- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121001696
作品紹介・あらすじ
維新前夜の群像 第4
感想・レビュー・書評
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(2015.12.14読了)(2015.10.10購入)(1997.06.30‣20版)
「醒めた炎 木戸孝允」村松剛著、中公文庫、全四巻を読んだので、ついでに歴史家の書いた木戸孝允を読んでおこうと購入し読んでみました。
「まえがき」には、
本書の題名は「木戸孝允」であるが、私は、この一冊を、あえて「木戸孝允」ではなく、「桂小五郎」として書いた。
とあります。従って、主なところは、明治維新前でしか書いてないということです。
著者としては、桂小五郎がその役割を十分果たすことができたのは、明治維新までであって、明治維新後は、不十分な役割しか果たすことができなかった、という評価を下しているためと思われます。
著者にとっては、西郷も大久保も木戸と同様の評価のようです。ということは、明治維新は失敗であったということを言いたいかのようです。
著者にとっては、横井小楠や勝海舟こそ、政府の要職について、舵取りをすべきであったといいたいかのようです。残念ながら、横井小楠は、亡くなっており、勝海舟は、幕府方だったので、明治政府の舵取り役にはつけませんでした。
勝海舟に関す本は、いくつか積読しているのですが、まだ読んでいません。
桂小五郎は、若いころは、造船技術を学んだり、明治政府になってからは、西洋を見てこないと先へ進めないとでも考えたのか、岩倉使節団に加わっています。医者の家に生まれたというあたりが、影響しているのでしょうか。
【目次】
まえがき
はじめに―「維新三傑」のイメージ
Ⅰ 胎動の時代
Ⅱ 日本への開眼
Ⅲ 尊王攘夷
Ⅳ 大割拠
Ⅴ 武力討幕へ
むすび―維新の元勲
参考文献
木戸孝允関係年表
●高杉の上海渡航(62頁)
ちょうど幕府が新しく買い入れた蒸気船千歳丸の上海航行計画があるのを幸いに、高杉をその方に向けることにした。かねてから高杉に海外渡航の希望があったのを理由に、高杉を一時的に政治の渦中から遠ざけようとしたのであった。
●長州と薩摩(70頁)
長井のそれが、朝廷を幕府にしたがわせるかたちでの公武一和であるのにたいし、久光のそれは、朝廷の権威を背景とし、雄藩の圧力をもって幕政改革をしようという、将軍継嗣問題段階での公武合体の再版であった。
●横井小楠(99頁)
横井が、幕末のもっともすぐれた思想家であったゆえんは、新しい日本の国家構想を展開することのできたただひとりの思想家であったことであり、坂本竜馬が偉大な活動家として他に例のないスケールの大きさをしめすことができたのは、横井のこうした位置づけを確認していたことによる。
●木戸姓(166頁)
小五郎が、なぜ桂姓から木戸姓に転じたか、理由は明らかでない。
木戸の姓のゆえんは、その実家の由緒にも養家の来歴にも見当たらない。そして改姓の理由も、「藩命」とあるだけである。しいて推測すれば、小五郎は従来、しばしばその署名に、桂を分解して木圭と記している。圭の字画を略して土とし、木土ではいささかそぐわないので、長州藩に多い宍戸姓にならって木戸としたというように考えられないこともない。
●風船(169頁)
維新後、横井・勝・坂本を失った西郷は、もはや糸の切れた風船に転化する。
☆関連図書(既読)
「花燃ゆ(一)」大島里美・宮村優子作・五十嵐佳子著、NHK出版、2014.11.25
「花燃ゆ(二)」大島里美・宮村優子・金子ありさ作・五十嵐佳子著、NHK出版、2015.03.30
「花燃ゆ(三)」大島里美・宮村優子・金子ありさ作・五十嵐佳子著、NHK出版、2015.07.30
「花燃ゆ(四)」小松江里子作・五十嵐佳子著、NHK出版、2015.10.30
「久坂玄瑞の妻」田郷虎雄著、河出文庫、2014.11.20
「世に棲む日日(1)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.03.10
「世に棲む日日(2)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.03.10
「世に棲む日日(3)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.04.10
「世に棲む日日(4)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.04.10
「高杉晋作」奈良本辰也著、中公新書、1965.03.
「高杉晋作と奇兵隊」田中彰著、岩波新書、1985.10.21
「醒めた炎(一)」村松剛著、中公文庫、1990.08.10
「醒めた炎(二)」村松剛著、中公文庫、1990.09.10
「醒めた炎(三)」村松剛著、中公文庫、1990.10.10
「醒めた炎(四)」村松剛著、中公文庫、1991.10.30
「横井小楠-維新の青写真を描いた男-」徳永洋著、新潮新書、2005.01.20
(2015年12月17日・記)
(表紙より)
西郷隆盛、大久保利通とならんで「維新の三傑」と謳われながら、明治政府成立後の木戸孝允の影はうすい。しかし、幕末動乱の時代、桂小五郎時代の木戸の活躍ぶりは、われわれに鮮烈なイメージで迫ってくる。当時の志士のなかにあって、桂のみ一度も脱藩、投獄、謹慎、閉門の経験がなく、しかも終始一貫、藩論のリーダーシップをとり、維新成就に寄与しえた秘密はなにか。小説的イメージ、要領のよい秀才青年のイメージを克服する。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
横井小楠を軸に、幕末・維新史を語った感が否めなかった。桂小五郎の入門書としては、時代背景共々分かりやすかった。木戸の苦悩ももっとしりたかった。