- Amazon.co.jp ・本 (676ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120036217
作品紹介・あらすじ
人はなぜ人を殺すのか。河内音頭のスタンダードナンバー"河内十人斬り"をモチーフに、町田康が永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。
感想・レビュー・書評
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読んで20年以上経つが、コロナ明けのどこかのまちで河内音頭を聞いた瞬間、内容、というより本の熱量を鮮やかに思い出した。もう一度読んでももうハマれないけど、一度ハマって、良かった。
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町田節の真骨頂。
史実を元にして、一人の男の脳内を描ききる。
独特の言い回し、粗野な世界観に脳内がぐるぐるする。
全く知らない、想像もできない、他人の頭の中を覗き見た気持ち。 -
うわぁ、なんという怪書。思弁のかたまり。頭の中で思っていることと出てくる言葉がうまく一致させられないもどかしさ。
作者の言い回しがツボって何度も笑った。 -
これはすごい。河内十人斬りの犯人、熊太郎が主人公。熊太郎の考えがあーだこーだあーだこーだとだらだら垂れ流しで書かれていて、しかも河内弁で読みにくく、ついつい読み飛ばしてしまったが、そこも含めて面白かった。熊太郎、抜けているというか、あほというか。弥太郎がかわいそう。他の人とは違って、自分は思考をそのまま言葉にできない、と熊太郎は常々感じていたけど、人って多かれ少なかれ誰もがそうなのではないかな。最期に思考と言葉が一致「あかんかった」ほんま、それ。
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「自分の思想と言語が合一するとき自分は滅亡する」
人間のほとんどが自分の本心を上手く器用に隠してきれいに整えて言葉に表し、それで人付き合いをしている。しかもそれを無意識のうちに。
主人公の熊太郎がそれができなくて苦悩し、自分の本心と向かい合い、突き詰めていった最期の時に思ったこと……。
この苦悩をぜーーーんぶ、文章で表現した町田さんはすごい。
すごいなんて言葉じゃ薄いな。すいません。
本当に自分にとって重く深いテーマであるが、要所要所に笑いのツボをついてくる描写が多いのも最高。笑える!
人生で一番の本に出会ってしまった。 -
河内十人斬りという実際に起こった事件をもとに、主人公の熊太郎の心情を描いている。
自分の中にある気持ちをうまく言語化できない熊太郎がだんだんと社会からはじかれていくさまが、事実そのようなことがありそうだと思わせる。
自分の気持ちをわかってもらえないだろうという絶望は人をやけっぱちな気持ちにさせるのかもしれない。また、自分の気持ちがうまく言語化できないということは往々にしてあることで、熊太郎ほどではないにしても、口にした途端それが嘘であるかのような薄寒い気になるのは誰でもあることなのではないだろうか。
自分の気持ちを言語化できない、してもわかってもらえない、言葉の通じなさを感じる者達がドロップアウトしていく者達の共通項とは言わないまでも、そういう感覚を持つ者が一定数いるのではないか、そしてそれを押し殺しつつ生きている者もいるのではないか、それを無視して生きる、無視して生きることに慣れきってしまっているのではないか、などと深く考えさせられてしまう。 -
勢い的にはピカレスク小説。「河内十人斬り」の浪曲が元ネタ。木戸熊太郎の思弁的な思考ゆえの哀しい話。作者は熊太郎の思弁をページにスペースなしに語らせているのだが、これが読んでて面倒くさい。
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感想が書きづらい本。
ページ数は半端ないが、先が気になって仕方が無くなる。
熊太郎の破滅的な顛末を想像すると読み進めていくのが
躊躇させられる…が止められない。
江戸初期設定だが、現代の社会現象を交えた表現が
時代の枠組みを超えていて終始飽きさせない。
熊太郎の考えや思いがストレートに言葉では表せず、
その為にトンチンカンな発言で人とのコミュニケーションが上手くいかないという破滅へ向かう一原因の性分は
一歩間違えば誰にでもあることで、切なくなる。
自分を変えていこうとする努力も結局実らず
関わった人を憎悪するという最悪の循環で自分を表現するしか
なくなってしまった。
読み終わった後は虚脱する。