- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104451012
作品紹介・あらすじ
夢と野望を胸に渡った満洲の地。広大な原野に立ちすくみ、馬賊の襲撃に怯えつつも、森田勇太郎は着実に地盤を固め、森田酒造を満洲一の造り酒屋にまで成長させていく。だが、「同じ着物は二度着ない」とまで言われた栄華も長くはなかった。夫・勇太郎の留守中、ソ連軍の侵攻と満人の暴動に遭い森田酒造は崩壊。妻・波子は二人の子供を抱え、明日の命すら知れぬ逃亡生活を余儀なくされる。夫との再会を信じ、ひたすら故国を目指す波子。しかしこれは、波子を呑み込む過酷な運命の始まりに過ぎなかった。母、満洲、極限状態。直木賞受賞第一作。
感想・レビュー・書評
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戦禍の満州、日本ロシア中国の関係。どんな状況だったのかをまざまざと見せつけられた。
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昔読んだ本
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なかにし礼の自叙伝
満州国の成り立ちが分かる -
ドラマはみてましたが、そうとは知らずに購入。映画もあったそうですね。
主人公は波子だと思いますが、牡丹江保安局(簡単にいうとスパイ)の氷室を軸に読んでいました。それぞれの立場で、「幻の満州国」の希望と絶望を味わうのですが、国家とのはざ間で、「満州」にいや日本に翻弄されていた姿は印象的でした。
それが阿片にやられて、それを克服していく中にでてくるのですが、そこまで追い込まれないと自分を表現してはならなかった当時の状況が鮮明に伝わってきました。その意味では原作のほうがよかったですね。
また牡丹江に波子一家が着いた頃、まだ何もないところから繁栄(一時的にでも)していく姿は、満州=引揚げのイメージが強かったので、印象的でした。 -
これはすばらしい!!
久しぶりのヒットです。
戦時下の満州が舞台の小説です。
歴史的事実と著作者の実体験がもとだそうなので、話しがとてもリアル。
こういった小説は歴史背景の描写にうんざりすることが多いのに、的確でわかりやすく読めます。
重い題材ですが、女性を主人公にしたストーリーは小説としても完成されていて、
読者を引き込みます。
主人公は女性で、たくましい。
たくましすぎて、尋常じゃないようにも
みえ、反感もかうのでは?
でも私は感動しました。
母として、女として、
もしこういう状況におちいったら
私は同じ行動をするかも。
ちょっと子供にたいしては冷酷でついていけないけど。 -
読んだのは2回目。
森田酒造は関東軍に酒を納めることで成長発展してきた。しかし、それは不安定な砂の上に建てた楼閣にすぎなかった。
昭和20年8月 満州牡丹江にソ連軍が迫っていた。森田酒造の主人森田勇太郎は出張中で留守だった。満州人の蜂起によっても利他酒造の波子をはじめとする日本人は財産を奪われた。命の危険にさらされた森田酒造の波子、娘の美咲、末息子の公平と女奉公人の3人は牡丹江省地方保安局の氷室によって軍用列車に乗ることが出来た。列車に乗っている間、何度かソ連軍による爆撃に会いやっとの思いでハルビンに着いた。しかし、ハルビンに着くと満州軍により荷物を全て取り上げられて着の身着のままになってしまった。
波子たちは公平の服の内側に隠したお金があったので、ナショナルホテルに宿泊した。ナショナルホテルは何回か泊まったことがあるので、勇太郎に会えるのではないかと考えたからだった。しかし、勇太郎に会うには収容所のほうではないかと考え直し、収容所に移った。収容所に移ってから9日目に突然勇太郎が中国人の助けもあって現れた。しかし、せっかく会えたのに、45歳以下の男たちを連れて行く列の中に46歳の勇太郎も自ら加わってしまった。
その後は回想録。
大正9年の小樽での観艦式。接待係をしていた波子と森田運送店の息子であった勇太郎はであった。
その時、波子は軍人の大杉寛治と付き合っていて、プロポーズまでされたのに、その日あったばかりの勇太郎に心引かれて勇太郎と結婚することになった。
その後、大杉と勇太郎は和解し、その大杉から満州行きを勧められた。
勇太郎夫妻に1男1女が誕生し、昭和9年満州に渡り、大杉の計らいにより森田酒造を起こした。
酒造所や住居、井戸の掘削。いよいよ棟上をする段階になって匪賊の紅槍会の襲撃にあったが、直接交渉し、武器を調達することで協定を結んだ。
昭和9年9月酒造所、住居ともに完成し、本格的な酒造が始まった。第一号は上出来の辛口であった。 -
えぐいけれど、事実こういう時代があったのだなあ...。妻の父上から頂いた1冊、ただこの表紙ではなかったのが残念。
主人公の女性がこどもたちに向かって言う「あなたたちは私自身...」というシーン、うまいことを言うと印象深いです。
映画になっていたのですね。常盤貴子。 -
壮絶なストーリー、で片付けていいのか分からないレベルで素晴らしいです。
戦争の中、一人一人がエゴに生きてる。
けれど、それに嫌悪感を感じられないくらい登場人物が魅力的。
小説は客観視するのが普通なのですが珍しいぐらいに氷室さんには共感するのが多かったです。
でも、個人的にはママさんに振り回されたいという願望がww最低でエゴな人って好きww -
2004年5月。