物語 アラビアの歴史-知られざる3000年の興亡 (中公新書 2496)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024961

作品紹介・あらすじ

アラブについて記された最初の石碑は紀元前9世紀に遡る。メソポタミアとエジプトの両文明に挟まれた砂漠に誕生した諸国家は交易と遊牧で栄え、互いにしのぎを削り、エチオピアやインドとも交渉を持った。西暦7世紀にはこの地にイスラームが誕生し、世界史に大きな影響を与えることになる。20世紀以降、石油資源を元に近代化を進めるが、政治的安定にはほど遠い。中東の核心地帯の三〇〇〇年を追う。

感想・レビュー・書評

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  • アラブに記された最初の石碑は紀元前9世紀に至る。メソポタミアとエジプトの両文明に挟まれた砂漠に誕生した諸外国は交易と遊牧で栄えた。尚知らざれざる3000年の興亡とありますが時代的には前近代に軸足を置いた形にになっています。その意味でも古い時代のアラビアについて知りたい人にとってはより、価値にある書籍であると思います。アラビアの歴史と言うタイトルの通り地理的な意味合いから、アラブに全体ではなくアラビア半島とシリアとなっています。新書籍ですから社会と経済等の個別のテーマについて記述していますが、若干手薄なところもあり、アラビア史の入門編として最長の一冊であると思います。
    参考資料
    岩手県立大学メディアセンター
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=335379
    livedoorBlog_個人のブログ
    http://blog.livedoor.jp/facecollabo-life

  • カタカナ部分が知らない単語ばかりで、さくいんや地図を繰り返し見ました。
    けっこう大変でした。
    でも文章はとてもわかりやすいし、地名がかならず確認できたので、とても良かったです。
    今まで本によっては地名が地図で確認できずストレスになったこともあったので。

    これまで殆ど知らなかった南アラビア、イエメンとオマーンのことがよくわかりました。
    そしたら蔀勇造さんはそのあたりの専門家なんですね。
    最後の方で、さんざんでてきた地名ハドラマウトの出身者としてビンラディンの父の名前があげられていて、ノンフィクション度が急激にアップしました。

    3000年の中ほどにムハンマドが登場しています。
    この本でも真ん中へんにあたります。
    それくらい、古代もしっかり描かれている本です。

    最近イスラム教の本を読んで、それまで嫌なイメージをもっていたのが改良されていました。
    おだやかなイスラム教徒もいるし、キリスト教だって悪いことをたくさんしてきたじゃない?て。
    でもこの本を読んで、うーん、やっぱり違うかなって。
    「勝利すれば多くの戦利品の分配に与れたし、運悪く戦死してもジハードの殉教者として天国行きが保証された」
    イエスキリストは弱い人たちに寄り添っていたけど、イスラム教は最初から戦う宗教として始まったのではないでしょうか。

    ただ、全体としてアラビアにとってはイスラム教はそんなに大きいものではないようです。
    「それよりも第二次世界大戦後にアラビア半島東部各地で油田が発見されたことによって起こった変化のほうが、はるかに大きいのではなかろうか」と蔀氏。
    「それまで海外との交易を別にすれば、遊牧やナツメヤシ栽培を主とする農業、漁業、盗賊業などで細々と生計を立てていたのが、突如一夜のうちに労せずして富豪となり、砂漠に超モダンな都市が出現したのである。
    まさにアッラーのお恵みとしか言いようがなく、歴史的に前後の脈略なく出来したこのような事態を前にすると、歴史を研究するものとしては無力感に襲われざるをえない」

    「しかしいわゆるレンティア国家のこのような繁栄がこの先100年も200年も続くとは思えない。」
    「来世紀のアラビア半島は、イエメンやオマーンの高地帯を除けば、月世界のような砂漠に都市の廃墟が広がるという近未来映画で見るような光景を呈しているかもしれない。ともあれ、後から振り返ってみれば、これも長いアラビアの歴史の一つのエピソードに過ぎないことは、まちがいのないことである」

    これは今まで歴史の本に登場しなかった発想なので、とても興味深いと思いました。
    生きて目撃できないのが残念。

  • 第1章 都市と国家の成立と発展―アラビア史の黎明
    第2章 新旧勢力の交替と文明の変質―前一千年紀末の変動
    第3章 オリエント世界の三極構造化―三世紀の変動とその後
    第4章 アラビアの古代末期―諸勢力の角逐
    第5章 イスラームの誕生と発展―アラビアの新世紀
    第6章 沈滞と混迷の数百年―中世のアラビア
    第7章 ヨーロッパ人の来航とオスマン朝の支配―近世のアラビア
    第8章 独立と繁栄―近現代のアラビア

    著者:蔀勇造(1946-、アラビア史)

  • 先イスラームが専門とのことですが、ムハンマドが出てきてからが面白いと思います。イメージより武闘派。

  • 先イスラーム期、南アラビア史の記述が中心。豊富な考古学資料をもとに詳述されているものの、初心者にも分かりやすく記述されている。

  • 難しかった~。あまりに馴染みがないせいで、人名なのか地名なのか肩書なのか、それすらも理解できなかった…。けど、ものすごくざっくりと概要はわかった気がする。アラビアにおいて国というものはまだまだ安定しているものではないのだな。

  • SY2b

  • 蔀先生は30年近く前に大学での講義を受けたことがありまして、その時もエリュトラー海航海記を中心とした内容だったのでイスラム化前の状況が中心だったのは予想通りでした。それにしても史料の量の差とは言え、海岸部に話が偏ります。まぁインドと地中海を結ぶ貿易ルートから外れると史料が減るので仕方がないのですが。あと古代にはエチオピアがローマ、ペルシャに並ぶ大国だったということで、今度はエチオピアの歴史も確認したくなりました。

  • シリア砂漠からアラビア半島の先端まで、古代の王国からイスラームの勃興をへて現代の産油国まで、中東の核心地域のはじめての通史

  • 宮下 志朗(仏文学者・放送大客員教授)の2018年の3冊。
    古代アラビアの「ロマン」に惹ひかれる読者に贈る名著。

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著者プロフィール

1946年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学大学院人文社会系研究科教授等を歴任。専攻・アラビア古代史、東西海上交流史。著書『オリエント史講座』第3巻(共著、学生社, 1982)、『シェバの女王』(山川出版社, 2006)、『歴史意識の芽生えと歴史記述の始まり』(山川出版社, 2004.世界史リブレット57)、『エリュトラー海案内記 1・2』(訳註・平凡社東洋文庫、2016)『西アジア史1 アラブ』(山川出版社、分担執筆、2002)ほか

「2018年 『物語 アラビアの歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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