- Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106022203
作品紹介・あらすじ
「日本建築とはいったい何か?」。1960年代にキャリアをスタートし、現代にいたるまで、半世紀にわたり世界の建築の最前線で活躍しながら、鋭い切り口の建築/文化批評を行なってきた建築家・磯崎新が、いまあらためて「日本建築」について語りなおす。古代から20世紀までの数多の名建築のなかから自ら選んだ12の「建築遺産」をとりあげ、「垂直の構築」と「水平の構築」という日本建築の二つの流れからその歴史を読みかえる。刺激的でまったくあたらしい、イソザキ流「日本建築史」のはじまりです。
感想・レビュー・書評
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日本建築遺産12選―語りなおし日本建築史 (とんぼの本)
(和書)2013年09月16日 15:28
磯崎 新 新潮社 2011年6月
入門編とあります。シンプルに建築とは何かを問い答えている。いい本でした。
建築家とか批評家とかある。僕が磯崎新さんを知ったのは批評空間という雑誌でした。僕には小難しくて批評空間に書いている柄谷行人以外のメンバーには否定的に見ていました。磯崎新さんにも否定的でした。
僕がどうして柄谷行人を評価したのかは簡単に言うと格差の解消としての平等の哲学があるからです。
平等とはシンプルに言うと天皇の下の同格とか被差別者の上の同格とかそれによる対等な関係とかそういった平等に僕は不満を覚えていました。だってそれは格差を前提にしているではないですか!もし格上、格下、中間層という階級社会があるのなら格差の解消をこそ中間層であるわけで階級社会の揚棄が哲学だと思っています。そういった格差の解消としての哲学は社会主義の理想と言われるものです。
批評家とは格付けを行う人達です。あれがいいとかこれがだめだとかそういって批評家は格差を付ける。では建築家はどうなのだろうか?空間に秩序をつける芸術として建物を創造します。それにはその建築家の批評も重要ですがそこに格差を解消するような哲学を考えることがもっとも重要だと思います。
建築家の至上命令が格差の解消ならそこに哲学があるということです。一流の哲学がそういった格差の解消としての平等の哲学ならそれを考え建築を創造する建築家は一流の建築家であると思います。
磯崎新さんはそういった哲学をもった建築家であると思います。
僕は柄谷行人以外の批評空間のメンバーに否定的でしたがそれも僕の考えが浅かったのだと思います。柄谷行人とそれ以外に格差を付けてよく考えもしていなかった。ただそういった哲学を見出すことも難しいとも思いますから自分の未熟さであり僕はもっとそういった哲学を徹底していけばいいのだと思います。
格差の解消としての哲学と芸術を考えることは興味深くそういった思考に僕はまったくストレスを感じません。これが人間の自然状態(ジャン=ジャック・ルソー)なのだろう。だからストレスが無いのだと思います。
僕が建築を創造するならそういった哲学と芸術を考えて行きたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
20190105読了
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相変わらず磯崎新さんの書く文章は複雑だ!笑
でも、取り上げられている建築やうんちくは結局面白いんだよね! -
建築家の磯崎新が三の丸遺跡から自身が設計した水戸芸術館まで、「構築する」ことに視点をおき、「水平」と「垂直」にポイントを絞って12の建築物について語った一冊だ。
テーマがわかりやすく、興味深い。
建築家の書いた本を読むと建築家って思想家、哲学者みたいな人が多いなあと思うけれど、本作でもそんな風に感じた。ただ「つくる」というだけではなく建築には思想が必要なんだろうか。 -
建築家の磯崎新氏が、現在の日本での特記すべき建築12点について写真とともに語っています。
まず、日本文化の特徴の一つとしてアシンメトリーの美学が紹介されました。
出雲大社の社殿には、形式性の崩れが見られ、そこが新たなバランスを生み出しているそうです。
伊勢神宮の社殿はそれとは違い、中国風の新しいシンメトリーで作られているとのことです。
和洋の建築の違いでまず出されるのが、石の文化と木の文化という点。
