- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106106002
作品紹介・あらすじ
イスラム国、反知性主義、ウクライナ危機、集団的自衛権……。不可解な現代世界の「深層」と日本が生き残るための「戦略」を、最強の外交的知性が鮮やかに導き出す。
感想・レビュー・書評
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佐藤優さんと手嶋龍一さんの“世界を読み解く対談集”、第3弾。
相変わらずに2匹の獣がじゃれ合うかのような面白さです。
題材は、ウクライナ、イスラム国、東アジア、集団的自衛権、
そしてまっとうな意味での“愛国心”、な感じで。
興味深かったのは、いわゆる“公開情報”を分析するだけで、
国家が生き抜くための“インテリジェンス”を抽出できるとの点。
そして、右派にも左派にもそれぞれに批判を加えながら、
見失ってはいけないのは愛国心であろうとは、なるほどと。
いずれにせよ、ブレない“軸”を作っていかないとなぁ、と。
ん、「イスラム国」の傍若無人さから始まった今年、
この1年を生き抜くためのヒントがちりばめられているのかな、なんて。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
☆2(付箋9枚/P268→割合3.36%)
・手嶋 彼の経歴を見ると、親欧米派のユシチェンコ政権時代の2005年、半年だけ保安庁長官をやっている。保安庁こそウクライナのインテリジェンス機関の中枢です。
佐藤 ええ、要するにウクライナの秘密警察なのです。従来は旧KGB系のメンバーが主要なポストを占めていました。ところが、トゥルチノフ長官が彼らを全部追い出して、アメリカのCIAと連携を強化すべく、保安庁人事を刷新してしまいました。いわば彼は、現在のウクライナ・インテリジェンスの「中興の祖」。ですから彼はいまでもCIAやイギリスのSISとは関係がいい。こうしたネットワークを背景にしているだけにウクライナではキー・プレイヤーです。
手嶋 ということは、過去はともかく、いまのウクライナの秘密警察は、旧ソ連のKGBとは切れているとみていいんですね。
佐藤 ええ、それに対してモンゴルも含めて中央アジアの秘密警察はみな、今なお旧KGB人脈とつながっている。完全に切れているのはウクライナとバルト三国だけでしょう。
・佐藤 アメリカのNSA(国家安全保障局)がドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴していた―ロシアに亡命したエドワード・スノーデン氏が2013年にこの事実を暴露したことで、ワシントンとベルリンの間柄は随分とギクシャクしました。それが何とか片付いたと思いきや、今度はCIAがドイツの公務員を買収し、国会議員の政治活動の機密を探り、ドイツ軍の戦略情報まで入手していたことが発覚しました。それでCIAのベルリン支局長が国外追放になったのです。ここで注目すべきは、この件でアメリカ人が誰も逮捕されていないことです。ということは、外交特権で守られ、逮捕されない立場の者―つまり大使館員の身分を持つ人間が工作活動に携わっていたんです。
・手嶋 今でも冷戦当時と同じように、「西側陣営」という表現が使われ、アメリカを盟主にイギリス、フランス、イスラエル、そしてドイツや日本がそこに含まれます。とはいえ、インテリジェンス・コミュニティとして「西側陣営」をくくると、それは正確さを欠きます。アメリカとイギリス連邦諸国は、電波・通信の共同傍受を通じて固い絆で結ばれています。対して、ドイツと日本は傍受の基地は提供していますが、その成果の分け前には与っていません。
・佐藤 プーチン大統領は、ドイツのメルケル政権がEU側の制裁強化には難色を示すはずと読んでいた節がうかがえました。
手嶋 ところがメルケル首相はEU加盟国との連携を優先する決断を下してしまった。確かにドイツは、国内で消費する天然ガスの35%をロシアからの輸入に頼っています。しかもドイツ企業はロシアに様々なかたちでビジネスの出先を築き上げており、その投資額はなんと200億ユーロ、三兆円に達しようとしています。1990年代半ばにドイツに特派員として在勤していた私の実感からすれば、現実の独ロ関係は、こうした数字を超えて、切っても切れない絆で結ばれているように思います。
・手嶋 2013年に入ると、終戦前後に北朝鮮地域で死亡した日本人の遺骨収集に関する短信が地方紙を中心に報じられるようになりました。個々の遺骨収集団の北朝鮮訪問は、全国紙が大きく報じるほどニュースバリューはありません。でも、ああ、平壌から関係改善のシグナルが出始めたなと、佐藤さんと分析し、原稿に書いたり、コメントしたりしましたね。2014年5月に発表された「日朝合意」の文書にも、日本人の遺骨収集が盛り込まれていた。われわれの読み筋は間違っていなかったわけですね。
佐藤 実は北朝鮮と日本のように国交がない国同士の外交では、「遺骨」というのは関係改善の明らかなシグナルになるんです。
・佐藤 「情報戦」で重要なポイントは、誰かが事前に重要情報をリークする場合、「こんないいことがあるぞ、こんなことができそうだ」と期待を押し上げる内容であれば、それは成果を潰そうとする操作だとみていい。逆に「これもできない、あれも無理そうだ」と期待を下げるような内容であれば、交渉の成果を引き立たせる操作です。
