ルポ - 子どもの無縁社会 (中公新書ラクレ 407)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 188
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121504074

作品紹介・あらすじ

教科書を置いたまま、ある日姿を消す小学生。虐待のリスクを抱えて所在不明になる親子。公園やスーパーに遺棄される乳幼児…。地域のつながりが希薄化し、友達とも「うわべだけ」の関係になりがちな今、"無縁の連鎖"が子どもを襲う。孤立を深める家庭を救うことはできないのか。

感想・レビュー・書評

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  • 重い重い問題提起。
    2011年発刊だから10年前の本なんだけど、恐らく状況はより悪化しているだろう。
    当然ながら明確な解決策なんてあるわけもなし、ただただ重い気分にさせられる。とはいえ、知ることがまず第一歩だろう。

  •  一般に「無縁社会」という言葉からイメージされるのは、孤独な派遣労働者であったり、独居老人であったりする。つまり、児童虐待問題を除けば「大人の世界」の問題としてとらえられがちなわけだ。
     本書はそんな無縁社会の問題を、子どもたちに焦点を当ててとらえ直したもの。

     たとえば、派遣労働者のワーキングプア問題といえば「収入が少なくて結婚できない」独身男女をイメージしがちだが、本書は“収入が少ない中でも子どもをもうけた派遣労働者”の、その子どもたちの問題としてとらえ直すのである。

     社会のひずみは弱者の中にこそ集約されてあらわれる。「無縁社会」の問題もまた、日本の子どもたちの世界に大きく影を落としている。著者は独自取材と各種データから、その影に迫っていく。

     たとえば、住民票を残したまま1年以上所在不明になり、その後の就学が確認されない子ども――「居所不明児童生徒」は、2011年に1183人もいたのだという。
     また、全国の児童相談所が対応した「置き去り児童」「棄児」(捨て子)も、それぞれ212人、25人に及んだという(2009年度)。

     そうした数字以上に、実際に子どもを虐待したり、それを放置したりした周囲の大人たちの言動に驚かされる。
     たとえば、実の子を虐待死させた母親が、その死のわずか2日後に虐待の片棒を担いだ男と結婚した事実について、裁判の被告人尋問で次のように証言したのだという。

    《「娘が死んだすぐあとで結婚することに抵抗はなかったです。二人で生活したかったし、今度は彼の子どもを産みたいな、って思いました。亡くなった娘の死亡届は出さないで、先に彼との養子縁組をしました。死んじゃったあとだけど、でもやっぱり父親がいたほうがいいと思ったからです」》

     また、ネットゲームに夢中になり、「ゲーム内で知り合」った相手と結婚した若い女の、次のような驚くべき発言もある。

    《結婚から一年後の二○○八年、綾乃は妊娠したが、その事実に気づいたときは「がっかりした」のだという。
    「子どもがほしくなかったわけではないけど、今は時期がマズイなと。ちょうどゲームが佳境で、これから必死にがんばらなくちゃというときだったんです(後略)」》

     そしてこの女は、出産後も育児のほとんどを同居の両親にまかせっぱなしにし、ネトゲに没頭しつづけているのだという。

     まあ、本書で取り上げられているのは極端な例だろうし、安易な一般化は慎むべきだが、それでも目がテンになるような事例がずらりと並んでいる。

     本書は、ルポとしての出来はB級と言わざるを得ない。事例の羅列に終わっていて、描かれた現象についての深みのある考察もなく、状況を改善するための提案がなされるわけでもない。読んでいて、「ひどい親がいるもんだなあ」「かわいそうな子だなあ」とは思うものの、そこで止まってしまう感じなのだ。

     だがそれでも、「日本社会がとんでもない方向に進みつつある」と行く手に暗雲が立ち込めるような重い読後感は捨てがたく、一読の価値はあった。

  • 戸籍がない子供、戸籍があっても学校に行けていな子供や
    捨てられる子供などについて書かれた本。
    貧困、行政の不備、子供なママの親
    色々と酷くて唖然とするが、被害者は子供ということに変わりはない。

