新潮世界文学 28 ジッド 1

著者 : ジッド 三輪秀彦

• 新潮社 (1970年8月1日発売)

感想・レビュー・書評

[chokusunaさんの感想 · 2015年9月21日]

絶望しきって死ぬために今を熱狂して生きろ、つながり。「地の糧」のみざっと読了。/ナタナエル、君に情熱を教えよう。平和な日を送るよりは、悲痛な日を送ることだ。私は死の眠り以外の休息を願わない。（略）私の心中で待ち望んでいたものをことごとくこの世で表現したうえで、満足して-あるいはまったく絶望しきって死にたいものだ。p.174/ナタナエル、君の内にあっておよそ期待とは欲望ではなく、ただ単にそれを迎える心構えであってほしい。君のところに来るものはすべてこれを期待するがよい。だが来ないものを望んではならない。持っているものだけを望みたまえ。p.179/ナタナエル、過ぎし日の水をもう一度味わおうと望んではならぬ。ナタナエル、未来のうちに過去を再現しようと努めてはならぬ。各瞬間ごとに類なき新しさをつかみたまえ。そして君の喜びを準備してはならない。p.184/ナタナエル、君に情熱を教えたい。ナタナエル、君に似ているものの傍に止まってはならぬ。けっして止まってはならない。ナタナエル、周囲が一度君に似通ったら、また君が周囲に同化したと気づいたら、君にとって得になるものはもう失われているのだ。p.188/だが素晴らしい眠りなどはありはしない、そして私は夢もそれが現実だと思わぬかぎり、好きではない。なぜなら、いかに美しい眠りとても価値がない、目覚めている瞬間に比べては。p.233/真昼時、アルジェの街道は茴香酒とアブサントの匂いが立ちこめる。ビスクラのモール人のカフェでは、客はただコーヒーとレモネードとお茶だけしか飲まぬ。アラビア茶、胡椒のきいた甘味。生姜。これよりもっと強く、もっと烈しい--それでいて味のない、東洋のお茶を思い起こさせる飲みもの。-茶碗の底まで飲み干すことはとうていできない。p.245/他人が君同様に立派になしとげることを、君はしてはならない。他人が君同様に立派に言えることを、君が言ってはならない。君同様に立派に書けるものを、君は書いてはならない。-君自身の裸以外どこにもないと感じるものだけに執着したまえ。辛抱強く、でなければ気ぜわしくでもよい。ああ、生きとし生けるものの中で、置き換えのきかぬものを、身をもって創造したまえ。p.256

[hu-tarouさんの感想 · 2015年5月24日]

この巻では、同氏の作品のうち「アンドレ・ワルテルの手記」「パリュード」「地の糧」「背徳者」「狭き門」「イザベル」「法王庁の抜け穴」が収録されています。
　どれも良い作品です。