エジプト革命 - 軍とムスリム同胞団、そして若者たち (中公新書 2236)
- 中央公論新社 (2013年10月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022363
作品紹介・あらすじ
ムバーラクの三〇年にわたる独裁は、二〇一一年、民衆による「一月二五日革命」で幕を閉じた。しかし、その後の民主化プロセスの中で、軍とムスリム同胞団が熾烈な権力闘争を展開し、革命の立役者である若者たちは疎外されていく-。エジプトの民主主義は、どこで道を誤ったのか。アラブの盟主エジプトが迷走した、二年半におよぶ歴史上の劃期を、軍・宗教勢力・革命を起こした青年たちの三者の視点から追う。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
アラブの春の波がエジプトにも押し寄せ、ムバラク打倒のデモが始まった2011年1月から、ムルシーが大統領を追われムスリム同胞団が解散される2013年9月までの2年半を丹念に描いたルポです。
それにしても、エジプトって軍の影響力が強烈なんだねぇ。軍は政治経済を支配しているのに、一方で大統領と対抗しており、国民からは味方だと認識されているという、まさに得体のしれない組織だという事がよくわかります。そして、その軍には毎年13億ドルがアメリカから供与されていること。
また、同じイスラム諸国の中でも同胞団を支援する国、軍を支援する国があり、事態を複雑化させています。
イスラエル・パレスチナに隣接し、スエズ運河を握るエジプトの地政学的重要さがよくわかります。
何より驚きなのはムルシーがアメリカの大学を出て、アメリカの国籍も持っているという事。
それにしても、理解が難しいのは、選挙で選ばれたムルシーが「民主的勢力」で排除されるという矛盾。これについて著者は、多数決を是とする限りイスラム勢力が権力を握ってしまう政治の現状。これに対して「民主派勢力」は多数決をとらない民主主義を目指すと指摘しています。欧米流の「民主主義」が必ずしも幸福をもたらさないという現状を思い知らされました。 -
[高揚、悲憤、そして苦悩]全世界を驚嘆せしめた2011年の革命の後、政治的にも経済的にも混乱に陥ってしまったエジプト。希望に満ちた革命はどのような道筋をたどっていったのか、その過程で軍やムスリム同胞団、そしてリベラル勢力は何を重要視し行動したのかについてまとめた一冊です。著者は、東京外国語大学アラビア語学科を卒業後、中東調査会客員研究員として活躍されている鈴木恵美。
情報が錯綜し、まさに現在進行形でエジプトの政治情勢が刻々と変化する中において、極めてスッキリと、エジプトが革命以後に歩んだ道筋を提示してくれているように思います。多くの利害関係者の思惑が交錯する中で革命の対立軸が目まぐるしく移り変わっていったことが本書から想像できるかと思います。それにしても本当に急速に物事が展開したんだと改めて驚きとともに実感。
エジプトをこよなく大事に思う著者故でしょうか、一方向からの評価を避け、適度に距離を取りながら俯瞰した目線でこの革命を眺めたことにも好感が持てました。私もエジプトの首都であるカイロで留学をしているのですが、鈴木氏が本書の最後をこのような「柔らかな」言葉で締めくくったことに深い共感を覚えます。
〜エジプトはこれからも数多くの試練に直面するだろう。しかし、どのような難局にあっても、蛇行しながらも悠久の流れをたたえるナイルのように、寛容さをもって進んでほしい。〜
大統領選挙も間もなく実施されます☆5つ -
新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、1階文庫コーナー 請求記号:312.42//Su96
-
20140201〜0224.エジプトのムバラク政権崩壊からムルシー政権崩壊までを、生々しく書いている。
-
2011年1月以降、
今に渡るまで混乱するエジプト革命の様子を解説する一冊。
外から得られる情報をもとに、
複雑な情勢をよくまとめており、わかりやすい。
2013年夏の出来事までをまとめているため、
早く読めば早く読むほど価値は高まる。
軍部、同胞団、青年らという団体ではなく、
そこにいる個々人の思惑や欲、駆け引きを紡ぐ
評伝の登場が待たれる。 -
最も新しいエジプトについての状況の変化を書いたものである。エジプト革命について論文を書くときには少しは役に立つであろう。
-
エジプト軍、ムスリム同胞団の司法を巻き込んだ権力闘争と駆け引きが凄まじかった。その中で民主化の舞台から消えてゆく青年達、理想だけでは生き残れない考えさせられる本でした。事前に治安部隊の介入が予想されたナダフ広場やラバーア・アダウィーヤの惨劇は軍の暴走か人間の盾だったのか気になります
-
アラブ地域にはエジプト同様にチュニジア、シリア、イエメン、リビア、イラク、スーダンでも元軍人が大統領を務めている。
軍が進出しているの経済部門は、軍事産業、民間産業、農業、建設業の4つ。