彼方の悪魔 (中公文庫 こ 24-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 79
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122017801

感想・レビュー・書評

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  • 小池真理子の過去作、特にサスペンス作品は今の時代でも評価されて欲しいな...

    容姿端麗な誘拐犯と、平凡な男の生活が交差し、想像を絶する悲劇を産み出すサスペンス。
    官能的で美しい文体が大好きだ。

  • ネタバレ 無関係な複数の人物を輻輳させながら、庶民派主婦キャスターに迫る二つの危機。それはパンデミックの危険を胚胎するペスト禍と狂気に彩られた男。リスの死骸を日本国内に入れる冒頭展開と、複数の人物が収斂していく様はやや強引と思わなくはないし、オチも呆気なかったが、監禁された女性に危機が迫っていく模様に関しては、ペスト感染の具体的模様と監禁男の異様な愛情表現とがあいまって、ぞくぞくさせられた。この真綿で締め付けるような中盤は著者の長所が良く出て、読みごたえがある。サスペンスというより、ライトなスプラッタホラーの趣き。

  • 久しぶりのミステリーだったので、途中から本が手放せなくなるほど入りこんでしまいました。
    ペスト菌と誘拐のダブル恐怖。わかりやすい怖さだけれど、それゆえに入りこみやすかったです。

  • 日本人留学生が持ち帰ったペスト菌。
    女性キャスターを誘拐するストーカー。
    2つの事件が徐々にひとつに重なっていく・・・

    当時まだストーカーと言う言葉もなかったように思うのですが、
    その時にこんな薄気味悪いストーカーを登場させているんですよね。

    テンポも良くて、先も気になるのですぐに読めちゃいました。
    ペストってよく知らないのですが、これを読むとめちゃくちゃ怖い。そしてこのストーカー男もめちゃくちゃ怖い。

    ペスト菌やストーカーなんて、自分には関係ない遠い彼方の
    出来事だと普通は思っている。
    でも気付けばそのさなかに居た、と言う恐怖。
    彼方の悪魔が知らぬ間に忍び寄っている・・・・・
    そして悪魔に打ち勝つのは??負けるのは??

    サスペンスフルで面白かったです。

  • 以前にあめん坊さんが絶賛していた作品ですので、
    ぜひ読んでみたいと思っていたところ、偶然、図書館で見つけ、さっそく読みました。

    リスの死骸と共にアメリカから帰国した留学生健一。
    青年期の屈辱的な体験で精神を病み、
    美人テレビキャスター千春を誘拐して我がものにしようと企む軍治。
    ある街の同時期に、この2人による2つの恐怖がおこりました。

    精神を病んでいる軍治の誘拐の仕方も少し不気味です。
    マンションの一室に少女趣味な防音無菌室を作り、
    そこへ誘拐してきた千春を監禁するというものです。
    千春の好みも自分と同じだと思いこんで、
    自分好みの花をかざり、自分のペットのように可愛がろうとします。

    一方ではリスの死骸から病魔に感染した健一は病院へ。
    リスの死骸を調べた医師たちは、
    そこで恐るべき病魔の正体がわかり、驚愕の恐怖に陥ります。
    隔離、感染防止、とあわてふためくなか、
    リスの死骸をもてあそんだ健一の飼い猫が感染し、
    街へ彷徨い出てしまします。
    その飼い猫に唯一引っ掻かれたのが、軍治でした。
    病魔に感染した軍治、
    拉致監禁されている千春にまで感染してしまうのでしょうか。

    中盤からぐっと物語の面白味に拍車がかかり、
    読むスピードは、もうどうにも止まりませんでした。

    最後の章の記述に、病魔が、
    「一人の青年の人生の一部を変え、一匹の猫を死なせ、一人の狂気にかられた男の命を絶って、どこかへ去ってしまった。」とありますが、
    まさしくその通り。
    まったく違った方向からおこった二つの事件ですが、
    最後には、見事に一つに交わってしまいました。

    すでに日本では忘れられていた悪魔のような病魔。
    感染病をうまくストーリーに取り入れて
    ぐいぐいと読者を引き込む、このテクニック。やはり上手いです。
    「ストーカー」という言葉がなかった昭和62年の作品ですが、
    作品の中の軍治はあきらかに、今でいうストーカーです。
    こんな不気味な犯罪者心理を早くに作品とした小池さんには、
    先見の目があったのでしょうね・・・。

