夜の道標 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120055560

感想・レビュー・書評

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  • 私達は何にしたがって生きるのが正しいのか
    読んでいて胸が苦しく悲しい気持ちになった

    恩師を殺害して身を隠す「阿久津」
    阿久津に心惹かれ支える「豊子」
    父に指示されて、わざと車に轢かれる少年「波留」
    波留の同級生「桜介」
    事件を捜査する刑事「平良」

    読後も何故?は深まる
    いくつも考えられる阿久津の殺害動機
    あえて作者は動機を書かないことで
    私達読者に
    「正しく生きる」とは
    「人間らしい生き方や幸せ」とは
    いったい何?
    と問いかけているのかもしれない

  • 圧巻。
    阿久津弦の人生も、波留の人生も、凄まじい。驚くことが多い話だった。
    ひどすぎる。
    当たり屋を、小学生の息子に強要する父親。
    車に飛び込むのは、死を意識して恐ろしい。
    波留は、なぜ誰にも助けを求めなかったのか?父親が毎朝一緒にバスケをしてくれるから?
    桜介の歯痒い気持ちに共感する。
    阿久津弦は、戸川先生が道標だった。
    おそらく母親も。
    「生まれてこなきゃよかった子どもなんていない。」
    戸川先生が言ってくれた言葉を大事に持ち続けていた。
    優生手術→不妊手術。知らなかった。旧優生保護法。
    阿久津弦の母親のしたことは、人権侵害。
    母は、正しいことだと信じて、取り返しがつかないことをしてしまった。罪に問われるのだろうか?
    豊子さんも、どうなったのだろうか?
    波留たちの小学校の林間学校の行き先が日光。
    阿久津弦と波留は、高速道路で日光へ。
    宇都宮IC方面へ走る車。
    そして佐野ICで警察に確保される。
    波留が警察の人から林間学校へ参加すると説明を受けているところで、グッときた。
    犯人、警察、先生、クラスメイト、
    みんな優しい人ばかり。
    泣ける。
    良かった。
    光差すラスト。
    本屋大賞にノミネートされそうな本!だと思った。(またまた!)

    眼球は、経験ないなぁ。
    P263あたりから村上春樹問題。
    中学校図書館に入れるには注意が必要な内容あり。

  • ・なぜ殺人を犯したのか?
    ・どのように解決するのか?

    それが気になってどんどん読みました。
    非常に面白かったです。

    「なぜ殺人を犯したのか」
    私レベルでははっきりとはわかりませんでした。
    想像してください、ということですね?

    さて旧○○○○法について、新聞テレビで見かけるけど
    あまり興味なく、当事者の立場にたって考えることはありませんでした。

    「子供が欲しいのにできない」という経験がないので
    そんなに欲しいものかなあと思います。

    ただ日光修学旅行、当時の記憶が蘇ってきましたが
    結論から言うと「あんなもの無くてよい」
    旅行って大人になってから好きなところに行く方が
    ずっと楽しいのに。

    でも、もし自分だけが行けなかったら
    「行きたかったな、修学旅行」
    と思うのかも。
    そう思わなくて(後悔しなくて)すんだので
    日光修学旅行に行って良かったのだと言えます。

    それを考えると
    「子ども作れない体にされた」
    という思いが「子どもほしかった」に繋がるのではないか?と思ってしまいます。

    もしこの発言で傷ついた人がいたら、ごめんなさい。

  • 桜介、波瑠、豊子、正太郎、登場人物ごとに物語は描かれていて進んでいく。しばらくは点と点であり、それぞれの日常や人柄などを知っていく。その間にも桜介のひたむきさや波瑠の諦念、豊子の揺れる想い、正太郎の正義などが発する言葉や行動から鮮明になっていく。そして、いよいよ真相に近づき線に繋がった時の衝撃は読後にジワジワと増している。お恥ずかしながら近年にも実際に訴訟があったことも知らず、この物語の時代設定にも納得がいきました。

