デンジャラス

著者 : 桐野夏生
  • 中央公論新社 (2017年6月7日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120049859

デンジャラスの感想・レビュー・書評

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  • 作家、谷崎潤一郎とその周辺の人々について、彼の義妹(奥さんの妹)重子の目線で描いた物語。
    その妹というのが代表作「細雪」の4姉妹で重要な役割を果たしている女性のモデルとなっていて、谷崎潤一郎の妻も同じくあの4姉妹の長姉として描かれている。
    彼女たちはそれを自身の矜持としているが、不思議とお互い敵対はしていない。
    むしろ、お互い上手に支え合っている。
    そんな中、重子の養子の嫁という共通の敵が現れる。
    現代的ではっきりとものを言う、お嬢様育ちのその娘を谷崎は気に入り、それから長い事、二人は精神的に結びつき、姉妹を苦しめることとなる。

    久々に物語の中に入って読むことができた。
    これと言って衝撃的なことが書いてあるとか、文章が派手だとかそういう事はないのに、何故かぐいぐいと引き込まれる。
    静かに興味を惹かれる内容と文章だった。
    さすがな筆力だと思う。
    実際の人物を描く話というのは全く面白味のない、ただあった事だけをつらつら書くというのがあるけど、この話は中には創作もあるのかもな・・・と思わせるものが私にとっては面白かった。

    谷崎潤一郎の本は一冊しか読んだことがないけど、どちらかというと妖しげな女性の世界を描いてる美しい文学というイメージがあって、それがこういう環境の中で生まれたのだな・・・と思うのも興味深かった。
    この話では谷崎潤一郎を中心とした人間関係を描いているけど、それでも彼は脇役の一人で彼の生い立ちだとか、詳しくその人となりにこれには描かれてないのに、十分とどういう人だったのか、その言葉遣い、している事から伝わってきた。

    私はこれを読んでいて途中から自分の矜持、自信といったものを人に頼るのは危険だな・・・と思った。
    この物語ではそうした姉妹が最後にはある意味勝つ訳だけど、それも一歩違えば敗者になっていたという危うさがある。
    他人に自分のよりどころとするものを求めるのは常にその人次第になるため危うい。
    不安で不安定な状態になる。
    この物語で印象的だったのは主人公の重子とその姪とのやりとりの場面。
    重子は常に控えめで、自己主張をしない姪をはがゆく思っている。
    と言うのも、姪は谷崎の実の子供ではなく連れ子で、本人もそれを自覚しているため、いつも遠慮をしている。
    だけど、彼女はそこから離れて何とか自立できないか、模索している。
    その様子と常に姉や義理の兄に頼り生きている主人公の姿が対照的。
    それで言えば、最初は谷崎潤一郎の心を奪う嫁の千萬子という女性も見た目は自立した現代的女性かと思いきや、意外と谷崎に頼られ頼っている。
    千萬子は陽で、姪は陰と重子は思っていたかもしれないけど実は反対ではなかったのかな・・・と思う。
    そのあたりも面白かった。

    作中に姉妹が口にする京都弁もどことなく妖しげである意味嫌らしさを醸し出しているのも良かった。

  • 谷崎潤一郎の妻松子の妹重子の目線で書かれている、谷崎家の妖しくもデンジャラスな暮らし。
    こういう作家の暮らしぶりの小説を読みたかったのです。
    しかも谷崎潤一郎なんて、まさにうってつけ。
    「細雪」は実はまだ読んでいなかったから、読む前にこちらを読んで良かったかも。

  • 谷崎潤一郎を頂点とした、過程の中の王国とそこに生きる女性たちがねっとりとした筆致で描かれています。

    閉鎖的な環境下で彼女たちが抱く、嫉妬や羨望、優越感に焦燥…といった感情が読み手にリアルに伝わってきて、恐ろしいのについ読み進めてしまう。ラストシーンにはゾッとしました。

    過激な言葉は使われていないのに、こんなにも心を抉るのかと、桐野さんの文体に感動しました。

  • 小説を書くためならば、息子の嫁でさえも
    愛せる男・・・さすが、谷崎潤一郎。
    現実と小説の境目をわざと曖昧にすることで
    人々のさらなる関心と興味を集めていた谷崎作品は
    最も身近にいる女性たちに
    深い喜びと嫉妬をもたらしていたのですね。
    細雪のモデルになった重子さんの誇りと恥辱の間を揺れ動く心に魅入られてしまいました。
    今度は千萬子さんサイドから見た
    谷崎とその女たちの物語を読んでみたいと思う。

