- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106037979
作品紹介・あらすじ
日本語を考えることは、日本人を論じること。知的発見に満ちたロングセラー。日本語が、世界に稀な特徴を持っていることを知っていますか? 日本語を話す人=日本人という事実上の単一言語国家であり、侵略された経験がない日本人は、いかなる言語を育んできたのか。言語社会学の第一人者が、言葉と文化への深い洞察をもとに、日本語観、外国観、そして私たちの自己像を考える。時代を経ても色褪せぬ論考。
感想・レビュー・書評
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言葉を真剣に考察した結果生まれた本だと思った.日本語が不完全で不便であることを多くの事例を挙げて検証しているが、その中で多くの語句が目についた.例えば、「文字は言葉ではなく、ただ単に目に訴えるしるしによって言葉を記録する一つの方法に過ぎない.」 イギリスのブリタニカの本質を、「客観的な知識の集大成ではなくて、実は世界をイギリス人がイギリス人の目で、彼らの価値基準で解釈したもの」と称していた.日本語に人称代名詞が多いことに関して、「日本人は自分がなんであるかという自己同一性の確認を他者を基準にして行う傾向が強い.」 英語を国際補助語としてとらえて、現在学校で教えている英語の不完全さを指摘していた点に共感した.
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凄い本だ。
長年思っていた日本語に関するあらゆる疑念が次々に氷解していく。
日本語は確かに、アルファベット26文字より遥かに多い、いろは48文字が存在し、初等教育の足枷になるとの指摘もある。ただ発音の種類としては、日本語は100種そこそこであるにも関わらず、英語では数千と、言語学者でも合意を見ない程多い。
どちらが習得のハードルとなるであろうか。
本書の前では、いわゆる漢字廃止論者、ローマ字論者の詭弁は全く通用しない。
如何に日本語が表現豊かで、なおかつ簡潔な音で成り立っているかが理解できる。
日本人はなぜ、英語が不得手なのか。
それは、高等大学教育まで、日本語であらゆる知識や概念を習得可能であるため、あえて英語の習得が不要であるからだ。
ある一定程度のレベルの論文が日本語で読める国で、逆に外国語の習得など、時間の無駄なのである。
民族の感性・習慣に最適な言語が、その民族によって創造される。
更にその言語により民族の感性が影響を受ける。
言語と感性には上記のような因果関係の循環性があるように思う。
ただ、本書の4章冒頭の歴史認識に関しては、完全には同意出来ない記述がある。
執筆年代が古い事に起因するのか、もしくは著者があくまでも言語学の研究者であって歴史学の研究者ではないことに起因するのかは、判然としないのであるが。
しかし決してこの事が、本書の価値を損ねるものでは無いことは明確である。
最後に本書より引用。
「日本人の伝統的な伝達が、理解するよりも察知すること、説得よりも感得することに重点が置かれていたのは、結局は同質の相手を前提とし、相手と同質になることに努め、またそれが可能であったという事実に帰着すると思われる。」