デファクト・スタンダードの経営戦略: 規格競争でどう利益を上げるか (中公新書 1493)
- 中央公論新社 (1999年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121014931
作品紹介・あらすじ
「事実上の標準」と訳される「デファクト・スタンダード」が、ようやく市民権を得てきた。規格競争においては、技術的に最もすぐれた規格や最先発の規格が、必ずしも標準を獲得しているわけではない。では、どのような製品が事実上の標準を形成するのか。その標準はいつ決まるのか。どうすれば、それを獲得して、利益を上げられるのか。本書は、エレクトロニクス分野を中心に、規格競争の実態を探り、その戦略を提示するものである。
感想・レビュー・書評
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もとの本が絶版となっており、古本で購入した。集められた事例は時代を感じさせるものの、内容は現代でも十分通用する新しさを備えている。単に規格競争を調査論述するだけにとどまらず、副題「規格競争でどう利益を上げるか」にもあるように、具体的な処方箋を示しており、非常に参考になる。特に何をオープンにして何をクローズドにするかを考えてからビジネスを行うというのは、今の時代でも主流の考え方だと思う。
以下、印象に残った箇所を抜き書き、まとめてみる。
「規格の知的財産権を強く主張し、クローズドにすればするほど、その規格に賛同する企業やユーザーは減り、デファクトはとりにくくなる。逆に知的財産権を放棄したり緩くしたりしてオープン・ポリシーをとれば、デファクト・スタンダードは獲得しやすくなるが、開発者利益は得にくくなる。このようなトレードオフの中で、企業はどのようにすればデファクトをとり、かつ利益を上げることができるのだろうか(P106)」
ここで、著者は、オープンとクローズドとの組み合わせによって利益を得るべく、現在の利益か将来の利益か、本体と補完製品のどちらで利益を上げるか、という2つの軸を組み合わせて、利益の源泉となる4つのセルを提示し、各セルにおける戦略を詳述している。
|現在|将来|
本体 |A |C |
補完部品 |B |D |
A.今、本体で利益を上げる
→機能向上と低価格化を同時に業界で一番の速さで進めていき他社を振り落とす
ex. IntelのMPU、MicrosoftのWindows等
B.今、補完部品で利益を上げる
→本体ではなくデファクト競争の陰に隠れて見えにくい補完製品で利益を上げる
ex. 任天堂のファミコンのソフト、ビデオカメラの専用充電池等
C.将来、本体で利益を上げる
→時間の経過とともに本体が物理的・機能的に陳腐化してきたときに再調整や代替により利益を上げる
ex. 機械式時計のメンテナンス、初期バージョンを無料配布してバージョンアップ時に利益回収等
D.将来、補完部品で利益を上げる
→本体購入後、時間が経過した頃に、補完製品で利益を上げる
ex. ジレットの替刃(他社の替刃と互換性がない)、ゼロックスの複写機リース、ワープロのインクリボン等
これらをまとめると以下の3つになる。
1.オープンとクローズドの多重構造
規格本体あるいはプラットフォームとなるAのセルをオープンにして普及を優先させ、B~Dのいずれかのセルをクローズドにしてここで利益を確保するというビジネスの組み合わせ。規格策定段階から、戦略を固めておく必要がある。
2.「見えるビジネス」(本体/完成品)「見えないビジネス」(見えにくい部品/サービス/メンテ)の多重構造
本体よりも補完製品の方が産業界で大きな位置を占め、利益率も高いことが多い。見える部分は付加価値追求、見えない部分は規模の経済性、オペレーション効率を追求するというメリハリが必要。
3.通行料ビジネス
技術革新のスピードが速いため、売り切り商品による利益だけではなく、わずかな金額を長期間バラバラなところから収入が入ってくる仕組みづくりが求められる。インターネットを利用して取引の度に少額の課金をするなど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
デファクトは、イノベーターでなくアーリーアダプターにより決められることが大い。
デファクトに勝つ為には、一つ先での標準化、一つ上の標準化が考えられる。
第一は、一世代先の技術を取り入れた標準化であり私が目指すべきところだ。一つ上の標準化はうーん難しい。 -
選択科目「コンテンツ標準化論」で使用。
専攻シラバス:
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/curriculum/12/syllabus_12.html -
成毛さんお勧めの本。
例示が古い(VHS対ベータ、等)が、
思考・書き方が整理されていて非常に分かりやすい良著。
新規商品開発やベンチャービジネスに携わっている方は必読。 -
市図書館
だいぶ参考になった。 -
出版が1999年の為、事例が古いのは否めないけど、骨子は十二分に確立されているので役に立つはずです。
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“自分以外の「第三者」が儲かる仕組み”というのはわかっていてもなかなか形にするのは難しい。頭を柔軟にしなければついていけないぞ!