  • 壮絶な家庭が多い。
    ただ異常なのでもなく、どこかで、起こり得るとも思える。

  • いやー、切ない話だった。年間1000人以上の「居所不明児童生徒」がいること、虐待通告があっても、特定できなかったり、中に入れなかったりすること、現代にも捨て子や置き去りが200人以上いること、ネットで出会った人と素性が分からないうちに子どもを作ってしまうこと、祖父母世代と同居してるのに、子どもに目がいっていないこと。この親に育てられたから、こんな親になったのだ、と思わずにはいられない。こんなに少子化対策と言ってるのに、せっかく生まれてきた子どもたちが全然大事にされていない。

  • 暗澹たる現実がつきつけられ、解決策は提示されていないので、ただただ救いのない本。誰を責める内容でもないのが唯一の「救い」か。
    「無縁」はこわいと言うけれど、なら昔のようにがんじがらめで女には人権なし、みたいな社会に戻れようはずもなく。
    別にこの著者に限らず私たちの誰かが新たなる「有縁」を提示できない限り、私たちはこうして孤独な屍を積み重ねていくしかないのだろう。

    2015/4/25読了

  • 消える子供、どこにいるのかわからない。学校から年間1000人の子供が消える日本の社会は平和なのか。親の自己責任、親任せでいいのか。

  • 子どもの未来がこんなに脅かされているとは・・・
    ちょっと衝撃です

  • 昨日、著者の講演を聴いたので読んでみました。本書に書かれている事例は、現実に起きたこと。レアだとは思うが、確実に起きていること。そら恐ろしさを感じました。私は教員として、虐待や無縁家庭、予備軍の実態、子どもを排除したがる地域の無理解も、目にしたことがあります。結果として、一番の被害者は子どもです。大人が自分の都合で、子どもの生きる権利を踏みにじること、絶対あってはならない。これらの現実から目を背けず、どうするべきかを問いかけ、考え合うことが必要ではないかと思います。

  • 『We』で、青山さくらさんが連載している「ジソウのお仕事」と重なる内容。

    映画「誰も知らない」が実在の事件をモチーフに脚色されたものであること、そのことを知らない人も多いだろうと本は始まる。実在の事件であることは、私も知らなかった。

    日本で年間1000人以上の「居所不明児童生徒」と呼ばれる子どもが存在するという。文科省の学校基本調査にも掲載されている数値で、その数値計上の取り扱いについて、文科省からこんな通知も出ている(学校基本調査「不就学学齢児童生徒調査」における「1年以上居所不明者数」の取扱について(通知)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shugaku/detail/1307931.htm)。

    居所不明とは、住民票を残したまま1年以上所在がわからず、その後の就学も確認されていない子どもで、所在がわかっている不登校などは含まれない。この子どもたちがどこにいるのか、食べて、寝て、着せてもらっているかということさえ、ほとんどわからないらしい。

    学校から姿を消す子ども、虐待家庭、子どもの遺棄や置き去り、ネットで出会いリアルで孤立する親と子…貧困や虐待といった問題を抱えない家庭でも「無縁」は忍び寄っている、ということを、著者はいくつかのケースや数字をあげながら、ある意味淡々と述べていく。

    自分の子どもも「無縁」になってしまうのではないか、社会から「無い存在」として扱われるようになってしまうのではないかと、著者自身がわが身を振り返ってそう思えると書いているところに、私も暗い予感を抱いてしまう。

    (6/4了)

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著者プロフィール

ジャーナリスト。家族・教育問題、児童虐待、青少年のインターネット利用などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表。出版のみならず新聞連載、テレビ出演、講演会など幅広く活動する。
主な著書に『スマホ廃人』(文藝春秋社)、『ルポ 居所不明児童~消えた子どもたち』(筑
摩書房)、『ルポ 子どもの無縁社会』(中央公論新社)、『子どもとスマホ~おとなの知
らない子どもの現実』(花伝社)など。日本文藝家協会会員。
公式ホームページ https://ishikawa-yuki.com/

「2018年 『人生を豊かにするスマホとの付き合い方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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