デンジャラス

著者 :
  • 中央公論新社
3.50
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本棚登録 : 374
レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120049859

感想・レビュー・書評

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  • 谷崎潤一郎の家庭をモデルに、文豪がモデルとして必要とする女たちの葛藤を描きます。
    「細雪」のヒロイン・雪子のモデルだった重子が主人公。

    谷崎の3人目の妻・松子は現れるだけで場が華やぐような女性。
    その妹の重子はそれほど目立たないが、小説「細雪」での「雪子」は4姉妹の中で一番大人しいが芯のある、引き込まれるような魅力のある女性として描かれていました。
    重子は自分をそんなふうに見てくれた義兄に感謝し、惹かれるものがあったのです。

    谷崎は、身近にいる女性との交流の中でモデルを見つけ、作品に昇華していく。
    崇めるように愛した妻の松子のことはもちろん、若い女中たちも可愛がり、深い仲というわけではないが何かとお喋りしたり物を買ってやったりしていた。
    その反面、好みに沿わない人物は次第に自分の生活から押し出してしまう。そんな冷酷さにも重子は気づいていました。

    「細雪」では、婚期の遅れた「雪子」がやっといい相手を見つけ、旅立つ所で終わります。
    夫の家柄がいいというのは同じですが、現実の重子の結婚は実はあまりうまく行かなかったよう。
    しぶしぶ結婚した相手になにか不満ができると姉夫婦の家に舞い戻り、ここでの生活が一番幸せだと感じます。子供の頃から慣れている習慣や行事なども姉妹で出来るし、女性に優しい谷崎がリードする、かなり優雅な生活ですからね。

    しかし、重子がキッチンドリンカーになってしまうとは。
    しかも、谷崎がそんな重子にも興味を持ち、かなり気に入っていた様子なのがまたなんとも‥
    重子が養子にとった跡取り息子の嫁・千萬子は若くて物怖じしない、小説にも流行にも詳しい女性。若い世代の動向を知りたい谷崎の気持ちを掴み、すっかりお気に入りとなります。
    姉の松子とともに、苦々しくそれを眺める重子。
    完全に負けたかと思われましたが‥
    意外な勝ちポイントを掴むことに。
    このあたりは創作なのでしょう‥か?

    谷崎がイメージして作り上げたやや歪んだ麗しい環境で、意識し合う女たち。
    綾なす世界の層の厚さ、危うさ、妖しさ。
    谷崎作品を全部読んでいるわけじゃありませんが~
    「細雪」は大のお気に入りの小説なので、満足の行く読み応えでした。

  • 小説を書くためならば、息子の嫁でさえも
    愛せる男・・・さすが、谷崎潤一郎。
    現実と小説の境目をわざと曖昧にすることで
    人々のさらなる関心と興味を集めていた谷崎作品は
    最も身近にいる女性たちに
    深い喜びと嫉妬をもたらしていたのですね。
    細雪のモデルになった重子さんの誇りと恥辱の間を揺れ動く心に魅入られてしまいました。
    今度は千萬子さんサイドから見た
    谷崎とその女たちの物語を読んでみたいと思う。

  • 作家、谷崎潤一郎とその周辺の人々について、彼の義妹(奥さんの妹)重子の目線で描いた物語。
    その妹というのが代表作「細雪」の4姉妹で重要な役割を果たしている女性のモデルとなっていて、谷崎潤一郎の妻も同じくあの4姉妹の長姉として描かれている。
    彼女たちはそれを自身の矜持としているが、不思議とお互い敵対はしていない。
    むしろ、お互い上手に支え合っている。
    そんな中、重子の養子の嫁という共通の敵が現れる。
    現代的ではっきりとものを言う、お嬢様育ちのその娘を谷崎は気に入り、それから長い事、二人は精神的に結びつき、姉妹を苦しめることとなる。

    久々に物語の中に入って読むことができた。
    これと言って衝撃的なことが書いてあるとか、文章が派手だとかそういう事はないのに、何故かぐいぐいと引き込まれる。
    静かに興味を惹かれる内容と文章だった。
    さすがな筆力だと思う。
    実際の人物を描く話というのは全く面白味のない、ただあった事だけをつらつら書くというのがあるけど、この話は中には創作もあるのかもな・・・と思わせるものが私にとっては面白かった。

    谷崎潤一郎の本は一冊しか読んだことがないけど、どちらかというと妖しげな女性の世界を描いてる美しい文学というイメージがあって、それがこういう環境の中で生まれたのだな・・・と思うのも興味深かった。
    この話では谷崎潤一郎を中心とした人間関係を描いているけど、それでも彼は脇役の一人で彼の生い立ちだとか、詳しくその人となりにこれには描かれてないのに、十分とどういう人だったのか、その言葉遣い、している事から伝わってきた。

