ひとりの体で 上

制作 : John Irving  小竹 由美子 
  • 新潮社
3.81
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本棚登録 : 371
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105191153

作品紹介・あらすじ

美しい図書館司書に恋をした少年は、ハンサムで冷酷なレスリング選手にも惹かれていた――。小さな田舎町に生まれ、バイセクシャルとしての自分を葛藤の後に受け入れた少年。やがて彼は、友人たちも、そして自らの父親も、それぞれに性の秘密を抱えていたことを知る――。ある多情な作家と彼が愛したセクシャル・マイノリティーたちの、半世紀にわたる性の物語。切なくあたたかな、欲望と秘密をめぐる傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 語り手はビリー。ヴァーモントの田舎町出身、70歳を目前にし、バイセクシュアルの自分の人生を振り返る。

    13歳で親子ほど年の離れた美人図書館司書ミス・フロストに惹かれ、本嫌いだったビリーは本の虫となり、ディケンズの「大いなる遺産」を読んで作家を志す。彼女に憧れる一方でレスリング部の美しく残忍な少年キトリッジにも惹かれ、バイセクシュアルの自覚を持つ。

    セクシャル・マイノリティな彼を取り巻く人々の混乱や反発、非難や受容、そして愛。
    ミス・フロストによる文学の手引き。
    思春期の彼の初恋・初体験を軸に展開する上巻。

  • 性的な嗜好が他人と異なると、その自己発見が人生を通じたテーマにもなりうるのだ、ということが発見だった。
    その点は目新しく、しばらく楽しめたが、この分厚い本全体がずっとえんえんその話なので、
    人生それだけじゃないだろうという思いが募ってきた。もし1/3の長さに圧縮されていたら、楽しかっただろうと思う。

  • 70歳の作家が倒錯的な性癖の遍歴を振り返る物語。

    基本的には時系列に物語は語られているが、所々時間がスキップして先走るエピソードが挟まれて読みにくいのはいつもの通りです。
    今回はバイセクシャルな主人公とその周りの同性愛者やニューハーフや異性装愛者を描くことで、真実の恋愛を描こうとしているように思います。
    主人公の父親はいつものように疾走していますが、上巻では主人公は放浪していません。
    古い考えを持ち町から離れられない人たちがいるアメリカの田舎町の設定も作者の真骨頂です。
    読みにくいのに惹きつけられる文章力に圧倒されつつ、下巻を楽しみにします。

  • セクシャルマイノリティを扱った小説(単純にゲイが出てくるとかだけでなく、さまざまな、違ったタイプのマイノリティが同時に出てくる小説)と言えば松浦理英子『親指Pの修行時代』が浮かぶ(勿論他にも同様のテーマを扱っている作品はあるのだろうけど)が、それに比べると随分静かな小説だと思う。図書館が舞台だったりするからだろうか。バイセクシャルは中途半端でずるい、という意見は、実際に聞いたことがあるのではっとした。

  • とある田舎町、男の子も、「それに」女の子も好きだった68歳の「私」。私の少年時代のという回想から始まる物語は、時間も空間もあちこちに飛び、家族の秘密、異性の親友、トランスセクシュアル(トランスジェンダー)の美しい図書館司書と宿敵にして禁断の恋の対象だったレスラーとの奇妙な三角関係、複雑に絡み合う人間関係に物語的に起伏も相まって、結構な重量感。途中でこれはダメだと思い相関図を作成。初アーヴィング。不思議な読み心地を味わいながら下巻へ。

  • 翻訳最新作。美しい図書館司書と同級生の同性に恋する少年。アーヴィング作品ではお馴染みの場所やモチーフが散りばめらつつ、ジェンダーを題材にした異色作かもしれない。上巻では少年を取り囲む人間関係から性の目覚めが浮かび上がる。

  • ミス・フロストもトランスジェンダーだったのにはたまげた・・・

  • まだ上巻なので、どういった話に落ち着くのかはわからないけど、「ひとりの体で」というタイトルが全てを表わしているような気がする。

    ひとりの体の中にあるいくつもの感情。
    愛というのか、性欲なのか。
    自分のなかでも整理がつかない、しかし決して人に相談のできない思い。

    思春期の、出口のないもやもや。
    自分の知らない広い世界を知りたい気持ち。

    ミス・フロストが図書館司書として、必要な時に必要な本を手渡してあげる。
    ビルの読書は実に幸福な体験だったと思う。
    そして図書館の地下室にあるベッドとバス・トイレだけのミス・フロストの部屋。
    悲しい理由で作られた部屋だけど、羨ましい。

  • ジョン・アーヴィングの作品は全部読んでいるはずだが、この人は「語りなおす」のだなと再認識。セクシャルマイノリティ、ディケンズ、レスリング、不条理な大量の死、熊も少し。これらを織り込みながら、主人公の人生と成長を饒舌に綴りながら、テーマを浮かび上がらせる。村上春樹もこのタイプだと思っている。既読感はあるのだが、作家は言いたいことを伝えるために何度でも語りなおす。
    本書のテーマはLGBT(あー私もアルファベットの正しい順番を考えてしまった)。しかし本来的には、愛に翻弄される人間のクロニクルだ。バイセクシュアルの作家となった主人公は、田舎町で美しい司書に、トランスセクシュアルと知らず恋をする少年時代から、数々の出会いや別れを経た現在までを振り返る。
    時制が自由に行き来し、親友や父を巡るミステリー的な謎解きも含み、そのストーリーテリングのうまさが上質の読書体験を保証する。田舎町のLGBTへの偏見、エイズによる死は禍々しいが、アーヴィング流の暖かいユーモアで包まれている。

  • アーヴィング「ひとりの体で」http://www.shinchosha.co.jp/book/519115/ 読んだ。よかったけど辛い。アーヴィングの小説でおなじみの要素、父の不在、死と暴力、レスリング、弱き者、は同じだけど、ここまで死が怒濤に描かれたものはあるか。身内友人知人愛した人までが次々に死ぬ(つづく

    上巻のエピソードが下巻で別の形になり重みを持って再登場する。無数の伏線とそれを結実させる構成力は見事だけど読んでいて本当に辛い。泣いてしまうので電車の中では読めなかった。老作家の一人称文体は手記ではなく人生話を吐露するような口語体で、相手の想定が気になる、読者ではなさそう(つづく

    女装、同性愛、バイ、身体上精神上の性転換、構音障害、とマイノリティが次々に登場する。キリスト教由来のソドミ法、自由を謳いつつマッチョで硬直したアメリカという国におけるエイズ。冒頭の、大嵐の船上でボヴァリー夫人を読み続ける本好きのエピソードと、ラストのジーの存在が唯一明るい(おわり

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