患者が知らない開業医の本音 (新潮新書 982)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106109829

作品紹介・あらすじ

まさかの脳動脈瘤判明、大学病院で働けなくなった著者に残された道は「開業医」だった。貯金少なめ、経営知識ゼロでどうする? 飛び込むとそこは開業医だけが知る医療のワンダーランド。患者の取り合い、突如やってくる緊急事態、クレーマーとの直接対決、年会費42万円もする医師会加入。「よう、儲かってる?」なんて聞かないで――。医師の実力とは、と問い続けながら日々奮闘する舞台裏を、ユーモアを交えて明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 患者として受診はするけれど、診察している方の開業医さんて、どんなことを考えてどんな暮らしをしているのだろう??とおもって読んでみた本。
    タイトルだけみると「もっと患者さんにもこうしてほしい」とかいう本なのかな…?とドキドキしたけれど、全然そんなことはなく、ほぼ穏やかなエッセイ調の内容だった。

    まず話は著者である小児外科医・松永医師がなぜ開業医となったのか…というところから始まる。
    そして開業までの流れ(土地選び、設計施工、建て貸しという方法等)が書かれていて、あくまでも1例ではあるけれど「クリニックってこんなふうにできるんだ…」と興味津々で読んだ。
    医師というと高収入でお金に困っていない印象が強いけれど、松永医師はクリニック建設時の貯金が200万だったというから驚きだ…(それまでは勤務医をされており、研究や論文発表などにも精力的に活躍されていたそう)

    あくまでも著者の考えではあるが、医師会に入るメリットデメリット、年収やリース代支払い・借入金の返済などのお金の話は裏話的な感じがあっておもしろかった。
    ものすごい金額だったけれど、それを返していけるってやっぱりすごいとおもう…

    受付さんや看護師さんの技能や機転に助けられた話も紹介されていたが、建物や医師だけ立派でも、それを支えてくれるスタッフがいてこそ診療が成り立つことを教えてくれている。
    松永医師は最初「教授スタイル」でスタッフに接していたそうだが、これが大失敗だったそうで、スタッフとの人間関係がうまくいかない覚えのある医師の方は、短いけれどぜひその部分を読んでみてほしい。

    松永医師が大事にされていること、松永クリニックでの診察風景もわかるだけでなく、小児内科医ではなく小児外科医って??と、受診を躊躇している方には、参考になる内容だとおもった。

  • 大学病院の勤務医だった著者が、脳動脈瘤発症で戦線離脱。貯金少なめ、経営知識ゼロだったが、周りの協力で開業。リース会社の担当さんがコンサルタントとしてお膳立てしてくれたという。
    なんにでもプロはいるわけで、問題はいいプロに巡り会えるかどうか。と考えると、人間関係って大事だ。
    開業後のさまざまな問題をフランクに語っていて、興味深い。大学病院をはじめとする医療機関や大学教授たちへのさまざまな思いも垣間見えて、まさに(控えめにしているのだろうけれども)本音トーク。
    自分の腕に対する自信に溢れているが、それはあってもらわねば困るし、それ以上に、「誠実さ」こそ医療の基盤だという姿勢は、患者としてありがたい。

  • 文章うまい!
    そして、誠実なお人柄がにじみ出ている。
    こういう先生に私もぜひ診てもらいたいけど、大人は見ないのね。残念。

    タイトルから下世話な興味で読んでみたけど、ちゃんと私の知りたかったことが予想したよりもしっかりと書いてあった。
    ほんとに開業医の方が勤務医より儲かるの? とか、医師会って何してんのよ? とか、耳鼻科と内科どっちに行くべき?とか(正確には、小児科と耳鼻科どっち?だけど、まあでもめちゃくちゃヒントになった。耳鼻科って…ちょっと…)。

    でも、自分の医者選びの基準は正しかったと分かって良かった。質問したらちゃんと丁寧に答えてくれて、やたら薬出すだけじゃない医者。
    けっこういるよね、質問しても全然まともに答えてくれない医者って。
    あと、たまに抗生物質信者な人がいるが(私の元上司とかがそう)、まさか医者でもそんなのがいるとはビックリした。それは患者の無知がそういう先生を作ってしまったのかもしれないけど。

    私は初診のときは「薬をたくさんもらって満足するタイプではないから、必要以上の薬はほしくない」となるべく伝えるようにしているが(中には伝えるのが難しいタイプもいるのでうまく意思疎通ができるとは限らないのだが)、やっぱり医者によって処方内容はものすごく違ってくるものなんだなぁと怖くなった。
    知識不足じゃなくて本人の人間性が診察や処方に大きく反映してそうで嫌な感じ。まあどんな仕事も人間性が反映しない職業なんてないけれども。

    しかし、白い巨塔は健在なんだなぁ。最初の留学のチャンスが到来した時にそれを許さなかった教授はひどいと思った。本人の将来を思ってではなく、便利だったから、という理由なのが悲し過ぎる(もちろんそれはご本人の見方で真実かどうかは分からないけれど、きっと真実だという気がした)。
    医学部に限らず、大学というのは教授が部下の命運をガッチリ握っていて非常に怖いところだと思う。
    以前、ほんの少しだけ働いた某国立大学の研究室の教授が漫画のキャラのような極悪人で、研究室のメンバー全員をあらゆる手を使って無意味に苦しめていて、私はただの事務方だったので、すぐ逃げ出したが、助教や講師たちその分野でキャリアを築こうとしている人たちは逃げるに逃げられず(よそに行こうとしても学問の世界は狭いので行けない)、本当に気の毒だった。あれはなんとかならんもんなのかね、と心底思う。絶望して死ぬ人がいても全然おかしくない。
    そういう意味では、企業は(その会社がまともであれば)三権分立といかないまでも二権分立で、極悪パワハラ上司に人事部などが介入することができるし、自分でも助けを求められる。そうじゃなくてもよその会社までは権力は及ばないので、逃げ道もあるし、大学よりもずいぶん健全だと思う。