    物語の中の人物たちはちょっとした仕草も細かに描かれており、感情の起伏がはっきり伝わってくる。それは自分自身でも判別できない感情の存在なども含まれていて、非常に人間らしい部分のように感じた。だからこそ、物語の真相を知って忘れらない記憶になった。読み終えて、もっと知ろうと思う。

  • あらすじからはいまいちどういう話なのかイメージしにくかったのだけれど、終盤で明らかになる真相は、とても重くて難しい問題を孕んでいた。
    物語が今より三十年ほど前の設定であるのは、なんらかの叙述トリックのためだろうかと思って読んでいたのだけれど、そうじゃなかった。旧優生保護法が正しいものだと信じて受け入れられる、そういう時代があったのだ。
    「不幸な子ども」は生まれないほうがいいのだろうか?それが自分の子なら?孫なら?
    事件の顛末に涙がこぼれた。阿久津弦本人の視点は省かれ、その点はあまり掘り下げて書かれていなかったけれども、個人的にはとても気になるテーマです。

  • p.192まで読んだ感想。長尾豊子が阿久津を殺せば、阿久津からご飯を貰っていた橋本波留が生きていけなくなる。息子である橋本波留がいなくなれば、その父もまた生きていけなくなる。豊子の行動によって、3人の人生が大きく左右される。

    読み終えて。その当時、正しい道標であると思っていたものが、現代になって否定される。倫理観は変わり続ける。

    大きな決断をするときに、自分で考えるのが恐くなり、他者に意見を求め、その意見に無防備に同調するのは危険である。

  • 子どもの頃の自分から、涙がわんわん出た。
    何が正しいのか、どうすればいいのか
    大人に相談できずに噤む口。
    膨らむ不安。
    抱えきれずに八方塞がり。
    あの竦んだ足元の感覚がくっきりと思い出し
    すっかり子どもに戻された。
    不安定な子どもの心の揺れを見事に描き出す表現力。

    一貫として見える「正しさ」も
    見る角度で様々な形をしていたり
    裏で別の顔をしていたり
    時を経て変色したりと思うと只恐い。

    「夜の道標」
    このタイトルが胸に刺さって仕方ない。
    この作品が指し示すものを
    闇の中から見い出して
    大切なものをきちんと大切にできる
    そんな夜明けの道へと繋げたい。

    この作品を通して
    初めて知ったことがあって。
    知ることができたこと
    そのことについて考えることができたこと。
    そのすべてが、芦沢央さんがくれた
    これからの未来へと続く
    大きな道標となったように思う。

    この書影を見る度に
    なぜか涙が込み上げてくる。
    目頭が熱くなるとか、そんなんじゃなくて
    胸から迫り上がってくるものがある。
    この作品には、そうさせる何かがあるんです。
    心に波紋が広がり、きっとずっと鳴り響いていくミステリー。
    10周年記念に相応しい傑作です。

  • 後半にだんだん話が組み合わさって行くにつれ
    読むペースが上がっていきました
    悲しい話ですが、最後希望があったのが
    よかったと個人的に 思いました

  • 1996年、横浜市内で学習支援塾の経営者が殺害された。被害者は教育熱心で一人一人の子どもに寄り添い、誰に聞いても評判がよかった。早々に被害者の元教え子が被疑者として捜査線上に浮かぶが、事件発生から2年経っても、被疑者の足取りはつかめていない。
    物語は、バスケに夢中の男子小学生、その友だちでバスケの上手い転校生、被疑者を匿う女性、事件を追う刑事の視点で語られる。

    このテーマにかぶる事件が最近もあり、過去のことではないと思う。

  • 前半はページの進みが遅かったが、阿久津視点の描写が出てくる頃から目が離せなくなって一気読み。別視点で描かれるストーリーが段々と収斂してくる組み立ては後半盛り上がるから好き。

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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