ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書 2272)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022721

感想・レビュー・書評

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  • 勉強になりました。

  • ドイツ人は,ヒトラーの巧みな演説にどのように熱狂し,そして醒めていったのか。ドイツ語史の研究者である著者が,150万語の演説データから得た特徴的な単語の出現頻度などをもとに分析。政治的・歴史的文脈もきっちり踏まえた上で堅実なヒトラー演説論を展開している。
    レトリックやジェスチャー・発声法の面で早いうちに完成され,ラウドスピーカーや映画,高速移動手段といった技術にも大いに助けられたヒトラーの演説。それは政権獲得までのナチ運動期に絶大な威力を発揮し,党勢拡大に重要な役割を果たした。多少の紆余曲折はあれここまではほぼイメージ通り。
    しかし,それが政権獲得後のナチ政権期を迎え,一年半もすると求心力を失っていたという。「蒙昧な」国民のために繰り返される同じ内容はさすがに飽きられ,政権とともにヒトラーが手に入れていたラジオも思うように威力を発揮しない。課せられたラジオ聴取義務を負担に感じる国民。そして開戦後,北アフリカや東西国境で反攻を受けるようなると,ヒトラーには語るべき内容さえなくなっていく。
    問題は,ヒトラー演説でその一翼が演出された「一時的な熱狂」が,あまりにも多くの権力を彼に付与してしまったことなのだろう。熱狂から醒めた国民は,一本調子のヒトラー演説を苦々しく思いながらも,その権力にずるずると引きずられてしまった。ワイマール体制下でのドイツの困窮と,ヒトラーの演説の才能,それを拡散する諸技術。そのどれが欠けてもその後の世界の歴史は変わっていたに違いない。

  • 演説であれだけ聴衆を熱狂させるのには、相当の技術が行ったんだろうな…。しかし演説成功のために、練習し、ジェスチャーを工夫し…、うーん、ある意味すごい努力家ですね。

  • ヒトラーは、なぜ我々は反ユダヤ主義者なのかという演説を行った、その中で本能的なものを呼び起こし、奮い立たせ、扇動することが、自分の演説の目的だと語った。
    大衆の受容能力は非常に限定的で理解力は小さく、その分忘却力は大きい。大衆は頭の回転が遅いため、1つのことについて知識を持とうとする気になるまで、常に一定時間を要する。したがって、最も単純な疑念を1000回繰り返して初めて、大衆はその概念を記憶することができる。多くを理解できない大衆の心の中に入り込むには、ごくwずかなポイントだけに絞り、そのポイントをスローガンのように利用する。その言葉だけを聞けばだれでも、その言葉が指す内容を思い浮かべることができるようにせねばならない。

  • 311.8||Ta

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著者プロフィール

京都市生まれ。学習院大学文学部教授。Dr. phil.(ブラウンシュヴァイク大学)、DAAD給付奨学生、フンボルト財団招聘研究員。近現代のドイツ語史、歴史語用論、歴史社会言語学。主要著作にGrammatik und Sprachwirklichkeit von 1640-1700(単著 Max Niemeyer 1998, Reprint: Walter de Gruyter 2011)、『ドイツ語が織りなす社会と文化』(共編著 関西大学出版部 2004年)、『歴史語用論入門』(共編著 大修館書店 2011年)、『言語意識と社会』(共編著 三元社 2011年)、『ドイツ語の歴史論』(共編著 ひつじ書房 2013年)、『歴史語用論の世界』(共編著 ひつじ書房 2014年)、『ヒトラー演説』(単著 中公新書 2014年)、『歴史社会言語学入門』(共編著 大修館書店 2015年)。

「2015年 『欧米社会の集団妄想とカルト症候群』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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