中国文化と花の関わりがこれほど深いものとは。
中国の文学、習慣、少数民族の伝説から日本の古典文学までが豊富に集められていて、読んで楽しい本だった。
「百花料理」、花を使った中国料理のレシピが添えられているのも楽しい。
第1話 百花盛宴
さまざまな花の精を、中国では女性の仙女として捉えるらしい。
それが百花仙子。
思いのままに花を咲かせたい則天武后との戦いは、たくさんの書物に出ていることなのだろうか。
第2話 桃美人の美容食
西王母の仙桃は不老の力を持つ。神仙思想との結びつきが強い。
それを孫悟空が人間界に「空輸」したとされる!
不老不死のシンボルにして、女性のシンボルとして、中国文化でも思い意味を持つ桃。
その音(tao)が、「逃」「刀」に通ずることから、桃で作った弓や人形、ほうきが魔よけの意味を持ち、やがて武将を描いた「桃符」を生み出したという。
このつながりは想像だにしなかったことで、目からウロコの落ちる思いがした。
第3話 桜嬢の渡日
中国では、桜は実を楽しむための木なんだそうだ。
花を愛でるのは、雲南省の少数民族のイ族。
桜の花をめぐる伝説があるのだそうだ。
桜の精「ミール」が土地の権力者に嫁がされ、自殺する。
彼女に恋をしていた青年が後を追い、その血で桜は赤く染まったという伝説だ。
第4話 菊君子の隠逸
易学では、一桁の奇数で最も大きく、一桁の奇数である一、三、五を足して得られる「九」を特別な「陽数」として珍重する。
その「九」が二つ重なるから、九月九日は重陽の節句。
登高や菊華酒の習俗が紹介されている。
菊は老境の美の象徴であり、敬老思想と深く結びついているとか。
他に、菊と並ぶ隠逸の花として、蓮のことも触れられていた。
第5話 桂花婦人の色香
「桂花」は金木犀。
月の精嫦娥に恋をして、天上界の「天蓬元帥」から豚に変化されられたのが猪八戒!
嫦娥の夫は、弓の名人、羿(げい)。
堯帝の時代、十個の太陽を射落とした伝説の名手だが・・・
嫦娥には西王母の不老不死の薬を盗んだという伝説もあり、月へ追放されたとか。
嫦娥は罰として醜い蟾蜍(せんじょ)に姿を変えられたとも。
月には蛙と兎がいるとするのが、中国の民間伝承。
月で兎の姿になった嫦娥が、償いとして同じ薬を作ろうと薬をついている・・・というのもあるんだそうだ。
これまで切れ端として知っていた話が、つながってびっくりだ。