代理母、はじめました (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.32
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120053924

作品紹介・あらすじ

底辺女子が人生逆転!? 不遇な家庭に育った17才のユキが、子供を持ちたい人々と貧困女性を救う〝代理母ビジネス〟の賭けに出る。



義父の策略で、違法な代理母出産をさせられた17才のユキ。命がけで出産したにもかかわらず、報酬はすべて義父の手に。再び代理母をさせ稼ごうとする義父の手から逃げだし、ユキは自らの経験を逆手に取り、自分のような貧しい女性を救う大胆な〈代理母ビジネス〉を思いつく。ユキを支えるのは医師の静子&芽衣子のタッグと、ゲイのミチオ&一路。さまざまな事情を抱えた「子どもを持ちたい」人々が、最後の砦としてユキたちを頼ってやってくるが……日本の生殖医療の闇、貧困層の増大、妊娠・出産をめぐる負担など、現代日本が放置した社会問題を明るみにしながら、「代理母」ビジネスのタブーに切り込んだ問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 近未来の日本を舞台にした、貧困と女性、LGBT と生殖医療の話。盛りだくさんだ。
    貧富の差が広がり世界的にも没落している日本。そんな中でも、相変わらず女性の地位は低い。それでも負けない女性たちが悩みながらも立ち上がっていく。
    垣谷さんの本は女性の地位向上を描いてあるというか、女性がたくましく生きていく姿を描いている物が多く、大好きな作家さんです。

  • 『代理母、はじめました☆☆』って軽いタイトルとは裏腹に、ヘビーな内容だった。
    タイトルの軽い感じから、代理で子供を育てるあったかい話かな、と思っていたら、代理出産のことだった。あったかくはない。

    2040年、地震や噴火などのため主要機関が長野など内陸部に移転し、廃墟と化した東京が舞台。

    大金が稼げると義父にそそのかされて、初産で代理母を経験させられた16歳のユキ。
    女性だからと医学部受験で弾かれた経験をもち、男性優位社会に心底辟易し、なんとしてでも女性を守ると強く決意している産婦人科医の芽衣子。
    この2人の視点が交互に描かれる。

    ユキは、貧乏生活から絶対にのし上がってやるという強い決意で、家を出てゲイのミチオとまさかの代理母ビジネスを始める。
    芽衣子は価値観の合わないジーサン院長の病院を退職し、代理出産を希望する女性に寄り添う女院長のもとに転職する。

    現代の日本の格差社会やおかしな親子制度を絶妙に皮肉っていた。
    それにしても未婚で出産を希望する女性ってそんなに多いんだろうか。ましてや子どもが嫌いなのに子供を持ちたいという人までいる。
    「子どもがいてこそ女性は一人前」という価値観はとっくに古いとは確かに思う。

    代理出産をお願いする人の側の気持ちも、代理母になる人の側の気持ちも、共感できる部分はあったが、どうして代理母で嫌な経験をしたはずのユキが代理母斡旋ビジネスに積極的になったのかは最後までいまいち共感できなかった。
    ユキが多言語を理解でき、覚えたことは決して忘れない「ギフテッド」という特殊な才能の持ち主であるという設定も、ただ物覚えがいいぐらいで、活かしきれていない感があった。

    いくら稼げる仕事といわれても、女性は産む機械じゃない。貧困女性を狙ったビジネスだとしか思えなかった…

    この表紙とタイトルから、もっとあったかい話だと思ってたなあ。

  • 今から20年後くらいのお話。
    富士山が噴火して...
    格差社会
    女性の社会進出。
    本当にこんな世界が来そうで怖くなりましたが引き込まれて一気読み。
    垣谷さんの小説は、想像と現実がわからなくなり読み終わった後すごく考えさせられます。

  • 垣谷美雨さんの小説は8冊目。
    タイトルそのままのわかりやすいテーマがあり
    中には実際に起こるいろいろな問題がちりばめられていて
    「そうそう!」と、時に笑いながら読みます。

    この本が今までと違うのは、20年後ということ。
    だから今起こっている問題がさらに進んでいるというか
    デフォルメしている感じ。

    それで「代理母」は今どうなっているのか?
    調べてみたら、日本ではできず
    裕福な人がアメリカやロシアに行って実現できるとのこと。
    戸籍では特別養子縁組になります。

    そしてそんなにまで子供の欲しい人の発言と
    産婦人科医倉持芽衣子の感想は次のようなもの。

    〈「学生時代の友人たちにはみんな子供がいます。同窓会でも言われたんです。『麗子は子供がいなくて自由でいいわね』って。」
    友人の言う通りではないか。なぜ、そんなにつらそうに顔を歪めるのか。
    「卒業後もずっと一生友だちでいられると思っていたのに、あんなにきつい皮肉を言うなんて」
    皮肉じゃなくて本心ではないのか。子供がいなければ自分の人生を自由に生きることができる。経済的にも段違いに楽だし、仕事に邁進したり、趣味や旅行を楽しめる。それに比べて、子持ちとなれば、お金や自由時間がなくなるだけでなく、やれ学校でイジメに遭っただの、成績が悪くて進学できないだの、名もない大学だから就職できないだの、派遣社員だと嫁が見つからないなどと、何歳になっても心労が尽きない事例は人生相談を読んでいれば山ほどでてくる。(中略)
    ―子供は諦めて、自分の人生を楽しく生きるという選択もありますよ。あなたの服装や雰囲気からして裕福そうだし、私も現に自分一人の人生を選んでいます。
    そう言いたいのを私はぐっと我慢していた。〉

