- Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122051959
感想・レビュー・書評
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解説:高遠弘美
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1970年に連載された桂子さん四部作の1作目。桂子さんはまだ大学生で、ちょっと尖がったところもあったりして、初々しい印象。すでに熟女や初老の桂子さんものしか読んでこなかったので、なんだか新鮮でした。
時代背景的に全共闘の話なども出てきますが、私が今まで知っていた小説や映画で語られる全共闘時代というのは、闘った大学生側にとっての美化された青春の思い出・・・的な語り口のものが多かったので、全共闘側の学生をバカじゃないのとばかりに見下しまくっている桂子さんの視点(倉橋由美子の切り口)もまたちょっと新鮮だったかも。
大筋は、耕一さんとの結婚に双方の両親から反対された桂子さんが、二組の両親たちの夫婦交歓遊戯に気づき(耕一さんとは異父兄妹らしきことも)、耕一さんとは別れて山田助教授と結婚するも、やはり別の女性と結婚した耕一さん夫婦と、結局両親がしたのと同じことをしようとする・・・というところまで。
スワッピング、という言葉だけ聞くと非常にスキャンダラスというか過激で下品な印象を受けますが、倉橋由美子の描く知的セレブ階級のひとたちの遊戯は、まるで高尚な趣味のように描かれていて、筆致も上品。しかし同時に、その後のシリーズにも常にある、階級意識というか選民意識みたいなものの萌芽はすでに明確。
桂子さんが卒論のテーマに選んだジェーン・オースティンの小説について、作中では「ジェーン・オースティンの小説には不愉快きわまる人物は出てこない」「それは要するに未成熟の人物が出てこないということ」 つまり「あまり下のクラスの人間が出てこないということかもしれない」などと語られていますが、これは倉橋由美子の小説にも同じことが当てはまるのかもしれません。とくに桂子さんシリーズの登場人物には「不愉快きわまる」「未成熟」な「下のクラスの人間」はいませんものね。しかし読んでるこちらは残念ながら「下のクラスの人間」なのですが(笑)。 -
初期作品では魅力だったはずの特権的階級意識がちょっと鼻についてしまいました。もちろん全編通して漂っている冷え冷えとした妖気は抗いがたく魅惑的でありますけど。
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言葉の美しさに酔う。
どこか現実離れした登場人物たち。
美しい世界で舞う、美しい登場人物たち。 -
やけに古臭い時代背景・・と思ったら
1970年の作品でした。
夫婦交換遊戯(ってすごい日本語訳だな)が
芸術の域に仕立てあがっているのは、
文章の美しさのせいだけではなく
その夫婦たちの後ろめたくなさ(これも不思議な日本語だ)
なんだろうな。
もしかしてこの時代はそれが普通だったの?って
思ってしまいました。 -
倉橋由美子の1971年発表の小説。桂子さんシリーズの1作目。swappingを題材にしているため、下品なお話になるかとおもいきや、やはり倉橋由美子の、この独特な文章になると、上品さが感じられるから不思議なものです。しかし、今読むと時代背景も含め、やはり作品の古さが目についてしまう。雰囲気は荘厳で好きなんですがね…。
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宇治などを舞台とした作品です。
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谷崎っぽくて好き。好き。