- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104629022
感想・レビュー・書評
-
「プロ」と「素人」。「親」と「独り身」。
「誰かのプライド」と「自分の現実」。
解り合えないし解りたくもない。
無意味で悲惨なできごとは、何と何を断絶させるのだろう。
最後の四行が至極当然の考えに思えた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第135回直木賞候補作の内の1冊。今作品では沖縄戦を舞台に、極限状態の人間を描きます。 凄かった。ただただ、凄かった。まるで体験した沖縄戦を書いているかのようなぎりぎりのリアリティがあるのに、エンタメ作品として面白いんだもん。人の生き死にだけじゃない戦争の悲惨さ愚かさが描かれていて、改めて「戦争」とはどんなものなのか、静かに訴えかけてくる。 防空壕に置き去りにしてしまった4ヶ月の赤ん坊初子を探しに戻りたい母親チヨと、それを手助けし、戦火の防空壕へと戻ろうとする脱走兵の主人公真市。物語は死期が迫った真市の回想という形で綴られる。赤ん坊は生きているのか。無事に再会できるのか。<現在>として、ときどき絶妙な位置に挿入される手紙の一文の存在が、手に汗握る感を倍増させる。 これ、ちょっとした仕掛けがあるんだけど…スゴイね、巧いね。「ぢつは…」驚愕の真相がてんこもりなんだもん。最後の最後まで驚かされっぱなしで、気が抜けません。 なぜ真市は初子を探す手助けをするのか、班長はなぜ真市たちに食料を持たせて送り出したのか、なぜ少尉は敵地へ乗り込む真市の手助けをするのか。手の内を明かされれば「なるほど」と思うしかないんだけど、その真相にはただただ胸が熱くなる。ここまで、子を想う母性とは強いものなのか。 「戦争が続く限り未来が犠牲にされる」今も戦火がやまぬ国があると報じられる度に、この言葉を思い出しそう。 しっかし、なんで直木賞はダメだったのかしら?やっぱり政治的すぎるから?素晴らしい作品なのに、まるで評価されないなんて、納得いかーん!!!