・佐藤 「将軍は常に昨日の戦争を戦う」という言葉があります。過去に参加した戦いの体験から抜け出せないまま、目の前の戦争を戦ってしまうことを戒めた箴言です。
・手嶋 この名著(外交 上・下)のなかでキッシンジャーは、第一次世界大戦の本質に真っ向から挑み、多角的な分析を試みています。とりわけ、この人の慧眼が光っているのは同盟についての考察です。「第一次世界大戦は各国が同盟条約を破ったからではなく、各国が同盟条約を忠実に守ったために始まったのである」と喝破しています。
・佐藤 じつは、ここで初めて明かすのですが、2002年に私が東京地検特捜部に逮捕され、外務省から休職を命じられていたとき、ロシアやイスラエル、それに韓国などいくつもの国のそ「その筋の人」たちから、「うちで働かないか」とリクルートを受けたんですよ。
手嶋 インテリジェンス・オフィサーとしての誘いだったわけですね。この場合は、ありていに言って、スパイにならないかと誘われたのですね。
佐藤 ええ。驚いたことに、どの国も提示してきた金額がほぼ同じだったんです。
手嶋 インテリジェンスの時価が果たしてどのくらいのものかを知るために、ぜひ具体的な金額を教えてくれますか。
佐藤 うーん、まあ、いいでしょう。家族にも明かしたことがないのですが、年収と経費を含めてしめて5000万円でどうか、というオファーです。じつは、外務省時代も、年収が1000万円、使っていた経費が3000万から4000万円でしたから、要するにこのくらいの金額が、私の「適正価格」だったわけですね。それで三年間ぐらい使ってみて、役に立たなければ用済みにするということでしょう -
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物事には必ず裏がある。表に出ている情報だけを鵜呑みにして、難しい事を考えずにのほほんと過ごす事も可能だが、所詮どこにでもある情報に大した価値はない。その価値を議論していても単なる飲み屋で繰り広げられるような薄っぺらい時間潰しのネタにしかならない。知ってるものが知らなかったかの様に(もしくは本当に知らない)振る舞う人に偉そうに話している内容は、聴きたくもないのに耳に勝手に入ってきてしまう。そんなこと知ってるだろうし、多分聞かされた方も明日の朝には何も覚えてないんだろうなと頭の中で一人突っ込んでると、自分の参加する飲み会も上の空、何かつまらなそうだねとツッコミを受けてしまう。私の悪い癖だ。
情報は様々なソースから拾ってくる事ができる。週刊誌や会話やニュースや、会社の会議に出れば、人が集めて整理して分析した結果になって、多少面倒なプロセスを省略して良情報が入ってくる事もある。そうした情報を各方面から集め、それを何に使うか、目的に照らし合わせ、判断したり決断したりする。情報が無いこと、不足することは判断や決断に重大なミスを及ぼす事もある。会社の投資案件の判断ミスなら一企業の生存に関わる問題で済むだろうが(創業者の努力を無にしてはいけないとは思うが)、これが国家レベルの判断になってくると、国が潰れるわけにはいかないから、より多くの正確な情報が国家の舵取りに必要になることは言うまでも無い。
本書は日本のインテリジェンスを牽引する外務省出身の佐藤優氏と外交ジャーナリストの手嶋龍一氏の対談形式で進む。当時2014年は正にロシアがウクライナからクリミア半島を奪い取った年、そのロシアの戦略とウクライナについて、また最近は力を失い消滅に向かっているものの、当時アメリカが最大のテロ脅威として捉えていたイスラム国の問題、更には日本国憲法に絡む集団的自衛権の抱える課題など、どれも国としての重要な決断や判断が必要な題材を並べて議論する。
表のニュースだけを見ていれば結果だけが頭に入ってきて、明日どうなるか来年どうなるか予測もつかない。それが許されるのは長いものに巻かれて心地よく過ごせる人だけだ。大抵そうした人々も防衛予算確保のための増税には猛烈に反対するのだが、それすらもにわか仕込みのマスコミの受け売りをしているだけだ。そこに自分の考えは入ってるだろうか。無駄遣いを先に無くせというのは「無駄遣いの存在を知っていて、これまで指摘してきたのだろうか」。これは極端な話だが、何も知らない人はそうやってマスコミや大衆に踊らされて生きることになる。
私も楽に生きていたいタイプではある。だが、飲み屋でリラックスするために飲んでいたのに、そうして入ってくるどうでも良い会話を耳が勝手に拾ってしまうから、そこから猛烈な情報収集と自分で考えたくなる。この性格は中々疲れてくるし、万年頭痛を抱えている原因なのかもしれない。
兎に角こうした本を読んでいると、自分の知識の浅さにも今更ながら気づき、考えなければならないと身が引き締まる、そんなきっかけになる。 -
2022/04/24
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ふむ
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半分くらいまで読んだが読了したこととする。この二人の共著は対話形式なので、いくらでも本がだせそうな雰囲気。
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インテリジェンスなんてあまりにも自分の生活に関係ない主題なので、特に感想もなにもないのだが、外交とはこう言う思想でやっていくのかと感心はした。読み物としては面白い。
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相変わらず素晴らしい良書