    「代理母」というビジネスは確かに合理的と思います。
    合理的、私は好きです。
    でもそれを養子縁組に適用するのは、どうかなと思います。

    特別養子縁組で養子になった女性の相談を、
    テレフォン人生相談できいたことがあります。
    中学生位まで普通の親子だと思っていた。
    それからも問題なく暮らしていた。
    その後自分の産んだ子供について養親が口出ししてくるのが嫌になって離縁した。
    今彼女は30代で、最近養親の姿を久しぶりに見た。
    養父が養母の車椅子を押していた。
    自分はこのままでいいのか。
    そんな内容だったと思います。

    特別養子縁組で養子になった人の本音をきくのは初めてだったし、
    人生相談に登場する人には、しばしば悪人がいるのに
    この相談では優しい人ばかりで。
    すごく切ない気持ちになりました。

    日本で今「代理母」が認められていないのは
    私の知らない様々な理由があるのでしょう。
    死刑賛成、安楽死賛成の私の性格では「とても良いと思う」と言いそうですが
    いや、やはりそんな単純なのものでは…反対かも。

  • 富士山噴火や地震などの災害や、男尊女卑や貧困などの格差社会や差別のこと、LGBTQのこと、血の繋がりは大切なのかということ…

    テーマが盛りだくさんすぎて、結局何を伝えたかったのか最後までよく分かりませんでした。代理母をする女性が増えるためには、上記のことが必要なのかもしれないけど、それにしても多すぎる。

    私も祥子のように、主人公が代理母をやらされて嫌な気持ちになったのに、お金儲けのために代理母の事業するのは違うんじゃないかと思った。いくら代理母をする女性に寄り添うといっても、リスクはつきものだし、主人公のように嫌な気持ちになる人もいるんじゃないかな。そこが終始もやもやしてしまいました。

    最後も急にハッピーエンドになって、お金や仕事さえあれば幸せになれるってこと?うーん…となってしまった。私には合わなかったかも。でも代理母のことを知識としてたくさん知れたのは良かったです。

  • 表紙の絵のイメージとは違った、近未来を舞台とした重めの内容だった。
    終盤は急に完結に向かっていった感じが否めない。

  • 近未来の日本の姿に不安が増しました。少子化は最近ではなくずっと昔から始まっており、特効薬もないまま、相変わらず女性ばかりが生きづらい世の中になってしまうのでしょうか。

  • やはり、今回の作品も面白かった!
    今までの垣谷さんの作品は、現実的で、誰しも一度は直面するであろう、親の介護や定年後の生活...etc等の問題をとりあげ、すごく勉強になったというか視野が広がったというか。。。

    だけど、今回の作品は近未来来な日本の行く末を描いた、SF作品ぽいがやはり現実的で、『日本も、こうなっていきそうだな〜』と、少し動揺した。
    今まで代理母なんてあまり考えたことがなかったので、それほど日本では馴染みがないということなんだよなぁと思ったり。

    近い将来、代理母がステータスになる時代がくるのかなぁ。仕事でのキャリアを失いたくないなら、結婚して夫婦で子供を育てるという時代が来なくなるかもしれないということに納得。

  • この著者から、表紙絵から、ホームコメディタッチの話しかな
    て思っていた
    大違い
    2040年の廃墟の東京
    えらいことになっている
    女性差別、人種差別
    現在より劣悪?

    だまされて代理母になったユキが事業として立ち上げる
    代理母斡旋

    色々な問題をミックスして提示されるが
    うーん、しっくりこなかった

    子どもを産む、育てるって何だろう?

    ≪ 母になる 選択の一つ  人生の ≫

  • 絶対にのし上がってやる。
    底辺をウロウロしたまんまで人生終わってたまるかよ。
    いつか大金持ちになって、世の中を見返してやるからな。
    ーーーーー冒頭、主人公ユキのこんな心情から始まる。

    ユキは、代理出産をさせられ怒っている。義父に騙された。16歳なのに、18歳と偽るように言われ、まだ知識の浅かった私を言いくるめた。
    ・・・・・立派な人助けだよ・・・・・だなんて。
    こんなことになったのは、超極貧生活
    だったからだ。代理出産の報酬は、大金だった。ユキは出産後、自分が桁外れの世間知らずだったことを後悔する。
    そして、家出を決意する。義父は代理出産で稼ぐ計画を、企てていた。
    そんな時、幼なじみのミチオに会い一緒に逃げる。


    大金持ちになりたい!どうしたらいい
    のか?
    この本の題名にあるように、ユキは自分の経験を生かし、ミチオと代理母の仲介会社を設立する。

    代理出産について、人それぞれの意見が
    ある。凍結された遺伝子を使うことも、
    お腹だけを借りることもあるだろう。
    不妊治療が実らす、養子を迎える夫婦もいる。「自分の子が欲しい」その思いは計り知れないのでは、と思う。
    最近では、妊活という言葉を耳にするようになり、それだけ「子供を産みたいんです」と声に出して言える世の中になったのかと思う。

    最後になったが、この話の舞台は現代ではない。2040年だ。代理出産は、やはり法に触れたら困るだろう。でも、
    ドローンタクシー、無人タクシーが
    登場したことには驚かされた。


    2021、3、27読了

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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