  •  思っていたような『デンジャラス』ではなかった。もっと肉体的にもドロドロした感じになるのかと思ったが、肉体的なドロドロは皆無。でも、より心理的な妖しさは強く感じられた。

    内容は、かの文豪、谷崎潤一郎の物語。と言っても、語り手が妻の妹であるので、妹の重子の目を通した谷崎潤一郎にまつわる人物たちの物語となっている。
    途中からは桐野夏生ではなく、実際に重子が描いているのではないか?と錯覚しながら読んだ。

    内容的にはそれほど面白いものではないが、女の欲であったり嫉妬であったりが実に巧みに描かれた作品。谷崎潤一郎の本を読んでみたくなった。

  • 谷崎潤一郎と彼を囲む女たちの話。
    小説のモデルとなったとも言われている
    妻や妹、息子の嫁、女中らなど
    女が彼の創作の源だった。
    女たちから見た谷崎は
    さぞかし憎らしかっただろうが
    だからこそ愛しかったのだろう。
    読み終わって謝辞を見てびっくり、ちまこさんご存命…

  • 重子が まさかのアル中
    夜中に台所で盗み酒したり
    飲んでないと嘘をついたり
    その酔態っぷりは 意外な感じで
    読んでいて苦しくなります
    最後まで どうなるのかどきどきするんですが
    まさかの ちょっと意外な終わり方
    谷崎の台詞は しっくりきます
    言いそう!!

  • 谷崎潤一郎のことは、文学史で名前だけ知っている程度だった。作品についても、タイトルとあらすじのみ知っている程度で。

    この本を読んで、谷崎潤一郎に興味を持った。作品は重子の視点で描かれているが、共感できないまま終わった。結局、重子は谷崎に愛されたかったのだろう。嫁の千萬子のことを目の敵にしているが、谷崎の愛を横取りされたのが気に入らなかったのだろう。それを、「姉がかわいそう」という名目で谷崎に説教する姿に違和感を覚えた。

  • 文豪・谷崎潤一郎の三番目の妻・松子と妹・重子たち4姉妹は「細雪」のモデルとされている。要らない者、邪魔者を上手く押し出して排除する…そんな潤一郎を頂点とする家族王国で松子の息子の嫁・千萬子を気に入っている潤一郎の様子に重子はー

    ◆「これ、どこまでホントなんだ」と気になってはwikiってネタバレしそうで本編に戻る、を繰り返した本は久しぶり!名前を微妙に変えてたって、これはまんまその人のことやろ?ええのか?ここまで書いてええのんかいっ!て、しかも謝辞があるてことは本人からのオッケー出てんのかよッッ

    そりゃ-デンジャラス…。てか、当事者みんな亡くなってんだから死人に口なし、いいように操作しても「小説」という名の「芸術」っていう「そらごと」ですもんね。ひゃ-…。

    作中何度となく重子に【「そらごと」でも、どこか本質をとらまえている部分が、モデルにされた人間の魂を傷付けるのです。それに耐えられなければ、小説家になど近付いてはいけないのかもしれません。】【私たちは作家の妻と、妻の妹ですから、本当にあったことをそのまま書くのが小説だ、などと微塵も思ってはいません。】と言わせながら千萬子に言及、しかもやり返されてる…。千萬子がこのまんまの人だとしたら重子の苛立ちもまぁわかるけど「自分の立ち位置」脅かされた嫉妬でしかないから他人事として見てると大人げない( *^艸^)ププって感じ…。でも谷崎の書簡集は実在するわけで…どんなやり取りがあったんだろう、彼女をモデルにした話って…谷崎潤一郎の晩年てホントにこんなだったのかな…ザワザワ…(^ω^;);););)

    それも、そんな昔のことじゃないじゃないか。ちょっと、作品追っかけてみたくなった

  • 一気読み‼
    谷崎の本を納戸から引っ張り出して読みたくなりました。後千万子との書簡も!
    重子を語り手に谷崎の家庭とその家族が書かれている。細雪のイメージを誇りに誰よりも谷崎の愛とか感心をひこうとしながら若い嫁に奪われ以後は酒に溺れながら姉の味方として二人を監視する。
    全体に文章の淡々さが逆に怖い。

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