    とにかく、この本の著者を留学させてあげたかったなぁ、と読んでいて私まで悔しく思った。

    P.S. うちのクリニックのスタッフは偶然だけど全員美人!と自慢しているところは大きなマイナスだった。
    それ言わない方が良かったやつよ。
    綺麗な人が多いな、というクリニックはたまにあるが、あんまり好きな雰囲気じゃないところが多い気がする。
    そうじゃなくても、そういうことを自慢する院長ってなんか嫌だと思った。

  • ●基礎の教室はポストの数が少ないし、一旦埋まると何十年も開きません。
    ●開業医。夜の勤務もないし、日曜日も休める。夜中に緊急手術で呼び出されることもない。
    ●建て貸し。大家さんにクリニックを建ててもらい家賃を払って診療する。大丈夫です。開業して失敗した人、見たことありません。
    ●風邪の患者の中に多くの喘息が
    ●会員のうち半分今日は勤務医なので、医師会=開業医と言うのは誤りである。
    ●会費42万円で得るメリット。1番は情報である。毎週のように医療情報がファックスで流れてくる。医師会に加入していると国保が「医師国保」と言うものになる。ありがたい。
    ●近所の内科を受診した。すると待合室の壁に「スタッフに対するセクハラや暴言は警察に通報します」と書かれた紙が貼ってあった。そうか同じような事はどこにでもあるんだ。
    ● Googleの口コミ。そもそも匿名で公開の場で悪口を書くなんて、その人の人間性はどうなんだろうかと思ってしまう。そういう意見が果たして参考になるのだろうか。さらにこのGoogleの口コミを消す業者がいる。
    ● 1日40人患者が来れば、勤務医と同額かそれ以上の収入を得られるらしい。身分は非常に不安定で退職金も出ない。とにかく病気になることが怖い。
    ●診療の中で、発達障害の子供にどう対応するか、小児科医にとって大きな難問である。

  • 年収は勤務医の2~3倍。医者によっては7千万超。自分の時間もたくさんあり、趣味も堪能。お酒も飲める。一方でリース料と借入金の月々の返済は大きな額。看護師、事務員に対する雇用責任も持つ。診療が止まればを犠牲を負うのは自分だけではない。コロナ禍でたたんだ医院も少なくない。よかれあしかれ、開業医は自由度が高い。人生をどう充実させるかは自分次第。クリニックは思ってる以上に個性がある。受診者にとっても病院選びは大切。ホームページをよく見よう。ネットの書き込みよりリアルな口コミ。洗練された患者の目線が医療を育む。

  • 開業医の裏を暴く!とかそういう本ではない。(開業医の「本音」であって「事実」とかではない)
    元千葉大病院の松永正訓先生が開業してから体験・考えた様々なことがまとめられたエッセイといえばいいのか。読みやすい文章でスラスラーっと読んでしまった。

    元々節税本を読んで「開業医めちゃくちゃ税金対策強いらしい」みたいな興味本位で読み始めたのだが、そういった話に留まらない本だった。面白かった。

  • 大学病院在職のトップランナー医師が病を得て、開業医を始めるお話。
    「誠実さ」は医療の基盤。

  • これは良書だった。
    「暴露本」的な印象を与えるタイトルはいただけない。新書というフォーマットがこのタイトルを要求したのだろうが、中身を読んでみれば、ごくまっとうで真摯な“医療エッセイ”である。

    著者は大学病院の勤務医として着実なキャリアを積んできたが、大病をしてその世界から外れ、小児科の開業医に転身。その歩みが綴られている。

    著者の体験を踏まえ、医療業界の舞台裏が語られるが、暴露本的な色合いはまったくない。むしろ、実用書的な側面のほうが強い。

    「実用書的な側面」とは、まず子を持つ親に対するそれだ。子どもの病気・症状についてどう考えればいいかについての有益な情報が、随所にある。

    また、数は少ないだろうが、開業医を目指す人のための実用書にもなり得る。著者の開業経験が赤裸々に綴られているから。

    著者の文章もよい。平明で、キビキビした軽快なリズムがあり、ちりばめられた上品なユーモアにホッコリする。

    それもそのはず、著者はすでに多数の著作を持ち、『運命の子 トリソミー』で「第20回小学館ノンフィクション大賞」も受賞した“作家兼業の医師”なのだ。

  • 東2法経図・6F開架:498.1A/Ma83k//K

  • 小さなお子さんがいたり、お子さんのかかりつけ医を探す上で読んでおく(知っておく)といい情報が多いと思った。

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著者プロフィール

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。
2006年より、「松永クリニック小児科・小児外科」院長。13年、『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』(小学館)で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。19年、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』で第8回日本医学ジャーナリスト協会賞・大賞を受賞。
著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)、『いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき』(中央公論新社)、『小児科医が伝える オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)、『発達障害 最初の一歩』(中央公論新社)などがある。 

「2020年 『どんじり医』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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