ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち (中公新書 2595)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025951

感想・レビュー・書評

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  • 20210108-20 ビサンティン帝国については、正直言って1453年コンスタンティノープルの陥落位しかよく知らなかった。本書はローマ帝国の継承国家として地中海に覇を唱えた4世紀頃から、イスラム勢力や十字軍に翻弄される時期を経て、1453年に力尽きるまでの激動の歴史を7世紀から12世紀までの中期を中心に描き出している。文章が読みやすく,時に現代への示唆に富むコラムを挟んでくるので、なじみのない地域の話でも興味深く読めた。十字軍っていビサンティンには厄災でしかなかったのでは・・もっと歴史を知りたくなった。

  • 日の当たらない分野であるが丁寧に解説されたいい本

  • 塩野七生の「ローマ人の物語」が終わったところ(330年)から始まる「東ローマ帝国」の1000年ぐらいの歴史を新書一冊で。

    何十人もの歴代の皇帝・王朝を紹介しつつこの複雑な帝国の歴史が書いてあるので、正直言ってやや読みづらい。

    この帝国の皇帝は頻繁に謀反・反乱で簒奪される。そして、皇帝の母、未亡人などが陰から次の皇帝を操ったり暗殺されたりが相次ぐ。失脚した皇帝や反乱指導者は「摘眼刑」という恐ろしい処罰をうける。

    東には徐々に拡大してくるイスラム国家、北のバルカン半島には次々と「xxx人」という新たな民族が大陸の奥から押し寄せてくる、西にはフランス、イタリアを支配しつつある「ノルマン人」の「ラテン諸国」と、面倒くさそうな勢力に囲まれている。

    歴代の皇帝はコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)を首都として、現在のトルコとギリシャあたりの版図を周辺勢力と外交・戦争でやりとりしながら数百年存続させてきた。

    最後は「コンスタンティノープルの陥落」というやはり塩野七生の本がある事件で終結する。(1453年)実際にはコンスタンティノープルはこのオスマン帝国に陥落させられる前に一度、西欧が送り込んだ第4回十字軍によって陥落略奪されている。(1204年)著者はここで実質的に「ビザンツ帝国」は終了し、その後の王朝は残骸にすぎない、という説。

    陰謀や内乱うずまくなかなんとか王権を維持したという意味では日本の室町時代に似ているけど、1100年もあるのでスケールが違いすぎる。

    この地域、(バルカン半島、トルコ、シリア)は現在にいたるまで各種紛争が相次ぐ地域なのは「文明の十字路」なのでしかたないのだろう。

  • 波瀾万丈・有為転変の連続であったビザンツ帝国の歴史を一望。千年の軌跡が見えてくる。

  • いかにしてローマ帝国は、ビザンツ帝国と呼ばれる姿になったのか。テマ制がどのように生まれたか。イコノクラスムについての新しい見解。文化活動を主導したコンスタンティノス7世への注目。カール大帝、北方への正教の布教、十字軍やイタリア諸都市との関係など世界とのかかわり。ヘラクレイオス、レオン3世やバシレイオス2世、アレクシオス1世など戦う皇帝たちはなぜ生まれたのかー-帝国千年の歴史にふさわしく、読みどころが多い。

    特にテマ制成立期については、著者の専門とする時代であり、著者が別の専門書で扱った内容のコンパクトなまとめになっている。

    初版では、すでに指摘されている通り、単純な誤記や誤認が目立つ。重版が何度もかかっているようなので、修正が望まれる。また、10世紀以降については著者の専門外とする時代だけに他の当該時期を専門とする研究者から疑義を呈されている点も注意。

    とはいえ、コラムもビザンツを知るのに入口として重要な内容で、皇帝在位表なども整理され、充実の内容になっている。

  • うっすらとわかってはいたが、歴史の分量、とくに人名の数に比べて枚数が少ないので、頭に入りきらない。とりわけ後半は辛かった。『ローマ人の物語』は同じくらいの年数で分厚い単行本15巻あったから、それなりに親しみを持って読めた。
    それでも「ビザンツ皇帝在位表」がこまめに出てくるのはありがたい。
    あとは家系図があると、もっと理解できたと思う。

    ドナウ川を越えて来る蛮族と延々と戦っていたり、ペルシャと延々と戦っていたりと、古代ローマ帝国時代と変わらないのが面白い。
    戦闘方法、戦術はどうだったのか。機動力のある騎馬兵はどうだったのかが気になる。戦い方が広く知れ渡って強みが薄れ、新たな装備や兵器の開発も少なく、勝てなくなったのか。

    疫病の話は少し出てきたが、飢饉はなかったのか。あっても影響がなかったのか。

    なぜ国が衰退すると分かっているのに、内乱を起こすのか。子や孫が反旗を翻すのか。理由がわからない。仲が悪かっただけなのか。子弟教育が足りないか、無かったのか。

    債権も大々的には使えなかった時代に、財政を顧みずに大盤振る舞いする皇帝がちらほらいるので、それは国も傾くわな、と思う。
    逆によくこれで千年も持ち堪えた。そちらに驚く。

  • 新刊ということで買ってみました。
    通史(主に政治史)を追っていくというスタイルです。
    高校世界史の知識だけでは読み進めるのにちょっと苦労するな、という気がしました...。
    聴き慣れない固有名詞が多いので、繰り返し読んでいくことで覚えられるかと思います。
    歴史に興味のある方に、おすすめの本です。

  • よくこれだけ簒奪や反乱が繰り返されながら長期間国家を維持できたものだと感心する。流石に個々の時代について詳述はされていないが、概説書として良い内容だと思う。個々の時代の本があれば読んでみたい。

  • 2020年7月10日、トルコ共和国イスタンブルの世界遺産アヤソフィア博物館が、オスマン時代同様、モスク(=イスラームの礼拝施設)として利用されることが決定された。ビザンツ時代に教会として創建されて以来一部残存するモザイク画など、キリスト教美術の扱いが目下議論を呼んでいる。キリスト教・イスラーム共存の象徴とも言えるアヤソフィア。この大建築物が経験してきた帝国の歴史を学ぶために、手頃で必須な新書。小笠原弘幸『オスマン帝国』(中央公論新社、2018年)とあわせて読みたい一冊です!【図書文庫・新書コーナー081//C64//2595】【OPAC: https://opac.lib.niigata-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB31004109

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2595/K

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著者プロフィール

関西学院大学文学部教授、博士(文学)。
1960年、大阪市生まれ。
1989年、大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、大阪大学文学部助手、愛媛大学教育学部助教授を経て、2002年より現職。
主な業績として、『歴史を冒険するために歴史と歴史学をめぐる講義』関西学院大学出版会、2008 年、Kazuo Asano (ed.), The Island of St. Nicholas : excavation and survey of the Gemiler Island Area, Lycia, Turkey, Osaka University Press, 2010(共著)、井上浩一・根津由喜夫編『ビザンツ交流と共生の千年帝国』昭和堂、2013 年(共著)、ジュディス・ヘリン著(井上浩一監訳)『ビザンツ驚くべき中世帝国』白水社、2010年(共訳)。

「2016年 『テマ反乱とビザンツ帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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