- Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122013629
感想・レビュー・書評
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荒巻義雄『エッシャー宇宙の殺人』読了。
様々な人の見る夢から成立する街カストロバルバ。この街ではエッシャーの騙し絵のような建造物が実在する。誰もが一度は見たことがあるエッシャーの絵画の中で起きる殺人を夢探偵の主人公が解決する連作短編なのだけれど、夢と幻想の世界だけあってやや本格度は薄い。しかしエッシャーの絵だからこそ発生する現象を土台にした事件はやはり面白い。特に2話の無窮の滝の殺人はミステリファンも十分楽しめる。モルグ街やまだらや密室の行者のネタバレがあるが(笑)
僕が何より好きなのはこの小説の舞台。夢の街の中での日常があまりに魅力的で、仕事なんてしないでこの世界でのんびり暮らしたい、と本気で思ってしまった。幻想ミステリの傑作と言っていいだろう。
つらくなったら再読して現実逃避しよう、そうしよう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
是非エッシャーの絵を隣に置いて読みたい。
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騙し絵で有名な画家エッシャーの絵が具現化された街カストロバルバ。
そこで起こる様々な殺人事件を夢探偵、万治陀羅男が解決していきます。
ちなみに夢探偵とは夢の中での探偵ということです。
夢の中での殺人事件なのですが、けっして荒唐無稽な内容ではありません。
世界観は妙ですし、事件もこの世界ならではのものばかりですが、必ず順を追って事件は解体されていきます。
捜査は現実と同じに現地の警察がきちんと行いますし、陀羅男の推理方法もオーソドックスです。
しかし、それだけでは事件は解けないところが非常におもしろいです。
実は事件には登場人物の持つ様々な心の中の感情、不安や嫉妬等が密接に関わってくるのです。
一連の事件に精神分析学的な解釈を与えて、関係する人物に当てはめていくことでようやく全貌が明らかになる仕組みなのです。
精神分析学の説明も解りやすく、カストロバルバの世界観もとても楽しかったです。
最高の連作短編集だと思います。 -
物見の塔、無窮の滝、版画画廊、球形住宅…天才画家エッシャーの描き出した超建築の街カストロバルバの不可解な連続殺人、幻想の都市を訪れた夢探偵万治陀羅男はこの白日夢的世界に事件の謎を追うが。