日本語力と英語力 (中公新書ラクレ)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121501288

感想・レビュー・書評

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  • 英語教育への抽象的な批判だけでなく、具体的な改善策とその根拠も示されていてわかりやすい。じっくりもう一度読むつもり。

  • 今の文部科学省の英語教育に対する方針や、一般大衆の英語習熟に対する考え方に疑問を呈し、「普遍的な上達の法則」を提言する。現代の言語教育の問題点に関して著されている本。
    「英語力は日本語力」「コミュニケーション重視の英語教育を疑う」「名分を素読・暗証せよ」などの主張がある。国語の齊藤孝と英語の斎藤兆史による対談形式の本。

  •  「日本語力と英語力」 

     とてもよかった。ぼくが言いたいことを的確に述べています。多くの人に読んでもらいたい。ぜひ。

     この本は 本書は、齋藤 孝氏と斎藤 兆史氏の対談本です。
     重要なところ,おもしろいところを抜粋したみたらかなりの量になりました。何回かに分けて紹介します。

     まず,英会話と英文法について。



    (兆史)
    ごく簡単に要約すれば、国語教育を充実させよ,英会話ごっこにも似た低劣な早期英語教育を止めさせよ、型の訓練を中心とした骨太教育を実現させよ、ということになろうか。(p5)

    ( そういうことです。まったく同感。 )


    (兆史)
    たとえば、For here or to go?という表現を見てみよう。これは主にアメリカのハンバーガー屋の店員が、客が品物を店内で食するか持ち帰るかを確認するために用いるものである。逆に言えば、その状況以外で用いられることはなく、例文としてきわめて発展性に乏しい。第一、前置詞+名詞と to不定詞をorでつなぐ変則的な構文を初学者に理解させるのはほとんど不可能だから、勢いそのまま覚えなさいと指導することになるが、生徒は、「英語圏のハンバーガー屋では、品物を持ち帰るかどうかをFor here or to go?という表現で尋ねてくる」ということ以外、何を学んだことになるのだろうか。こんな表現は、海外旅行者用の会話本にでも載せておけばいいのである。

    店員の最後の台詞に現れる Here you are. についても同様のことが言える。これまた、たしかに四十年前の Here is a pen. に比べて実際の会話でよく耳にするが、対面状況で物を差し出す動作を補うだけの表現だから、これを知らなければ対応に困るような状況は皆無だと言っていい。少なくとも、中学1年次に学ぶべき英語ではない。このように系統的に説明のしづらい「実用的」な表現を教えたがるのが、いまの英語教育の悪いところだ。日本語話者の英語習得の順序を読み違えていると言わざるを得ない。( p8〜9 )



     ( うれしくてたまらない。ぼくがこれまで言ってきたことです。まったく同感。「発展性がない」というのがキーワードでしょう。会話中心ではそれをそのまま覚えるだけ。ほかの表現に発展することがない。文法をきちんと学ぶと,単語を換えることで無数の表現に発展できます )


    (兆史)
     まして英語シャワーといっても、せいぜいー日にー、二時間、多くて数時間程度でしょう。生まれたときから、英語で話し、英語で考えるという具合に、母語である英語に四六時中触れながら成長する英語話者の人たちとは、まるで状況が違います。ただ英語漬けになればいいというものではなく、日本語話者が英語を学ぶ場合には、日本語話者にふこわしいそれなりの戦略、枠組みがあるはずです。

    (孝)
    それが、たとえば徹底した型の訓練や、基礎の反復練習ですね。
    (p43)



    ( これもぼくがこれまで言ってきたこと。新聞投稿もしたことがあると思います。さがして掲載したいです。とにかく同感。 )



    (孝)
     それはたとえて言えば、長嶋茂雄が送球したあとに掌をヒラヒラさせるのを素人が見て、その”掌ヒラヒラ”を真似して野球をするみたいなものですね。長嶋はそれで野球がうまいわけじゃない。たまたま投げたあとにそうなるだけであって。

    (兆史)
     ところが、”掌ヒラヒラ”ごと教えるのがいまの英語教育なんですよ。

    (孝)
     基本の形というものは応用範囲が広い。ですから、特殊なケースではなくて、「この文型を覚えておくと、こういう場合にほとんど使えます」というやり方を優先すべきでしょう。(p45)



    ( 長嶋の掌ヒラヒラに例えるのはおもしろい。)


     けれど日本語と英語とはまったく違った語族に属しますし、日本人が英語を自在に使いこなすまでには相当の修練が求められます。その過程で学習する文法や読解がー見機械的な印象を与えることや、多くの人がその段階で英語学習をやめてしまうために、従来の英語教育が意思伝達機能を軽視してきたかのように思われがちなのでしょう。(p46〜47)

     ( これも同感。日本人にとって英語をマスターするのが難しいということです。車の運転ができるために1ヶ月ほど教習所に行くようなわけにはいかないのです。そこのところを誤解しているから,今の英語教育が悪いということで,文法軽視になってしまう )



    (兆史)
     コミュニケーション中心主義の英語教育のもと、文法は軽視される傾向にありますが、英語と日本語はまったく異質の言語です。日本人にいちばんあう英語習得法として、まず言葉の骨組みを知る文法の学習は、日本人の英語の学び方に合ったものです。

    (孝)
     ネイティブではない人間が外国語を学ぶとき、文法は大きな武器になります。その文法が軽視されるのは問題ですね。文法というのは型でしょう。相撲の四股みたいなもので、型を知っていると応用が利くし、効率よく学習できます。それに型や骨組みがわからないで、雰囲気だけで英語を訳すことはできないですよ。話すにしても、文法がめちゃくちゃでは、論理的な会話はできません。(p85)



    ( 日本人にとって,英語の文法を学ぶことは大きな武器になる,同感です。 )


  • 教員を目指していたら、読んでおくべきだな、と思いました。
    やっぱり日本人は日本語喋れてナンボです。

  • 学校では基礎を身につける。安易なコミュニケーション重視ではなく、応用のきく型を系統的に学ぶ。「上達の法則」を身につける。

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著者プロフィール

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。教育学、身体論、コミュニケーション論を専門とする。2001年刊行の『声に出して読みたい日本語』が、シリーズ260万部のベストセラーとなる。その他著書に、『質問力』『段取り力』『コメント力』『齋藤孝の速読塾』『齋藤孝の企画塾』『やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法』『恥をかかないスピーチ力』『思考を鍛えるメモ力』『超速読力』『頭がよくなる! 要約力』『新聞力』『こども「学問のすすめ」』『定義』等がある。

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