ヨーロッパ人が壊れない建物を目指したのに対し、日本人は建物は仮のものでいいと思ってきたふしがあると、著者は話します。
普通、ものを建てるときには、堅固なものを目指すものではないのかと思いますが、氏によると、日本人にとって重要なのは建物自体ではなく、スピリットの継続性の方だったとのこと。
たしかに、上記二つの社の式年遷宮などは、それを体現したものとなっています。
西欧では建築はモノに属しているが、日本では建築をコトとして見ている、出来事としてみているのだという氏の意見が斬新で、でもそう考えるとそれぞれの差異についてがわかりやすく捉えられます。
大きな建築物といったら、頑丈な西洋のものをイメージしますが、ベルリンの旧博物館のファサードが78mなのに対し、三十三間堂は南北120mに伸びると聞いて、驚きました。
ベルリン旧博物館も相当横広ですが、三十三間堂は細長すぎて、全貌が把握できていないところもあります。
木造建築ながらそこまで巨大な堂を創り上げる日本人の技術力でしょう。
秀吉の聚楽第の遺構と言われる、西本願寺の飛雲閣の舟入の間も紹介されていました。
よく時代劇などで登場する、建物内に池がある場所は、床板をスライドさせる仕組みになっており、そこが正式な表玄関だったことが、部屋の屋根が唐破風であることからわかるのだとか。
さすがは稀代の演出家、秀吉。粋なものを作らせたものです。
福島のさざえ堂も紹介されていました。
とても風変わりな建築スタイル。一度は訪れてみたいものです。
「日本では結局、お坊さんがいちばん変わったことしてるのかな」という氏のつぶやきになるほどと納得。
自由な発想が建築に生かされています。
最後に、氏が提出した都庁新庁舎の設計コンペの案が載っていました。
超高層にすべしという応募要項をあえて無視したもので、今の都庁とは全く違う造りに驚きます。
塔が権力的に見えることに拒絶感を持っていたという氏。
依頼側は、そうした効果を求めていたのかもしれません。
磯崎案がもしも採用されていたら、現行のものよりもインパクトはないものの、もっと風通しのよい景観になじんだ都庁ができていただろうと思いました。
軽さと形式崩れを目指していくことに洗練を見出したという日本建築。
掲載された建築物のどれもが、そうした和様スタイルが生かされたものでした。
これからも和風建築を見るときに参考にできそうです。 -
伊勢神宮の式年遷宮に、ヨーロッパと日本の違いを見ます。日本では、重要なのは建築自体ではなく、スピリットの継続性だと。西欧では建築はモノ、日本ではコトだと。しかし建築の多くは、モノとして扱われ、保護運動なども行われたりします。スピリット、コトが継続できずにモノが残ったらどうなるか。
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水平の建物と垂直の建物。年代を問わず紹介されており、面白い。
2012/1/28 -
写真が多くて、面白かったです。
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さすが磯崎さんでした。オリジナルの見解を、(比較的)優しく説明してくれている。
写真は、いつもの「とんぼの本」クオリティ。いいです。 -
語りなおし日本建築史ということで、磯崎さんがやさしい言葉で語っています。
いつもの鹿島出版会のシリーズとは違う感じで、こんなにもわかりやすい文章を書くのかと思い、びっくり!
浴室の中で読み切ってしましました。
日本建築12題について、「和様化」という観点でとりあげている。
すでに有名かどうかよりも、磯崎新の独断で、12題を選んでいる。
垂直性、水平性、内部空間、天井への志向、フリースタイルなどという選ばれ方。
その中でもいくつか行ってみたいと思うものがあった。
・浄土寺浄土堂
正方形平面ので反りがあまりなく、軒先の鼻隠しもシンプル。
モダニズム建築に見えてきた。
・唐招提寺金堂
奈良は、京都より地味だけど建築単体では力強いものが多いそうである。
そういえば、小学校の修学旅行以来訪れていない。
唐招提寺も、有名だけれど修学旅行のコースからははずれがち。
金堂は、パルテノン神殿の列柱を彷彿とさせるけれど、紙面中の比較写真を見ると、
歴然の差で、唐招提寺金堂が美しい!プロポーションが素晴らしい!
・さざえ堂
福島県会津若松市のにある近世に建てられたテーマパーク的な建物。
いちおうお寺のお堂ではあるが、二重螺旋の塔。
グッゲンハイム美術館のようである。