    私はこれを読んでいて途中から自分の矜持、自信といったものを人に頼るのは危険だな・・・と思った。
    この物語ではそうした姉妹が最後にはある意味勝つ訳だけど、それも一歩違えば敗者になっていたという危うさがある。
    他人に自分のよりどころとするものを求めるのは常にその人次第になるため危うい。
    不安で不安定な状態になる。
    この物語で印象的だったのは主人公の重子とその姪とのやりとりの場面。
    重子は常に控えめで、自己主張をしない姪をはがゆく思っている。
    と言うのも、姪は谷崎の実の子供ではなく連れ子で、本人もそれを自覚しているため、いつも遠慮をしている。
    だけど、彼女はそこから離れて何とか自立できないか、模索している。
    その様子と常に姉や義理の兄に頼り生きている主人公の姿が対照的。
    それで言えば、最初は谷崎潤一郎の心を奪う嫁の千萬子という女性も見た目は自立した現代的女性かと思いきや、意外と谷崎に頼られ頼っている。
    千萬子は陽で、姪は陰と重子は思っていたかもしれないけど実は反対ではなかったのかな・・・と思う。
    そのあたりも面白かった。

    作中に姉妹が口にする京都弁もどことなく妖しげである意味嫌らしさを醸し出しているのも良かった。

  • 谷崎潤一郎の妻松子の妹重子の目線で書かれている、谷崎家の妖しくもデンジャラスな暮らし。
    こういう作家の暮らしぶりの小説を読みたかったのです。
    しかも谷崎潤一郎なんて、まさにうってつけ。
    「細雪」は実はまだ読んでいなかったから、読む前にこちらを読んで良かったかも。

  • 谷崎潤一郎を頂点とした、過程の中の王国とそこに生きる女性たちがねっとりとした筆致で描かれています。

    閉鎖的な環境下で彼女たちが抱く、嫉妬や羨望、優越感に焦燥…といった感情が読み手にリアルに伝わってきて、恐ろしいのについ読み進めてしまう。ラストシーンにはゾッとしました。

    過激な言葉は使われていないのに、こんなにも心を抉るのかと、桐野さんの文体に感動しました。

  • 谷崎潤一郎と彼を囲む女たちの話。
    小説のモデルとなったとも言われている
    妻や妹、息子の嫁、女中らなど
    女が彼の創作の源だった。
    女たちから見た谷崎は
    さぞかし憎らしかっただろうが
    だからこそ愛しかったのだろう。
    読み終わって謝辞を見てびっくり、ちまこさんご存命…

  • 谷崎潤一郎の実生活を『細雪』のモデルとなった重子の視点で描いた小説。時代背景がピンとこなくてあまり入り込めなかったけど桐野夏生さんの本なのでやはり読みやすかったです。

  •  思っていたような『デンジャラス』ではなかった。もっと肉体的にもドロドロした感じになるのかと思ったが、肉体的なドロドロは皆無。でも、より心理的な妖しさは強く感じられた。

    内容は、かの文豪、谷崎潤一郎の物語。と言っても、語り手が妻の妹であるので、妹の重子の目を通した谷崎潤一郎にまつわる人物たちの物語となっている。
    途中からは桐野夏生ではなく、実際に重子が描いているのではないか?と錯覚しながら読んだ。

    内容的にはそれほど面白いものではないが、女の欲であったり嫉妬であったりが実に巧みに描かれた作品。谷崎潤一郎の本を読んでみたくなった。

  • 谷崎潤一郎の3度目の妻・松子の妹、重子視点での晩年の谷崎一家。自由闊達な嫁・千萬子にやられっ放しで面白くない…と思ってたら、まさかまさかの大逆転。何と言うか、山田詠美もビックリな。
    とは言え、桐野ほどの御大が、今更「谷崎潤一郎」ネームに頼らなくてもの感はある。
    千萬子の娘・のゆりちゃんって可愛い名前やなあと思ったら、本名はたをり。こっちも可愛い。
    あと、何でこのタイトルなんだろ。センスないわ〜。

    • ひとしさん
      こんにちは!
      なーさんのこきおろしっぷり、いいですねぇ(笑)
      こんにちは!
      なーさんのこきおろしっぷり、いいですねぇ(笑)
      2018/03/10
    • なーさん
      あは、すんません、つい…
      あは、すんません、つい…
      2018/06/04
  • 谷崎潤一郎の生涯の話だったからか、最初から最後の一行を決めていたんだろうな。最近の桐野夏生さんにしては、最初から最後まで淡々と同じ調子で書いていて、怖さがずーっと続いて、最後の一行のオチに繋がっていた。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、2011年同作で読売文学賞を受賞。2015年、紫綬褒章を受章した。近著に』『奴隷小説』『抱く女』『バラカ』など。

「2016年 『猿の見る夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桐野夏生の作品

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