下山事件

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104662012

作品紹介・あらすじ

その列車がゆっくりとカーブを描きながら目の前を通過したとき、日本の歴史も大きく軋みながら軌道を変えた-。『彼』の情報が恐ろしく重要なものだと分かったのは、ジャーナリスト・斎藤茂男と出会ってからだった。あれから半世紀。残った者たちの重い口を開かせることが、果して出来るのか?生き残りたちを懸命に探して会う「僕」の旅が始まる…。

感想・レビュー・書評

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  • NHKスペシャルきっかけで手に取った。感染力高し。どんどこ他の本も読もう。

  • 下山事件の本を詳しく読むのは初めてなので ほかの人の視点で書かれた本も読んでみたい

  • 188

  • 図書館で借りた本。

    この人の書くものはドキュメンタリーなのだが、時折その「対象物」との「距離」を確認するような部分がある。実はそこがわたしにとって最も惹かれる部分である。

    下山事件については、わたしはほとんど何も知らないに等しかったが、このようなことがあって今の日本があると知り、またこの事件は今でも続いていると著者は言う。

    なるほど、それはそうかも知れないと思う。確かに日本が南北に分裂しなかったのは、あの当時の右翼がやったことの結果なのかも知れないが、しかし、その数年前はアメリカは敵国で自ら戦ってきた人間が、こうもアメリカに飼い慣らされていく、これが日本人の本質でもあるのだろうか、という思いが残った。

    アメリカは日本では成功したけれども、イラクでは成功しなかった。それはやはり日本は基本的に「全体主義」の国だからだろうか。

    心に残った文章。

    「でも人は、あまりに近距離なものには焦点を合わせづらい。だからこそ過去を忘れてはいけない。だからこそ何度も何度も目を擦りながら、僕らは過ぎ去ってきた遠くを、凝視し続けなくてはならない。」

    「ただ、日本は表皮が薄い。僕はずっとそう感じている。表皮が薄いからこそ、鎖国以降は一転して欧米の文化や社会システムを吸収し、近代化を果たしてアジアの盟主になった。表皮が薄いからこそ、戦後はアメリカの占領政策にほとんど抵抗をしないままに従属し、押しつけられた民主主義をあっという間に吸着し、その後の高度経済成長を果たして世界に冠たる経済大国になった。
     共同体への帰属意識が並外れて強い民族性を持つが故に、日本は常にアジアでは突出した国家の位置を保ち続けてきた。しかし表皮の薄さは、事があったときに一方向に暴走するという共同体の負のメカニズムを発現しやすいことと同義である。」

  • オウム信者らを撮ったドキュメンタリー「A」などでも有名な森達也さんが、戦後民主主義の大きなターニングポイントとされる、国鉄総裁死亡事件、通称「下山事件」について50年たったいま、独自取材をしたもの。

    高校の日本史の先生がマニアで、この事件を取り上げて細かく講義したことがあったため、個人的にも大いに興味があり、すぐに読み終えてしまった。
    取材記のような形をとっているため、筆者のリアルタイムな高揚とか事実の重みが感じられる。ただの謀略史観には留まるまい、という筆者の意気込みや、こういった腰をすえてやる取材がやりにくい、今のジャーナリズムに対する問題提起が鮮やかだ。

    事件を知らない人にも十分面白いはず。

  • 矢板の殿様(弟の方)が魅力的。西瓜を切ったりするとこがたまんない。

  • これまた戦後の歴史に関わる本。下山事件は国鉄の元総裁が線路上で死体で見つかった、いまだ解決されていない事件。これを考察に戦後の日本を見つめる本として興味ぶかかった。著者はオウムのドキュメンタリー映画「A」の監督で、独自の視点で、しかもわかりやすく戦後の歴史を、今の日本の延長線上で解説してくれていたりもします。・・・あまり書くとネタバレになるのでこのあたりでw おすすめです!

  • 昨年、「葬られた夏」を読んだ時、自分と同世代の中にも下山事件に興味を持ち真相を追究しようとするジャーナリストがいることに軽い驚きと下山事件の持つ意味(?)の大きさを再認識した。しかし、今年発売されるに至った本書の経緯を知るにつけ、前書が後出しのジャンケンで勝ったようなものだと思わざる得なくなった。まだ完読していない段階での感想だが、PR紙等の書評を読む限り読後も感想はあまり変わりなさそう気がする。

  • 甲賀などを舞台とした作品です。

  • 私と下山事件の出会いはここ。

    大手町の紀伊国屋でなんとなく購入。
    すごく読みやすくて一気に読了。

    事件の中身とそれに迫って取材を続ける「僕」(森)の2つの切り口からのドキュメンタリー。

    読んだ直後は星5つの興奮だったが
    最近読んだ森のニュースソースである柴田哲の本により一部肝心な部分に虚偽があることが書かれていたため星1つ減。

    でも、この状態で本にしちゃって本人はほんとに満足していたのかな。

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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