    予想以上の面白さにはまり込んでしまいました。
    はまり具合を病気感染に例えるなら、
    この感染力は病魔以上になると思います。

  • 最初にこの本に出会った時の感動と衝撃を今でも覚えている。
    ・・・なんて書くと相当大げさな表現だけど、正にそんな感じだった。
    「世の中にこんな面白い本があるなんて・・・」
    「こんな話を書く作家がいるなんて!」
    と思った。

    私は基本、長編小説は読み返さないけど、この本はそれ以後何度も読み返した。
    読書家の母親にも勧めた所、
    「この本、すごい面白かった!」
    と絶賛していた。

    この本のタイトルになっている「彼方の悪魔」の悪魔はふたつ、存在する。
    1つはペスト。
    もう1つは今で言う所のストーカー。
    当時はストーカーなんて言葉、なかった。
    そんな時代に書かれたストーカーを題材にしたサスペンス調の話。
    今ではこういう設定、全く珍しくはないと思う。
    この本を読んだ以後、散々そういう小説を読んできて、刺激的なものに慣らされて、そういう私にはもうこの本は古臭く感じるのかも・・・。
    当時のような衝撃も感動もないのかも・・・。
    と思いきや、そんな事はなく、改めてこの本はしっかりした骨格の本格ミステリーであり、小池真理子さんの最高傑作だと思った。(私にとっては)

    あらすじを簡単に紹介すると、

    孤独な日本人留学生の青年が持ち帰った野生のリスの死骸、そこにペスト菌が存在し、留学生、さらにはリスの死骸を掘り起こした飼い猫がペストに感染する。

    そして別の話。
    ずっと専業主婦だったが、知人男性の勧めにより深夜番組のキャスターとなり人気をはくし、その事により夫婦関係がギクシャクしている女性。

    そんな彼女のもとに1通の手紙が舞い込む。
    それは美しい文字で綴られた異常な内容の手紙で、彼女を自分のものだと勘違いしている熱烈なファンの男からのもの。

    やがて、彼女はストーカー男に誘拐され、ペストとストーカー、二つのラインが一つにつながる。
    その時、悪魔は人々の前にはっきりとした姿を見せる。

    これはキャスターをしている女性が主人公となっていますが、他の登場人物・・・ほんのちょっとしか出てこない人物ですらその目線できっちり描かれており、具体的にそれぞれの登場人物がイメージされる話となってます。
    まるでテレビドラマか映画を見ているようにそれぞれの様子が映像となって頭に浮かびます。
    だからそれぞれの登場人物に共感したりスッと心情に入っていく事ができる。

    それはストーカー行為の果てに主人公の女性を誘拐までする異常な男にすらも・・・。
    共感する部分もあるし、同情すらしてしまう。(もちろん、やった事には共感してません)
    それがすごい所だと思う。
    悪は悪だと切り捨ててるという単純な話ではなく、そこにしっかりとした人間ドラマを感じる。

    現代の日本とペスト。
    これほどイメージしにくい、遠い存在だと感じる感染症もそうないと思う。
    さらに、普通に暮らしている人間とストーカーという存在も。
    普通はそういうものは自分とは関係ない、どこか遠い所・・・彼方にあるものだと思う。
    でも実は気がつけばほんの身近にあったという・・・その恐怖。

    悪魔はこの物語の中で、その人間の生命力や人間力を試す。
    それに勝ったのは誰か。
    そして敗れた者は-。

    昔と変わらず色鮮やかな印象を受け、結末を知っていても面白く読める本でした。

  • 孤独な留学生が、留学生活の最後を一緒に過ごしたリスの死骸を持ち帰る。それがペスト菌に感染するキッカケとなる。
    別の場所ではストーカーが人気キャスターを誘拐し、部屋に監禁してしまう。無関係の二つの出来事が繋がって、事態はさらにややこしいことにー
    という話。
    この先どうなるのかと、最後まで気になってやめられんくなる。

  • 090922(s 090925)
    091128(s 091227)

  • サスペンス長編。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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