花が語る中国の心: 美女・美酒・美食の饗宴 (中公新書 1417)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121014177

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  • 中国文化と花の関わりがこれほど深いものとは。
    中国の文学、習慣、少数民族の伝説から日本の古典文学までが豊富に集められていて、読んで楽しい本だった。
    「百花料理」、花を使った中国料理のレシピが添えられているのも楽しい。

    第1話 百花盛宴
    さまざまな花の精を、中国では女性の仙女として捉えるらしい。
    それが百花仙子。
    思いのままに花を咲かせたい則天武后との戦いは、たくさんの書物に出ていることなのだろうか。

    第2話 桃美人の美容食
    西王母の仙桃は不老の力を持つ。神仙思想との結びつきが強い。
    それを孫悟空が人間界に「空輸」したとされる!
    不老不死のシンボルにして、女性のシンボルとして、中国文化でも思い意味を持つ桃。
    その音(tao)が、「逃」「刀」に通ずることから、桃で作った弓や人形、ほうきが魔よけの意味を持ち、やがて武将を描いた「桃符」を生み出したという。
    このつながりは想像だにしなかったことで、目からウロコの落ちる思いがした。

    第3話 桜嬢の渡日
    中国では、桜は実を楽しむための木なんだそうだ。
    花を愛でるのは、雲南省の少数民族のイ族。
    桜の花をめぐる伝説があるのだそうだ。
    桜の精「ミール」が土地の権力者に嫁がされ、自殺する。
    彼女に恋をしていた青年が後を追い、その血で桜は赤く染まったという伝説だ。

    第4話 菊君子の隠逸
    易学では、一桁の奇数で最も大きく、一桁の奇数である一、三、五を足して得られる「九」を特別な「陽数」として珍重する。
    その「九」が二つ重なるから、九月九日は重陽の節句。
    登高や菊華酒の習俗が紹介されている。
    菊は老境の美の象徴であり、敬老思想と深く結びついているとか。
    他に、菊と並ぶ隠逸の花として、蓮のことも触れられていた。

    第5話 桂花婦人の色香
    「桂花」は金木犀。
    月の精嫦娥に恋をして、天上界の「天蓬元帥」から豚に変化されられたのが猪八戒!
    嫦娥の夫は、弓の名人、羿(げい)。
    堯帝の時代、十個の太陽を射落とした伝説の名手だが・・・
    嫦娥には西王母の不老不死の薬を盗んだという伝説もあり、月へ追放されたとか。
    嫦娥は罰として醜い蟾蜍(せんじょ)に姿を変えられたとも。
    月には蛙と兎がいるとするのが、中国の民間伝承。
    月で兎の姿になった嫦娥が、償いとして同じ薬を作ろうと薬をついている・・・というのもあるんだそうだ。
    これまで切れ端として知っていた話が、つながってびっくりだ。

著者プロフィール

中国・河北省承徳市生まれ。大連外国語大学日本語学部卒業、四川外国語大学大学院修了。宮沢賢治研究、日中比較文化研究。人文科学博士(お茶の水女子大学)。「文化外交を推進する総理懇談会」や「国際文化交流推進会議有識者会合」など委員も経験。日本ペンクラブ国際委員、朝日新聞アジアフェロー世話人、早稲田大学や関西大学などの客員教授などを歴任。法政大学名誉教授、桜美林大学特任教授、拓殖大学客員教授、周恩来平和研究所所長。
宮沢賢治を中国に初めて紹介したことで知られている。90年に中国優秀翻訳賞、92年に山崎賞、97年に岩手日報文学賞賢治賞を受賞。2009年に文化庁長官表彰。
主著:『周恩来と日本』(三和書籍)、『嵐山の周恩来』(三和書籍)、『禹王と日本人』(NHK出版)、『宮沢賢治、中国に翔る想い』(岩波書店)、『宮沢賢治と中国』(国際言語文化振興財団)、『中国人の愛国心─日本人とは違う5つの思考回路』(PHP新書)、『ほんとうは日本に憧れる中国人─「反日感情」の深層分析』(PHP新書)、など。
共著:『自分がされたくないことは人にもしない』(三和書籍)、『日本初の「世界」思想』(藤原書店)、『<意>の文化と<情>の文化』(中公叢書)、『君子の交わり 小人の交わり』(中公新書)、『中国シンボル・イメージ図典』(東京堂出版)、『中国人の日本観』(三和書籍)、『日中文化の交差点』(三和書籍)など。
要訳:『西遊記』、『三国志』、『紅楼夢』など
中国語作品:『漢魂与和魂』、『十国前政要論全球<公共論理>』、『中日神話伝説比較研究』、『中国小説与伝説在日本的伝播与再創』、『銀河鉄道之夜』、『生活中的日本─解読中日文化之差異』、『宮沢賢治傑作選』など多数。

「2022年 『福田康夫文集 世界の平和を求めて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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