プラド美術館 絵画が語るヨーロッパ盛衰史 (新潮選書)

  • 新潮社 (1995年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (307ページ) / ISBN・EAN: 9784106004865

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  • プラドのスタートはナポレオン美術館だった(!)。
    スペインがナポレオンの支配下にあった時代。
    スペイン王は、ポナパルトの兄。
    その兄は自分を王にしてくれた弟に感謝してナポレオン美術館を作ったのだ。
    フランス皇帝ナポレオンがプラド設立に貢献していたとは驚きだ。

    副題「絵画が語るヨーロッパ盛衰史」とあるように主題は、あくまでヨーロッパ史だ、スペイン史ではない。
    プラドとプラドの絵画は、ヨーロッパ史を語るための材料にすぎない。
    中丸は、該博な知識とユーモアがプラドを通じて、ヨーロッパ史を開陳する。
    ヨーロッパとは、ある意味皆ハプスプルグの家族たちだった。
    ヨーロッパの主要国家たる、神聖ローマ帝国(ドイツ、オーストリア、ハンガリー、チェコ、オランダ)、スペイン、ポルトガル、つまり、フランス、イギリスと北欧を除くヨーロッパのほとんどは、みんなハプスプルグの王様を戴いていたわけだ。
    それは、戦争による領土獲得という野蛮な手段ではなく、婚姻政策という平和的手段による覇権確立を通して行われた。
    ハプスプルグ家とは、日本で言えば、平安時代の藤原家のようなものだ。
    軍事力は持たない。
    DNA戦略によって、支配権を確立するのだ。
    従って、ヨーロッパとは長らく、同じDNAを持った一族によって支配されていたと言える。
    特に、スペインとオーストリアはDNAの濃い親戚のようなものだった。

    スペイン•ハプスプルグのお抱え画家ベラスケスが、せっせと王女マルガリータの肖像を描いたのは、ハプスプルグ家のお家芸、DNA政策を支援するためだった。
    つまり、スペイン•ハプスプルグ家のDNAを継承するマルガリータを、どこかの大国の王妃とする目的を秘めていたのだ。
    そのマルガリータの肖像を多く有する、スペイン以外の国がある。
    オーストリアだ。
    ベラスケスの描いたマルガリータ像は、お見合い写真(絵画)としてオーストリアに届けられ、遂にはマルガリータは神聖ローマ皇帝の妃となる。
    何のことはない、スペイン•ハプスプルグ家のDNAは、神聖ローマ帝国(オーストリア)ハプスプルグ家のDNAと混じっただけだった。
    こうした同族間のDNA交換によって、ハプスプルグ家は、遺伝的におかしくなっていく。

    プラド美術館には、そのマルガリータを描いたベラスケスの最高傑作「ラス•メニーナス」(宮廷の侍女たち)がある。
    そのあまりに魅力に満ち満ちた、絵画を超える絵画を見る前には、本書と共に、ミシェル•フーコーの「言葉と物」の第一章を読んでおくことが重要だ。
    ピカソが何度も何度も模写し、それでも極め尽くせなかった絵画の魔力の秘密を知ってから見る方が、衝撃力が大きいからだ。

    因みに、マドリッドはバル巡りが楽しい。
    ガンバス(エビ)専門のバルで、白ワインと共にエビの小皿を食べて、シャンピニオン専門のバルで、また白ワインと共に、シャンピニオンのかさの裏側、ひだにたまったオリーブオイルごと二つの爪楊枝を使って頬張ると、これぞ至福の時。
    ベラスケスもこれを食べて名作をものしたに違いないと、ついベラスケスに乾杯してしまうのだ、

  • プラド美術館で『ラス・メニーナス』を目の前にしたとき、涙が出ました。
    ずーっと憧れていた作品。
    他のベラスケスの作品や、彼以外による歴史画宗教画肖像画なども、何度も本で見てきたものなので、感動しました。
    ルーヴルみたいに撮影できないのが、かえって良い思います。

    私がラス・メニーナスを見たとき、スペインの子ども達がおそろいのドリルを持って、説明を聞きながら書き込んでいました。
    そういえばウィーンでも子ども達がクリムトの接吻の塗り絵をしていたんですよね。
    日本だったらどうなんだろう?
    そしてスペインの子ども達の顔は、本っっ当に、ありえないほど可愛く、だからムリーリョやベラスケスの描く子ども達も可愛いのかしら…と思いました。

    さて、この中丸明さんによる『プラド美術館』は、美術の解説ではなく、”スペインの歴史”をプラドの絵画にからめながら、面白おかしく紹介した本です。

    エロいです。
    下品です。
    グロテスクです。

    旧帝大卒の大学教授や、西川和子さん中野京子さん小西章子さんの本ではお目にかかれない内容。
    彼らも本当は知っているのだろうけれど。

  •  本書は王侯貴族やキリスト教とは無縁な一人の日本人が正直にスペイン史、さらにはヨーロッパ史に向き合い、やたら持ち上げたり崇拝することもなく、また逆に不必要に貶めることもなく書き記した西欧社会の解剖所見といえる。
     たんたんとした筆致で、ときに不埒なことやつぶやいたりボヤキを発したりしながら、つねに適度な距離をとる書き手のスタンスがじつによい。

  • 請求記号・706.9/Na
    資料ID・100038409

  • 写真はほとんどない。
    が、どんな絵なのかは実物を見て確認せよ、と考えればむしろこの方が良い。

    絵画を通してスペイン史を概観できる。文章も読みやすい。

  • 立ち読み:2011/6/11

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