に広がっている
    この世はどこまも螺旋とトーラスの連鎖のようだ
    その一方では分離して増幅するだけでなく
    連鎖が切れたり折れたりゴミが溜まったり気持ちがそれたり
    することで流れが滞り怪我とか病とか死という不都合が起こる
    あるいは今という時間軸を外して過去の競争という迷路にはまり
    未来を搾取することで生き延びようとする
    無機物の原子から有機物の命が生まれて又原子の戻る
    生と死の循環も織り込まれているらしいし
    そこには更に素粒子との無限のループもあるのだろう

    今という中心に近いほど裏表も陰日向もないけれども
    過去の権利意識には表裏となる未来への不安が利息をつけて
    まとわりつくようだ

    多田さんの専門は免疫細胞に研究だということで
    研究中のエピソードが満載のエッセイ集とも言えそうな本である
    狭く絞られた専門職でありながら俯瞰していなければ描けない
    視野の広い内容から沢山の発見を得ることができる
    専門外だから自由にモノが言えると言いながらの
    造語や空想や思いで目からウロコがイッパイである

    帯の言葉にもあるように
    私という自己はどうして私なのか?
    私の全てを遺伝子が決定しているのか?
    彼独自の超システム論の概念で抽象的意識・言語の発展・都市問題
    官僚機構などにも立ち入って生命というこの世全体を
    見通しながら部分である専門分野を紐解こうとしているようだ

  • 所在:紀三井寺館1F 請求記号:Browsing
    和医大OPAC→http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=46057

    免疫学者である多田富雄氏の生命観や「スーパーシステム」の概念がよりわかりやすく書かれています。
    「免疫」システムだけでなく、「生命」や「社会」のシステムについて考える上で、多くの示唆を与えてくれる本です。

  • 竹内久美子さんのお師匠筋だった筈。
    南美希子の書評に騙されて買いました。
    細胞のアポトーシスくらいしか理解できなかった。

    租借した竹内本の方が、さくさく読めます。

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著者プロフィール

多田富雄(ただ・とみお、1934-2010) 
1934年、茨城県結城市生まれ。東京大学名誉教授。専攻・免疫学。元・国際免疫学会連合会長。1959年千葉大学医学部卒業。同大学医学部教授、東京大学医学部教授を歴任。71年、免疫応答を調整するサプレッサー(抑制)T細胞を発見、野口英世記念医学賞、エミール・フォン・ベーリング賞、朝日賞など多数受賞。84年文化功労者。
2001年5月2日、出張先の金沢で脳梗塞に倒れ、右半身麻痺と仮性球麻痺の後遺症で構音障害、嚥下障害となる。2010年4月21日死去。
著書に『免疫の意味論』(大佛次郎賞)『生命へのまなざし』『落葉隻語 ことばのかたみ』(以上、青土社)『生命の意味論』『脳の中の能舞台』『残夢整理』(以上、新潮社)『独酌余滴』(日本エッセイストクラブ賞)『懐かしい日々の想い』(以上、朝日新聞出版)『全詩集 歌占』『能の見える風景』『花供養』『詩集 寛容』『多田富雄 新作能全集』(以上、藤原書店)『寡黙なる巨人』(小林秀雄賞)『春楡の木陰で』(以上、集英社)など多数。


「2016年 『多田富雄のコスモロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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