イスラームとアメリカ (中公文庫 や 34-2)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122031180

感想・レビュー・書評

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  • 多民族多文化国家アメリカと世界各地のイスラーム世界とは共存しえるか。

  • 新書文庫

  • 読み始めてすぐに、この本のすごさに衝撃を受けた。
    1998年に発刊された本とは、とても思えない。イスラム国をはじめとする現在の情勢にもマッチしている。
    一例を挙げよう。
    78ページの「イスラーム主義は、これまでも持続的なインパクトを広く与えることに成功してきた。その大きな理由は、イスラームが精神的な宇宙での信仰だけでなく、歴史的に社会を統べる規範的体系だった点とも無関係ではない。しかもイスラームがかつて長く繁栄を誇った時期もあることが、ムスリムにリアリズムを尊重する忍耐力を忘れさせ、衰退に向かう事態をますます複雑にさせてきた。人びとは、過去の栄光を幻視するイスラームにしがみつくことによって、欧米や日本が達成した水準を相対化するか、過小評価することによって安心立命の境地に達しようとする。しかし、それでは、問題の根本解決にはならず、人びとのさらなる不安や不満をいやがうえにも高める。やり場のない不満のはけ口は、イスラーム・テロリズムの乗じるところとなり、犯罪同然の行動に足をすくわれて、自己満足という名の閉塞回路に救いを見いだす。~中略~イスラームは常に政治権力を必要としてきた。イスラームとは、信仰でさえいつも政治的に表現しようとする宗教だといっても誤りではない。実際、近代を迎えるまで、イスラームはそうした試みにほぼ成功してきたのである。こうして見てくると、必ず初期の理想に回帰させようとして、イスラームを政治化する運動が歴史の転換期に登場する理由もうなずけるだろう。そして、テロリズムさえイスラーム国家の樹立という国家論の目的レベルで正当化される。無論のこと、その行動手段さえ正当化しながら、確信犯としては自らの英雄化をはかるのである。」

    これが、本当に1998年の文章なのだろうか。まさに今、起きているイスラム国の活動そのものではないか。

  • イスラム諸国における伝統と西洋化をめぐる問題と、アメリカ国内におけるイスラム理解の問題の双方から、現代の民族問題を分かりやすく解き明かしている本です。そのほか、ハンティントンやフランシス・フクヤマの文明史的な考察を俎上に載せ、その問題点を指摘する論考なども収録しています。

    ホームグロウン・テロリストなど、現代ではニュースなどで広く一般に知られるようになった問題などにも通じる視点が随所に示されていて、改めて多くのことを啓発されました。ただ、時局的な問題を扱っているため、ややジャーナリスティックな議論に偏っているという印象もあります。

  • だいぶ前に調べ事で。
    イスラームのほうを研究している学者さんが、
    イスラームとアメリカのかかわりについて書かれた本。
    ただ若干咀嚼しづらい部分あり。

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著者プロフィール

一九四七(昭和二二)年札幌に生まれる。
現在、東京大学大学院総合文化研究科教授、学術博士。中東調査会理事。
最新著書として、『岩波イスラーム辞典』(共編著、岩波書店)、『歴史の作法』(文春新書)、『帝国と国民』(岩波書店)、『歴史のなかのイラク戦争』(NTT出版)など。

「2004年 『イラク戦争データブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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