国語教科書の闇 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105340

感想・レビュー・書評

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  • 高校の国語教科書の中で『羅生門』、『こころ』、『舞姫』、『山月記』の四作品は「定番小説四天王」と呼べるほど各出版社の教科書に採録され、学習する学年まで見事に固定化されている。金太郎飴のような大いなるワンパターン。

    本書では教科書制作のプロセス、出版社や現場の教員の声、国語教科書の歴史的変遷などが分析されている。ポイントは学習指導要領、少子高齢化とそれに伴う市場の寡占化。出版社もリスクを恐れて新たな作品に手を出しにくくなり、定番小説を入れないと採択されないという都市伝説もあるという。
    戦前とか、以前は漱石、芥川、鷗外いずれももっと他の作品が教科書に載っていたらしい。やっぱり色々と変化があったり種類があると面白いと思うんだけどな。

    最近森鷗外の作品を少しずつ読んでて思うのは、『舞姫』が一番文体として読みにくいということ。他の作品はずいぶん読みやすい。内容も特に女性からは嫌悪感を持たれそうな内容だし、確かに『舞姫』だけを最初に読んだら鷗外嫌いになる可能性は高いと思う。本書の中で述べているように、近代日本の生んだ最高の知識人が高校教科書の『舞姫』一作品のために避けられてしまうのは寂しいしもったいない。筆者は『舞姫』を退場させるべきと言っているけど、あの文体ならではの日本語の美しさがあるのだから、あってもいいと思う。高校生の学力が低下しているとはいっても、そこまで迎合しなくてもいいだろう。鷗外アレルギー対策は必要だろうけど。それにしても十数年前に習った時は『舞姫』はなかった気がするな。

    自分が高校時代に使った教科書のことしか知らなくて、まさかそんなにも各社の教科書が似通っていたとは。全然知らない世界のことがわかって興味深かった。

  • 高校の国語現代文の教科書。100%芥川の「羅生門」が、そして殆どに漱石の「こころ」鷗外の「舞姫」が判で押したように掲載され、定番化している謎を追った一冊。

    教科書問題といえば「歴史」教科書問題であったが、若者の活字離れが叫ばれる今、その原因の一端でありそうな国語の教科書について誰も問題にしていないことが恐ろしくて仕方ない。

    芥川作品の中でも、戦前は一度も採録されたことのない「羅生門」が何故戦後登場し、他を駆逐する勢いで定番に収まったのかという経緯が下手なミステリーを読むより面白い。

    少子化により限られたパイを奪い合う戦いで、どの教科書会社もリスクを冒せないまま、無難な教科書が横並びする現状。

    「羅生門」も「こころ」も「舞姫」も、いずれも名作には違いないが、果たして教科書の教材に相応しいのか。
    これらを読んで更に深くこの作者について知ろう、他の作品を読んでみようと今の高校生が思うのかどうか。

    私にとって本を読むことは人生においてなくてはならないものだが、それは決して国語の授業で培った習慣ではなく、むしろ授業を聞かずに好きな小説を隠れて読み耽ったお陰だと思っている。
    教科書はあくまでも入口だとしても、教師、学生共に興味を持てるものになるよう議論を尽くすべきではないか。

    受験において軽視されがちな現代文。しかし日本人の根幹である国語能力を国として今後どうしていくのか、全く見えないでいる。

  • 教科書問題ですね。

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