トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[下] (Thomas Pynchon Complete Collection)

  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (752ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105372132

作品紹介・あらすじ

世界文学史上に空前の伝説を刻んだ33万語、100万字超の巨篇――新訳成る! 耳をつんざく叫びとともに、V2ロケット爆弾が空を切り裂き飛んでくる。ロンドン、一九四四年。情報局から調査の命を受けたスロースロップ中尉は――。 ピューリッツァー賞が「卑猥」「通読不能」と審査を拒否した超危険作にして、今なお現代文学の最先端に屹立する金字塔がついに新訳。詳細な註と膝を打つ解説、索引を付す。

感想・レビュー・書評

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  • いやはや、何とか読み終えた。というのが正直な感想。何が何だか分からない箇所も多々あった。汗
    「メトロポリス」という映画は一度観てみたかったので、この機会に観てみよう。
    上巻に比べ、どぎつい話が多く(スカトロプレイの末にお腹が痛くなって死ぬプディング准将には笑ってしまった)、ペクラーと娘の話など物悲しい話も多い。また、電球バイロンの自分語りなど荒唐無稽な話も絡み合い、ナチスドイツが敗れ混沌とした世界(ゾーン)で様々な念が蠢いている。
    それでも、ロケットマンを経て自我が解体されゆくスロースロップ、ゴットフリートを乗せたロケット00000号の発射シーンには、自分でもよく分からないが胸が熱くなった。
    最後に、Apple Musicで探してみたところ、The Foolの「Rainbow Man」も見つかった。

    Now everybody

  • 評価はできません。
    すごいものを読んだ、という自己満足と驚きで頭がいっぱいの状態です。

    数々の登場人物、入り乱れる時制と主語と舞台。

    猥雑さだけではなく、映画初期や舞台当時の映画作品の数々の言及。見られない作品も多いけれども、ピンチョンのルーツを辿るという意味では興味深いところもたくさんあり。

    いくつかピンチョン作品は読んできましたが、質、量ともに最高作ではないかと。

    たぶん戦争、欧米植民主義へのアンチと皮肉について延々と書いてあるのでは…と自分の中で納得してからはどんどん読み進めることができました。(その見方があってるかはさておき)

    商業化全無視、人力Wikipediaの世界にどっぷりと浸りたいのであれば強く強くお勧めします。

  • なんというか。あまりにも変すぎる小説。異国の文化の中にガッチリと根を下ろしていて、軽いテンションで読めない。

  • 下巻最初の方のペクラーの話がまだわかりやすく感じた。
    が、相変わらず話は飛ぶし、ロケットに関しての解説は長いし、主人公だれだっけと思ってたら、ああ、そうだスロースロップだった気がする、程度の記憶で読んでた。
    面白いかと言われるとそれほどでも? と思うが、続きは気になるので読み進めて何とか読めてしまった。
    うん、長かった、重かった、眠いときがあった、そこそこ楽しめた。
    長年気になってた本が読み切れた達成感の方が強い本だった。
    それぞれの主人公で普通にシリーズモノとして出してくれてもいいような話だったよ。

  • ついに読み終わった……。天才の書いたヤバい小説。それひとつで一冊の小説が書けるようなイメージが次々と現れては消え、語りはあらゆる方角へとびまわり、ところがいきなり物語として余りにも唐突で強引で笑ってしまうほうどの結びつきを披露する。そして、それらを貫くロケットという抽象的な代物にまで昇華された存在──。そんなわけで、はっきりいって一読しただけじゃわけがわからない。解説を読んで振り返りながら整理して、やっと全体の複雑すぎる絡み合いが見えてくるよう。それでもただただ圧倒される。サラリーマンになったらこんなものを読む気力があるかはわからないが、絶対にもう一度、二度は読みたい。

  • 今まで読んだ中で恐らく最も長く、難解な小説だった。
    本を持つ手は筋肉痛になり、ほぼ毎日のように不眠・頭痛と戦いながらも、内容が面白いので、決して中断はできなかった。
    原文を眺めながら所々邦訳を参考にして齧り付くように読み切った二ヶ月間だった…
    ただ読後の達成感はハンパじゃなく、また内容の問題意識も重厚なので、この物語は一生私の心に残り続けると思う。
    ポストモダン最高!ピンチョン最高!

  • 自殺願望を成就するために戦争に行くみたいな事が書かれていてなるほどと思った。戦争になるとそういう気分になるのかもしれない。

  • これは高度な知性と技術によって構築されたロケットそのものであり、同時にまた破壊された情報と文化の残骸でもあるのだろう。超然とそびえ立つ本作は確かに難解で複雑だが、二項対立が無化され権力がシステマチック化された現実ほどではない。エロも戦争も科学も映画も並列して存在する20世紀、そんな不思議の国に起立するバベルの塔の様な本作は自分にとって歴史という罪への、敗北したカルチャーへの供物のように感じられた。時代が勝者によって作られようとも、ピンチョンが打ち込んだ楔は誰も消し去れやしない。そして驚くことにまだ笑える!

  • 【選書者コメント】新訳なら理解が出来るんじゃないかと期待大
    [請求記号]9300:1758:下

  • もうね、何が何だかさっぱりわかりません。
    誰の話なんだか、いつの話なんだか、何の話なんだか、一回道に迷ったら最後、いつまでたっても迷いっぱなし。で、気が付いたらいつのまにかロケットに押し込まれてドーン!と発射。

    どうにもわからないから、正義とか裏切りとか、愛とか憎しみとか、要は僕でも理解できる感傷に逃げ道を探してわかったような振りをしてみたいんだけど、ピンチョン先生はそんなことは全く許してくれず、やたらと多い登場人物たちが頻繁に出たり入ったりするもんで全くついていけないドタバタ劇と、複雑に絡み過ぎていてもはや誰が誰に仕掛けたものかわからない陰謀の千枚漬けの中でひたすらもがき続けるような読書体験。共感の付け入る隙が一切見つかりません。
    ちなみに、どんなお話かかいつまんで説明すると、「V2ロケットとか戦争とか巨大複合企業とか二元論とか植民地とかSMとかバナナとかドードーとか蛸とか、のお話」です。

    で、その中に「電球バイロンの物語」という章の中で完結してくれる比較的わかりやすい物語内物語がある。「バイロンという永遠に切れることのない完璧な電球」と、「切れるからこそ需給関係が成り立つ消費財としての電球流通システムである巨大白熱電球カルテル」との対立、という構図。
    はじめはカルテルに追われる逃亡者として、次に怒りを抱えた反逆者として電球たちに連帯を呼びかけようとするもかなわず、胸の内にはフラストレーションをくすぶらせつつも永遠に光りを放ち続ける無力な電球という宿命を無力さとともに受け入れ、沈黙の中で傍観者となるバイロン。あの電球のころんとした形と相まって可愛いような可哀想なような、ひねくれバイロン。
    帯によると400人以上の登場人物がいるらしいんだけど、その中で、一番感情的な思い入れをしやすいキャラクターが「電球」てのもなんかの冗談なんじゃないでしょうかね。

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